37話
ハイスラ船を小舟形態で多数出し、落水の危険を考慮して外側の船団にリザードマンやモンクペンギン、水棲種達を配置して俺達は野営地近くの水路状の水場を出発した。
上空にウィスプ軍。水中は複合体ブルーハイスライム達が警戒に当たる!
俺はというとひたすら前方の毒靄を祓い続けるワケだがっ、
「いやしんどいな!!」
小舟のハイスラ船団の航行速度が半端ないっ。船室には入ってられないから看板から落っことされないよう、全員アクアリーフウォーカー達の蔓で固定してもらってるっっ。
毒の水飛沫が散るので、各船軽く魔力障壁も張り続けなきゃならない。全体的に酷いっっ。
でもって、こんな状況でも向かってくる野良もいる! 上空はウィスプ達が遠距離火炎攻撃で上手く払ってくれてるが、
「む? 崩れた橋の辺りから来ますよぉ!」
壁面にヘバり付いていた『ドクシイノキカズラエント』の群れが弾けるように水路状の水場に拡がってきた! ブルーハイスライム達の『針状触手』で応戦するが止めきれないっ。
「ゴォッ!!!」
ゴールドスコップがファイアジェム十数個を触媒に『サンドブレス』を熱して放ち、枝だか根だかを焼き払って退けられた。
「いちいち相手してられないねっ。スラ公、『壁面』から離れた方がいいよ!」
「いいでしょー。華麗な操船術! お見せしましょう〜!!」
ここからは水中や上空だけでなく、壁面にも注意して俺達の船団は水路状の水場を爆走していった。
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······水路状エリアから抜けると、耐性があるらしいスライム勢とウィスプ勢、アバドンさん、アリッサ以外は船酔い状態になってしまい、一旦進行を止めて回復に専念することになった。
水棲種達やモンクペンギンまで船酔いになってるのはちょっと面白い気がしないでもないが。
ううっ、魔力もガッツリ消費したからエリクサーを吐きそうになりながら飲む!
「マスターピロシ。やはり船団が止まっていると野良が寄ってきますね。広いので大物の気配もあります。さっさと進みましょう」
「頼む。ツルベ火クィーンも警戒よろしく!」
「ヒィィィッッッ」
小舟のハイスラ船団は再び毒の水面を爆走しだした。今度はほぼ直進だ。水中や水面に顔を出した障害物や野良の群れや大型個体は避けるが複雑に蛇行や急展開し続けるすることはない。
俺は船酔いの心配なく毒靄除去に専念できた。
そのままたまにある露出物やあとは光る水性花以外にはなにもない水面を延々と進み続けると、
「っ! 陸っぽいぞ?!」
除去した先に『地表物の連続』を感じた!
「船着場だっ。よかった。方位があって」
「いやっ、いますねぇ! かなり大きいのが1体っ。その同族らしい小型が多数っ。物質系です!! 岸付近に張り付いています」
コメリナを遮ってエル・ジェリーマンが警告した。避けられそうにないな。
「減速! 撃退するっ」
船団を減速させた。ゆっくり距離が縮まり、船着場が見えると相手も反応し、俺にも察せられた。こりゃデカいっ。貴族の館を押し潰せそうだ!
「俺は出涸らしになるが、船着場周辺の水場も浄化する! 存分にやってくれ!!」
「「「了解っ!!」」」
俺は杖を発光させて一気に船着場周りの水場を浄化! 相手も激しく反応して浮上を始めたっ。
「船団を組み直しましょう。ムフ!」
「物質······昔、拠点を襲った大型個体の生き残りかもしれない」
エルフが『昔』て言うくらいだから最近じゃないだろうなっ。
「ツルベ火クィーンとエル・ジェリーマンは眷属を使って関係ないのが寄らないよう警戒! リュブリャナと水棲種で大物頼めるか?」
「無論だ!」
「やってみます。まず『波』の対策をしましょう」
実際、すぐに津波を起こして超デカいエッジキューブ、『キングエッジキューブ』が出現! 波はスキュラ達が水魔法で抑えてくれたが、キングエッジキューブは中小の多数のエッジキューブを引き連れていた。
「守備力を上げておくのである!」
アバドンさんは天井すれすれに光輪を展開し、全員に物理の護りの加護を与えてくれた。
アリッサ、ゴールドスコップ、上位ケムシーノ2体でエリクサー飲み過ぎて気持ち悪くなってきてる俺の護りに入るっ。
「シュウゥッッ!!!!」
キングエッジキューブの『大切断波』をハルベルトの斬撃で相殺し、着水して凄い速度で半身水面に出したキングエッジキューブに迫るリュブリャナ。
スキュラ達も別方向から陽動に掛かる。
同時に中小のエッジキューブ達が俺達の船団に襲い掛かりだしたっ。
まずコメリナ達ダークエルフが弓の溜め撃ちと攻撃魔法でいくらか間引きし、
「「「クェーーッッッ」」」
続けてモンクペンギン達が『激流・飛び蹴り』『激流・チョップ』で中小個体群を叩き割り、
「ヒーホ!」
「「「うぉぉーーっっ」」」
船団まで抜けてきたエッジキューブはヘルスパルトイ、スケルトン・ソードマン、リザードマン兵達で『ナマクラ斬鉄』と『叩き斬る』と通常攻撃で撃退してゆく。
相手の斬撃波や体当たりによるダメージはアクアリーフウォーカー達が素早く回復。
俺の船まで迫った個体は、ゴールドスコップがかち割り、アリッサが尻尾で貫き、ケムシーノ達が『アイアンスピンアタック』と『スタンスピンアタック』で仕留めてくれた。頼もしい!
中小個体は順調に減らしてゆき、キングエッジキューブも、
「ギィッ、呪われろっ!」
『守備力低下』の呪いをネオサダコが部分的に掛け、これに中空に浮上して水棲種から離れようとしたところを、
「逃がすかっ!」
『水の錨』をスキュラに撃ち込まれて止められた。
「今なら勇者の技も見切れるっ! シュウゥッッハッハー!!!」
追い打ちするリュブリャナっ。大渦をハルベルトに巻き込んで飛び出し『湖水割り』スキルでキングエッジキューブを真っ二つにして仕留めた。
残存のエッジキューブ達は慌てて逃れていった。
「完勝だ! よっっ」
俺が調子よく宣言し皆も勝ち鬨をあげた。しゃっ。
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上陸した船着場は酷い有様だったが、毒を浄化すればまぁ野営地と同じくらいの状態にはなった。
「グランドマスター。拠点に入る前に一度完全に回復した方がいい。ここは見晴らしもよく、高台もあるから襲われても迎撃し易い」
「そだな。さすがに疲れた」
コメリナの提案を受け入れ、俺達は仮眠数時間を交代で取る、しっかり目の休息を入れることになった。
「······」
高台の向こうに壊れた門があり、その先に毒靄に包まれた道も見えた。
ダークエルフの拠点に続いているはず。だが、一先ず休みだ。
いやホント、酷い船旅だったさ。




