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親父の遺産がダンジョンだった件  作者: 大石次郎


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36話

旧リザードマン拠点で一番大き過ぎて他の種族から非難轟々な『リザードマン宿舎』に、俺、アバドンさん、アリッサに上位ケムシーノ2体と3層に降りてる首魁や首魁代行、そしてコメリナが集まっていた。


差し入れはいつものメープルココア玉子パンと、ミックスナッツとレーズンのパン。


「ここの周辺は落ち着いたようだな。ダークエルフ拠点までのルート取りと、本隊が立ったあとのここの守りに関して、決めてこう」


「ヒートストーンゴーレム10体は置いて行ってくれ。こっちは兵をいくらも降ろしてない。もぬけの殻過ぎるだろ?」


「私は納品と生産協議が済んだので帰るぞ?」


素早くオークジェネラルを牽制するビッグヘッド。これは先に言質を取られるとややこしそうだな。


「ちょっとそっちは待ってくれ。コメリナ、道中のルート取りや現地の状況を改めて確認したい」


「陸路は私達の通ったルートを引き返す場合、旧野営地跡が2箇所ある。本格的な復旧を考えないなら特に引っ掛かるところはない、少人数だが一度使って、『多少マシ』にもなっている」


まぁ無難か?


「シュウゥッッ。それで片道3日か。俺達なら2日で行けそうだが、スライム船は使えないのか? 今のマップでも船で1日掛からない距離だが」


確かに見る限りちょっと迂回するだけだ。船団を組めば行ける感じもある。これにスキュラが応えた。


「環境が悪いのは3層に来る前から話していました。実際、酷い。高速で移動しながら延々とグランドマスターに浄化してもらうというのは現実的ではないでしょう」


「途中で魔力暴走しだすのに、このナッツパンを3個賭けますわ」


「賭けを始めるでないのである」


アリッサ達の横槍が入りつつ、


「しんどいな。着いてからのこともあるし。エル・ジェリーマン。高速航行はどうだろう?」


船主にも振ってみる。


「ちょっと遠いですねぇ」


「1日の遅れなら陸路でいいんじゃないかい?」


ゴールドスコップは堅実派。


「どっちでもいい! 10体残してくれよっ」


振り出しに戻しに掛かるオークジェネラルっ。そっちの話も少し進めるか······


「現地の状況は? 陸路、船使用、両方の場合で」


「船を使用する場合、近くの旧船着場を利用するのが無難だ。壊れているが、接岸可能で多少は魔除けが生きている」


船着場。水環境だしない方が不自然か。『泳げる』リザードマンには必要なかったようだが。


「我々の拠点は『入り方』を間違えなければ問題ない。首魁との接触は······ヒートゴーレムは『20体』も入れば盾役として十分機能するとは思う」


ちょっと気を遣ってる感じもするが、具体的に数字を出されちまったな。


「わかった、10体はここに残そう」


「よし! 置いてくってよっ?!」


「なぜ、私に言う? 納品済みと言っておるだろ」


オークジェネラルに勝ち誇られ、迷惑顔のビッグヘッド。


「ここから船に乗っては······ヒィィィッッッ」


不意にツルベ火クィーンが、マップの1つ目の野営地近くを指差した。狭い水路のようになっているが、確かに船着場近くまで抜けられないでない。


「小舟形態なら行けそうですぞ〜?」


ヘルスパルトイも後押しする。うーん。


「エル・ジェリーマン、どうかな?」


「これくらいの距離でしたら。『ブルーハイスライム』の複合体を潜水先行させれば奇襲対策もできるでしょう。マスターピロシは毒靄だけ祓ってくれれば結構です」


「毒水はいいのか?」


「船と先行体には毒属性の『グリーンハイスライム』も配合しますので、ムフフフっ」


対応力高いっ。


「じゃ、それで頼む。コメリナも野営地と船着場、あと現地の拠点結界。案内頼む」


方針は決まった。予定通り行けば早朝出て、夜中には着ける。と言ってもダンジョンに昼も夜もないけどさ······


_____



ビッグヘッドは居残りさせられるのを嫌って手勢とさっさと上層に帰ってしまったが、ヒートストーンゴーレム10体といくらかは残す兵と拠点を守るオークジェネラル達と別れ、俺達は出発した。


今回も道中俺は足元調整だけでゴーレムも温存してるが、初日に比べると慣れたもんだ。弓や魔法の得意なダークエルフも支援に専念してくれるとかなりやり易い。


毒まみれの中、俺達は野良モンスターを退けつつ特に問題なく最初の野営地まで到着した。


「よっ」


野営地の毒気を祓い、まだ生きてる魔除けをざっと回復させる。


野良も出るには出たが、野営地の規模は拠点より小さいのと一度利用されて最低限魔除けが機能していたから大した手間じゃなかった。


「行きは決死の道行きだったが、こうもすんなりだと拍子抜けだな」


来るまで犠牲も多かったコメリナは複雑そうだ。


「案内ありきだ。ウィスプの上空探査だけじゃここは使えるかどうか判然としなかったろうし」


「そう、か······」


気休めだったかな? とにかく再出発まで少し休もう。


休憩と言っても回復薬や解毒薬を飲んだり魔力回復アイテムを使って交代で小一時間眠るだけだ。魔除けが不十分なので焚き火も起こさない。


仮眠を取った俺はドライフルーツを齧りながらなんとはなしに、野営地内を歩いていた。同じく仮眠明けの上位ケムシーノ2体も眠そうに付いてきてくれている。


「ん?」


『なにかを焼いた跡』があった。魔力を使って一気に焼いた風でもある。


「ここまでで遺体を回収できた者の内、蘇生できそうにない者を燃やした」


コメリナが弓を担いで現れた。


「そっか」


「遺骨を持ち帰れるだけいい方だ」


上手く応えるの難しいな。いや、あえて前から思ってたことでも聞いてみるか。


「首魁の復活と眷属の復活はどう違うんだ?」


「······種族にもよるが、『囚人の列(しゅうじんのれつ)』に名のある者であれば、首魁の承認と必要な素材があれば新たに生まれ直すことができる」


「そのリストに表記のない者は?」


「通常の蘇生不能者と変わらない。今回は列に名のある者だけで構成はしている。復活した者の記憶や認識は刷新され、性質も少し変わってしまうがな」


「そこは首魁と変わらないんだ」


「本当に死ねる者達だけが本当に生きていると言えるのかもしれない。私達はどこまでいっても囚人だ」


そんな感じか······


「つか、アリッサはなんで外に出ちまうんだ?」


「さあな。反省したんじゃないか? ふっ」


コメリナは苦笑して、仲間のダークエルフ達の所に去っていった。


当のアリッサはモンクペンギンとアクアリーフウォーカー達と革の鞠で『球蹴り』に興じていた。


「反省なぁ」


出所の基準、よくわかんね!

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