34話
シチューは最初は炊き出し用のから食べられるのを選んでもらった。
菜食派、魚も食べる派、魚と肉も普通に食べる派、菜食と乳製品派に分かれる感じだ。種族単位で統一されてないのは人類系種族らしいと言えるかな?
総じて薄味好みで木の実やハーブが好きだった。
「数日ぶりだ······」
「生きてたどり着けたっっ」
「具が、たくさん入ってるわ!」
冷静な表情を保とうとしているリーダー以外のダークエルフは泣いて食べてるのもいた。全員手当ても済んでいる。
やっぱ大変だったようだ。なんなら普段の暮らしもままならなかった様子。
「改めて、俺はピロシ・シープランド。グランドマスターキーを引き継いだ。1層と2層の安定化を済ましてる」
で、こっからは語弊なく話したい。滑舌や言い回しに集中だ!
「オークキングとは争い、ザトウマージも死なせてしまったが、オークキングは復活させ、ザトウマージも近々復活してもらう予定だ。穏便にやってる。俺は乱世の武将じゃなくて、ただの管理人だから」
「ただの管理人か」
肉と乳製品は抜き、魚介あり、シチューの皿を空けたダークエルフのリーダーは苦笑した。
近くでイビキをかいて寝ているリュブリャナ、お気に入りの素焼きのランプに収まってやはり寝ているツルベ火クィーン。
ヘルスパルトイ、ゴールドスコップ、エル・ジェリーマン、スキュラ、アバドンさん、アリッサ、他の者達をざっと見回す。
「私はコメリナ。『ダークエルフ・スナイパー』だ。当代ダンジョンマスターには私の一族を救ってほしい。零落した我らにできる試しがあるとすればそれだけだ」
ストレートだな。だがアリッサの違和感もある。
「状況を話してくれないか? こちらの調査ではこの層のダークエルフは北側に結界を張ってほぼ引き籠もっている、くらいしかわからない」
記録によれば他2体の首魁勢力との争いを放棄して閉じ籠もった。ともあるが、いちいち付け加えなくていいだろう。
「······我々の結界は瓦解寸前だ。すでに最も広かった時期の半分程度に縮小している。長命の私達も数が減り、今や百数十名程度。遠からず、ロックローズ様の王冠だけを遺し、私達は滅びることになる」
コメリナの話に、他のダークエルフ達も手を止め、また違った感情で涙を零す者もいた。
俺は彼女達の衰退についてさらに聞こうと思ったが、先に蝙蝠のアリッサがぬいぐるみのような口を開いた。
「2層ではザトウマージは拠点の維持に力を使い果たし滅びました。同じ状況なのですか?」
「近い状況だが、3層はヨミロートス達による植物侵食と、もう1体の首魁の強壮な眷属達の来襲が苛烈過ぎた。ロックローズ様はもはや人格を捨てられて、『結界その物』になってしまわれている」
「······あの傲慢ちきが、似合わないことを」
口押しそうな顔をするアリッサ。
「いつまでも『ふて寝』しているから時勢を取り零すのである」
「上等ですねっ、犀天使! 決着つけましょうかぁ?!!」
尻尾で掴み掛かるアリッサに屈強な防御姿勢で応じふアバドンさんっっ。ふて寝、でキレた??
「やめやめ!」
「「ケムんっ」」
ケムシーノ達と間に入り、コメリナに向き直った。
「ええっと! ダークエルフの首魁はどれくらい保ちそうで、俺は具体的にどうしたらいい?」
「まず私達の拠点と周辺環境を改善して、ロックローズ様の負担を軽くしてほしい。その上で······もう間に合わないようであれば、当代のロックローズ様は、楽に、してあげてくれ······」
「ザトウマージの時と概ね同じか」
またしんどいな。
「マスター君!『自分を完全に魔法を変えた者』は厄介ですよ? ザトウマージのように話しが通じるかかなり怪しいですっ。まして、ロックローズですからねっ!」
拘るなぁ。
「だがまずここの拠点と周辺の環境改善する必要があるんだ。それから」
「坊は、明日辺りで一旦地上で休息である」
「ああ、それか。となると、諸々合わせて出発まで4日、ってとこか? それで大丈夫か?」
「数日程度のことなら。エルフの時間は長いから」
コメリナ達は出発猶予4日を了解してくれた。
う〜ん。つか、ふて寝でマジなんでキレたアリッサ??? 言わないように以後、気を付けよ······
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翌日。といってもダンジョンにいると時間感覚ボヤけてくるが、3層の旧リザード拠点周辺環境の解毒をやれるだけやった俺は大人しく地上に戻ってきていた。
「午後2時半か。変な時間に戻ってきちまったな」
石門の手前で懐中時計を手にボヤき、杖の念力でシーカーローブから普通の旅装に手早く着替え、杖は収納の腕輪にしまった。
「あー、寝よ」
石はこの間売ったし、しばらくいいだろう。
俺はのそのそと兎パンチへ歩きだした。
······なんか、食べ物でも買ってくか?
「たまには青果店もいいな」
いつもパンだし、確か狸獣人のワーラクーンドッグがやってた青果店に行ってみることにした。
「いらっしゃいませ〜」
声、たっかっ。代替わりしてた。たぶん若いワーラクーンドッグが切り盛りしてる。
「なに買うかなー?」
俺は甘い香りの、棚にアイスジェムなんかから量産できる『保冷石』を仕込んで涼しい色とりどりな店内を見て回る。
あんま高いの買うのも不自然。慎重に選ぼう。
あ、『ワインアップル』は兄貴が好きだな。『薄荷苺』はモモミの好物。姪っ子はなんだろ? 取り敢えず『イーストオレンジ』でも1個買っとくか。
「どれかは食べれるだろ······」
呟きながらひんやりした棚を見て回って、良さそうなワインアップルに手を伸ばすと、他の客が伸ばして手に当たってしまった。女性だ。
「あ、すいません」
「いえ······」
完全に気が抜けてた。いかんいかん。というか、前髪の重さと長さ! 結構背が高い感じっ。この控え目な挙動と喋り方っ!
ロクに話したことなかったが、急にガッツリ思い出せたっっ。
「ユーナンか?」
「あ、はい······シープランド、君?」
「そうそうっ。ピロシ・シープランド。ハハハ。久し振り!」
「······うん。今、夜の買い出しで。あ、ダイナーを、やってて」
「おお、せせらぎ亭」
「そう」
「「······」」
しまったぁああーーーっ!!! 覚えてただけで『結構友達だった』みたいな距離感で話し掛けちまったぁあ!! ぐっはっっ。




