33話
仮設もいいとこだが、排除対象をきっちり指定した魔除けの城壁、毒水流入対策、転送陣の設置が一通り済んだ。
「ふぅ〜、輪番で長めに休憩入れるか? 俺は仮眠取ったし、護衛と周辺の環境整備をするわ。他で休憩以外はここの内部機能の向上をやってこう」
「任せろ鍵の主! シュゥウウッ!!」
「いや、リュブリャナも1回休んでってば」
「ぬぅ?」
全体の約3割ずつ交代で休憩してもらうことになった。リュブリャナの眷属達がバテバテなんだっ。
外回り組の同伴は、比較的消耗してないヘルスパルトイ達スケルトン隊主体で編成した。
アバドンさん、アリッサ、ゴールドスコップ、上位ケムシーノ2体ケムシーノも来てもらってる。エル・ジェリーマンは転送陣設置で疲れたろうから休んでもらう。
「そうですか? では、ムフっ」
とか言って、ティーテーブルと椅子をスライム材で造り、普通は消化できなさそうな『濃縮エリクサー茶』を優雅に飲んでいた。
「周辺の安全圏は入り組んでんな、水場多いし」
外に出てみるとこりゃやり辛いっ。ここは3層の西端に近い陸地の多いエリアだが水場側から見ると孤島のようになっている。
中小の通路はあちこち繋がってるがそれ以外は毒まみれの水、水、水場だ。
「近くに2層への小階段やエレベーターもあるが、一先ず置いておくのである。まだ管理し難い」
「だな。そっちと、水場は一旦置いて、陸地の安全圏を拡大するか〜。ヘルスパルトイ、前衛よろしく!」
「全ソードマン個体と護衛しますぞー?」
頼もしい。拠点を警戒して安全圏周辺のモンスターは減ってるが、いないワケじゃないからさ。
ほぼ天井か、水場か、瓦礫の陰に潜んでるポイズンエント系か、巨大毒昆虫系か、毒キノコ系、あとは硬い物質系。
天井は上空のキラーウィスプ達が威嚇するから安全圏から離れ過ぎなけりゃそこまで注意しなくてよさそうな感じではある。
「効率悪いです。劣化崩壊箇所は後回しで」
「軍師にも賛成、と」
取り敢えず、ガンガン毒浄化だけを進めてく。沸き出てきたモンスターは拠点戦より規模はかなり小さいから、ヘルスパルトイ達が速攻で駆逐!
討ち漏らしはゴールドスコップと上位ケムシーノ2体が手早く片付けた。
「ケムんっ」
「ケムケム!」
「水場から出てくるのも、本来の水棲種から植物系と物質系になってるねぇ」
「ああ、眷属崩れなんだろうけど、ちょい野良多過ぎな気もすんな?」
テリトリー外は放置?? エル・ジェリーマンもだったが、あいつは2層を覆ってやたら過剰に野良をばら撒いたりしてなかった。1層や2層と状況がだいぶ違う······
等と思いながら毒浄化作業を進めていると、上空のウィスプが拠点北側の通路に反応しだしたんだが、ツルベ火クィーンが休憩に入ってるからちょっと意思疎通がムズいっ。
念力で言霊の石も使ってくれるが、文章が『独自の暗号文的な物』なんだっっ。
「ん? なんだろ、敵?!」
「敵も来てますが、『姿や気配の無い者達も』来ています。3層の魔力の濃さの中では不自然ですが。ダークエルフ達でしょう。少規模隊です。野良の群れに追われてるみたいですね」
ダークエルフ族! 外だと世界中で人類と緊張関係にある魔族と通じた者達だ。
本来4層住人らしいが、今は3層北のエリアに拠点を構えている。
事前のツルベ火クィーン達の調査や、元3層組の記録によれば、3体の3層首魁勢力の中では『劣勢』と見て取れた。
「向こうから来るんだ。助けたら交渉し易くなったりして? へっへっへっ」
「「「······」」」
側のゴールドスコップと上位ケムシーノ達に結構、引かれたぜっ。
「少数精鋭の拉致、暗殺隊かもしれないですよ? マスター君」
「えー? いやでも普通にそれもあるな〜」
言ってる内に俺も探知できるくらい『姿や気配のないなにかの小集団』を追う野良の群れが近付いてきた。
「ウィスプ達は関係ないのが寄らないように周囲を威嚇してくれ! 追ってるのは初手は俺が遠距離で対処してみる。ヘルスパルトイ達はそのまま前衛を維持っ」
「了解ですぞっ」
よっし、魔力杭を飛ばすだけだとちょっと足りないような? 近くにダークエルフ達がいるなら燃えても通電してもややこしい······『濡れてる』のが多いから、凍らせてみるか。
俺は収納の腕輪から魔力結晶と氷触媒の『アイスジェム』をいくらか杖の念力で取り出し、構えて同調させた。
結晶とジェムを消費し『氷の魔力杭』を多数生成っ。あとはきっちり、狙いを付けて······
「そこ!」
撃ち出したっっ。氷の杭は毒靄を凍らせて煌めかせながら突き抜け、ダークエルフだという姿気配なしグループに迫るここらをウロついてるのとほぼ同じ構成の野良モンスターの群れに直撃!
氷結した野良モンスター群はバコッと砕け散って水場に落ちていった。
「属性足すと威力出過ぎるっ」
手加減ムズそうだ。とにかく追手は仕留めた。姿と気配のない、者達はしばらくその場に留まっていたが、フードを取る形姿と気配を現した。
ゴーグルと防毒マスクをした褐色の肌のエルフだ。
「「「······」」」
消耗した風のダークエルフ達は俺をジッと見てから、手早くヘルスパルトイ達の前まできた。
リーダーらしい女が進み出る。
「我らはダークエルフ族の首魁『ロックローズ』様に仕える者! 当代のダンジョンマスターよっ、和議を申し出る!!」
「お、おお」
話、早っ。
「待って下さいマスター君」
アリッサが間に入ってきた。珍しい。
「ロックローズは代々、そんな友好的なヤツではありません。今回『上がってくる時も』面倒なので、わたくしが遠回りして避けたくらいです!」
「え〜?」
雄鹿以外の対人関係淡白そうな軍師殿がっ?!
「試しの判定もなく、早急ではある」
「確かにねぇ」
アバドンさんとゴールドスコップも慎重。う〜ん。
「ヒーホ、武器と収納系道具を預かって拠点まで来てもらうとよいと思いますぞ?」
ヘルスパルトイ案、妥当ではあんな。
「わかった。だがまずは」
俺は鍵の杖でダークエルフの使者? 達を解毒した。マスクにアクセサリーも付けてるようだが、いい状態じゃなかった。
「「「っ!」」」
「拠点で改めて手当てをする。話も聞くよ。安心してくれ、あんた達をどうこうしても俺達に利点はないぜ?」
使者達のボロボロの様子。北のダークエルフ拠点からの距離と想定される道中の困難を考えれば、なんか温かい物でも出そうか? て、なるもんさ




