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親父の遺産がダンジョンだった件  作者: 大石次郎


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32/68

32話

野良モンスター、というか、野良モンスターを押し退けた上で自らも野良化? した眷属モンスター群を駆逐した俺達は旧リザードマン拠点を確保した。


「よっし、これから劣化崩壊箇所をざっと直すけど、済んだら俺は一旦眠るぜ?」


まずここまでの移動でそこそこ疲れてんだよ。


「初期作業は任すけど、2層の池と違って水で繋がった全部を浄化できたワケじゃないから、堰き止め処置なんかもよろしく!」


「任せろっ、シュゥウウッ」


「堰き止めの方は私達水棲種で」


ざっくり方針を確認した俺は上位ケムシーノ達がいい感じに並べ直してくれた魔力結晶を対価として同調させ、グランドマスターキーを構える。


対象範囲の構造を把握して、


「よっと」


ゴゴゴッッッ。旧3次拠点とその外周の石材を大まかに補修した。


「ふぅ」


まずまずの手応え、そして猛烈に眠いっ。


「続けてなのに器用になったもんだね」


「出力もまずまずですね。ムフフ」


側のゴールドスコップとエル・ジェリーマンも感心だ。


「ま、な。だぁ〜」


応えつつ、俺はその場で、こてーん、と寝転んだ。


「おやすみ、マスター君」


「アクアリーフウォーカー達に回復させておくのである」


「ああ、じゃ、寝るわ」


俺は速攻で深い眠りに落ちた。


···

······ん?


なんだ、杖の、鍵の気配を強く感じる。闇の中、仄かな明かりが見えて、その中に絵物語のように景色が見えた。


どこぞの古風な出で立ちの姫と、2人の青年だな。青年の1人は魔法使い風、もう1人は防寒具のような装備だ。


いや、え? 防寒具の青年、見たことある気がする。なんとなく親父の若い頃に似てるがもっと凛々しい。


つーことは、ヘイスケ爺さんか??


3人は『凍えた温室』のような所で語らっていた。


どうも顔がはっきり見えないが、楽しそうだ。


確定じゃないが爺さん? も昔は若かったんだ。そりゃそう、て話だが······


景色はそこまでだった。


あとはただ深い眠りの闇の中に、沈んでいった。


_____



気が付くと、俺は『草のベッド』に寝かされていたようだ。


「ふぁ〜っ、よく寝た。身体軽いな」


迷宮でそのまま寝たにしてはよく回復している、アクアリーフウォーカー達がやってくれたんだろう。


このベッドもリーフウォーカー達だろうな、見れば連中は蔓の腕を伸ばしたりして軽めの作業補助や休憩所で治癒を担当していた。よく働く。


「「ケムんっ」」


「おー、おはよ。よしよし」


俺を護衛しててくれたらしい上位ケムシーノ2体が寄ってきたので撫でてやる。


力仕事はリュブリャナ達リザードマン。ヘルスパルトイ達は仮設されだした城壁外周の警備。ツルベ火クィーン達は見張りはスケルトン達に任せ、今は『天井』の補強や点検をしているようだった。


スキュラ達水棲種とモンクペンギン達は浄化の済んだ拠点内外の水環境の調整に勤しんでいた。


ゴールドスコップはアクアリーフウォーカーを何体か連れ、菜園なんかの復旧の見立てを始めていた。


エル・ジェリーマンは『スライム材』を使った基礎を作り、そこに転送陣を設置しようとしているようだった。上にいた時は他に要員がいたからあまり参加していなかったが、ヤツは魔法の類いが得意だかんな。


アバドンさんは······炊き出しを仕切っているな。


アリッサは······今にも崩れそうな見張り台跡の天辺に止まって、尻尾でキープした林檎を呑気そうに齧っていた。


うん、2人ともらしいな、と。


ゴツい懐中時計を見ると4時間は経っていた。俺は兎ベーコンパンを取り出して半分ケムシーノ達にやり、残り半分をポーションで流し込むようにして食べきって立ち上がった。


「さて、仕事だ! まずは水回りを仕上げないとな······スキュラ!! 俺も手伝うぞ?!」


「こちらです。やはり魔王城の瓦礫周りが良くないようで」


俺はケムシーノ達と一緒に水棲種達とモンクペンギン達と合流し、作業に加わった。


意味深な夢をたぶん杖に見せられたが、今は外部からの毒水の流入対策しとかないとな!


_____



一方、2層の市場の警備と調整はゴブリンハイウォリア達が担っていた。


「はぁ〜。オーク達、もっと配給券寄越せって、そればっかだなぁ」


詰所に戻ってきたハイウォリア個体数名はうんざり顔だった。


「2層の見回り担当だからってイキってんだよっ」


「キャラメルポップコーン買ってきたんだけど食べるか?」


「食べる食べる!!」


ハイウォリア個体はキャラメルポップコーンをムシャムシャ食べ、ルートビアをグビグビ飲み、散々オーク兵達の悪口を言い切ると、一転、マッタリとしだした。


「······午後から交代したくねぇ」


「つーか、3層どうなん?」


「水ばっかりなんだろ? あれだ、マスター様が環境改善したら泳ぎに行こうぜ?!」


「2層の池、サハギングラディエイター達が仕切ってて、こえーもん」


「それな〜。じゃ、泳ぎは3層な」


「迷宮トウモロコシ持ってってさぁ、ソイソース塗って、バター落として、ジューっ!」


「はい天才。天才ゴブリン現るっ」


「泳いで焼きトウモロコシ食いてぇ〜」


「それなーっ!」


ハイウォリア個体達はそうしてラチもないことを話しながら、昼休憩の時間を浪費してゆくのだった。


_____



······毒靄の中、毒水の水場に頼りなくある劣化した石と侵食植物の通路を、ゴーグル付き防毒マスクに姿と気配を消す魔法道具『隠れ身のマント』を纏った一団が駆けていた。


「っ! うぅあっ?!」


その内の1人が、たまたま本体と繋がった蔓の触手を踏んでしまった為に、毒水から顔を出した。『ドクヒルギエント』に引きずり込まれ、根に絡め取られて全身の骨を砕かれ、体液を吸われだした。


マスクが取れると褐色の肌のエルフ、『ダークエルフ族』であった。


「たすけ、てっっ」


「······群れが寄ってきている。ゆくぞっ」


指揮役のダークエルフが促し、一団は絡め取られた仲間を置き去りに先を急いだ。


(我ら以外の3層首魁は様子見か無関心。先んじて接触し、有利を取る!)


指揮役のダークエルフは決死の思いで毒靄の中を駆けていった。

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