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親父の遺産がダンジョンだった件  作者: 大石次郎


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31話

足元の安定化は考慮しながらどうにか目的地に着けた。 


「いや、遠かったな······」


事前の飛行する斥候のウィスプ達や、リザードマンや水棲種達の古い資料を頼り来たが地上移動でこの状態だとそれなりだった。


ここはリザードマン族の旧3次拠点だ。かつては2層との交易中継地として利用していたらしい。広さはあるが今はあちこち劣化崩壊し、毒まみれで、植物に侵食されている。


元々『敗戦』して放棄されてるらしいから壊れ方は結構激しい。


「シュウゥッッ! 見よっ、同胞達!!」


進み出たリュブリャナは高ぶった様子だ。率いるリザードマン達も。拠点管理の為に一部の護衛と非戦闘員と2層に残ったプリースト個体も来たかったろうな。


「我らリザードマンのかつての拠点の1つ! ここを打ち捨て、渇き、魔力の薄い2層に逃れることがどれ程のことであったことかっっ、シュウゥッッ!!!」


涙を零すリュブリャナ。激情家ではある。


「オークとあたしらキラーモールも2層から1層におん出されてんたけどね?」


「うっっ」


ゴールドスコップの冷静はツッコミに怯むリュブリャナ。


「坊、浄化と植物侵食の除去をさっさとやってしまうのである」


「一杯潜んでるから蜂の巣突いたみたいになりそうですけどね?」


確かに、あちこちにモンスターの気配が感じる!


「わかってる。ええと」


杖を構え、魔力結晶も収納の腕輪からどっさりだす。段取り的には、と。


「アリッサの言う通りなんかワーと出てきそうな感じはある。劣化崩壊箇所までは一度に直せないから、それ込みで対処よろしく」


「鍵の主よ! ここは我らの領分っ。前衛は任せろ!! 本陣はスケルトン達が守れ」


「ヒーホ、まぁいいですぞ〜」


「周辺警戒を継続します······ヒィィィッッッ」


「陸の上です。水棲種は援護に専念しましょう」


「あたしとスラ(こう)とケムシーノ達は当代主を護るとして、モンクペンギンはリザードマンの援護をしてやりなよ。立ち回りが大味だからね」


「「くぇ〜っ」」


「スラ公とは私のことですかぁ?」


「「ケムんっ!」」


ガヤガヤしてきたが話は纏ったようだ。


「んじゃ、やるよ? アクアリーフウォーカーは支援専念な?」


「「はぱん!」」


集中、結晶に同期。······浄化と植物侵食除去っ!


バリィィッッッ!!!!


毒靄、範囲内の毒水、染み付いた毒々! でもって全ての侵食植物を引っ剥がして消し飛ばすっっ。


これに、


「「「??!!!」」」


出るわ出るわっっ。物陰から陥没崩落箇所から、あるいは植物の引き剥がされた箇所から! 毒環境に適応できる、ないし凶暴化した野良モンスター達が溢れてきたっ。


毒の怪樹『ポンズンエント』等の植物系、毒の巨体カブト虫『瘴気カブト』等の非水棲の虫系、毒のキノコの怪『デスアガリスク』等のキノコ系? 特に毒ではないが魔力の刃を放つ浮遊立方体『エッジキューブ』等の物質系で構成されてる。


物質系以外は『4層からのお客さん』だな。


「突貫!! シュゥウウッ!!!」


「「「くぇーー!!」」」


「的の大きなヤツと群体の足止めを優先!」


スキュラ率いる水棲種達の遠距離攻撃支援を受けながら、リュブリャナ達リザードマン軍とモンクペンギン達が突進を始めた。


「物質系はちと相性がマズそうであるな」


おもむろに瓦礫片を剛速球で投げ付けて、硬そうなエッジキューブ等の物質系モンスター達にぶつけ半壊させるアバドンさん。


「あら? 結構面倒見ますのね。じゃ、わたくしも少し······ほっ☆」


『魅惑のウィンク』を連発して、ポンズンエント等の魅了の通り易い相手を次々と『骨抜き』にしてゆくアリッサ。


そんな支援もあって前衛の交戦は堅調だったが、やっぱり抜けてくる個体もチラホラ出だし、これはヘルスパルトイ達が対処。


「いけそうだな」


俺はエリクサーを1本飲み、アバドンさんが半壊させたエッジキューブの1体が捨て身で広域に放ってきた『見えざるナイフ』の連打を『小さな魔力杭』を拡散させる形で放って相殺した。


_____



······3層、怒涛廟の東側エリアがヨミロートスは縄張りだった。


そこはヨミロートスや幹部個体達と繋がった樹海に覆われ、樹海は3層の『他の首魁のテリトリー』以外の全域に根や蔓を伸ばしていた。


ヨミロートスはこのテリトリー外の根や蔓を介してテリトリー内、特に中心部の毒気を外へと排出して清浄な環境を作り、毒耐性の低い眷属達を庇護する構造を成し存続を図っている。


「リュブリャナはどの代も元気がいいね。ザトウマージが出遅れた様子なのはちょっと残念かな? まぁボクが言うのもなんだけど。ふふ」


奇妙な実を鈴なりに付けた大樹の根本で、古風な貫頭衣を着た1本角を持つ少年は笑う。


現在3層を支配する『3体の首魁個体』の1体、ヨミロートスの本体は背後の大樹であるが、この少年型の分体が平時体外活動を行っていた。


「ヨミロートス様、新たな鍵の主、いかが致します?」


側で樹海と繋がったまま控える、眷属幹部個体筆頭の白い樹木の怪『レウケートレント』が問うた。


これに主が応える前に他の幹部個体やその他の植物系以外の上位個体達が口々にざわめき出した。


「先代は約定を違えた! 子が贖わねばならんっ」


「当代は杖を取り上げ、首を落とし『木に植え』我らの統制下に置くべきだ!!」


「いや、中層以下の安定化はどうする? 我らの統制下に置けば我らが請け負うハメになるぞ?」


「オークキングと同じ狭量で判断すべきでない」


「まず当代はアバドンロードとアリッサが肩入れしている風だ」


「ヤツらはどの代も甘い!」


ヨミロートスは片手を上げ、眷属達を黙らせた。


「手並みを見よう。『試し』をするのが昔からの作法だろう?」


「······心得ました。他の首魁どもの様子も伺わせておきます」


レウケートレントは言って急進的な物言いの他の眷属達に鋭く目配せして牽制をした。


彼女はこの層に来てから一度も滅んでおらず、より下層の有様を『よく覚えていた』こともあった。


「うん。なんにしても、いい加減、3層はそろそろ綺麗にしてもらわないとね」


片手の掌から強い魔力の花を咲かせながら、ヨミロートスはやや老いを感じさせる口調でそう呟いた。

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