30話
······で、翌日。俺は池の底にあった宝箱に入ってたネックレス型のアクセサリー『泡沫の守り』を確認した。水中で気泡の結界を張る装備品だ。
使わずに済むのが一番なんだが。
「んじゃ、ビッグヘッド、オークジェネラルと他の皆も。『待機組』はそれぞれ仕事しててくれ」
「御意。油断なされぬよう」
「任せろ! 育児も完璧だぜっ」
「ばぶっ」
「わおーんっ!」
「「「お気を付けて〜!!」」」
みんなに見送らつつ、3層の初期探索選抜団一覧は俺、アバドンさん、アリッサ、ゴールドスコップ、それぞれ『アイアンケムシーノ』『ケムシーノライトニング』に進化してもらった上位ケムシーノ2体。
リュブリャナとリザードマン兵達、エル・ジェリーマン、スキュラと地上移動も得意な選抜水棲種数十体。モンクペンギン達。『アクアリーフウォーカー』に進化できたリーフウォーカー数十体。
ヘルスパルトイと『ソードマン個体』に進化できたスケルトン数十体。ツルベ火クィーンと『キラー個体』に進化できたウィスプ数十体だ。
水の環境だという3層! よ〜し、いっちょやってやろうっ。
そこそこの規模の俺達は『現状一番マシなルート』と判断された大階段の1つをぞろぞろと降りていった。
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3層、『怒涛廟』。
大小の水路、人工池、浅い湖、浸水した石造りの構造物からなるいくらかの陸路と水から成る階層。
主な灯は2層のザトウマージの池で見たのと同じ光る水生花。そんな環境なんだが······
「控えめに言って酷いな」
構造物の劣化崩壊もだが毒靄があちこちに立ち込め、毒水があちこちから湧いていた。
さらに少ない陸地は植物の侵食が激しく、原形をあまり留めていない。環境に適応しているからこの植物群も要注意だ。
「2層までと違って探索拠点をまずしっかり作る必要があります。侵食植物も厄介ですからね? マスター君」
「ああ」
杖持ちの俺と、耐性のあるアリッサ、アバドンさん、エル・ジェリーマン。あとはアンデッド組以外は防毒マスクや耐毒アクセサリー必須の環境。
「我々水棲種も耐性が特に高い者以外は装備込みでも長時間の水中活動は厳しいです」
「だろうな。無理はしなくていい」
うーん、水棲種組で即いけそうなのは首魁名代のスキュラと、それからカースウンディーネ、ネオサダコ、ヤロカ石くらいか。
······派手な環境改善はやっぱ目立ちそう、かな?
「わかった。ツルベ火クィーン。眷属と周囲を警戒しつつ予定の拠点開発地点まで案内してくれ。ヘルスパルトイ達は殿頼む。スキュラ達はモンクペンギンと組んで近くの水場の異変を特に注意してくれ。目立つから、下手に環境改善はせず、静かに進もう。休憩できそうにないしさ」
「御意ぃ······ヒィィィッッ」
「かしこまりですぞ〜! ヒーホっ」
「わかりました」
大体通路が狭く、いくらでも潜める水場だらけ。こっちは拠点開発前提だからやたら大人数で動いてる。奇襲リスクがやたら高い状況だ。
俺達は2層への大階段の登り口から、慎重に移動を再開した。
途中、野良モンスターの気配はあったが『警戒を怠らない強いモンスターの群れが移動している』と見られ、襲ってはこない。
「シュウゥッッ、ビビってるな。ふんっ」
鼻を鳴らすリュブリャナだったが、整わない状態だ。やり過ごせるならそれに越したことはない。
構造物の崩壊劣化に加え植物侵食で自動生成トラップはたまにあっても機能不全状態。
やはり稀な宝箱も崩壊に呑まれたり、地形変化や元々の配置? で毒水の底にあったりで取り敢えず放置対応で進む。
「私の眷属で小型の船を造って、高速で一気に抜けることもできますよ〜?」
3層はとにかく水場だらけ。飛ばず、泳がず潜らず進むとなると回り道ばかりでそう遠くないはずの目的地まで中々着かず、水場も毒環境も問題でないエル・ジェリーマンは飽き飽きしてきたようだった。
「あんたね、大人数でそんなことしたら引き寄せちまうよ。水場の地形も入り組んでるしね」
「そうですか〜?」
ゴールドスコップからツッコミに不満そうなエル・ジェリーマン。この2人は単独行動で基本的に俺の側いる配置だ。
「最初の最初だからコツコツいこう、エル・ジェリーマン」
「マスターピロシがそう仰るなら従いますがね」
渋々納得してくれた。だが、ハイスラ達が小型船形態もありらしいのは覚えとこう。
その後も、野良モンスター達に遠巻きに威嚇されたり、一方的に逃げられたりしながら、進み難い陸路を少しずつ進んでいたんだが、
「?!」
地表から気配! なんだ? 敵襲とも違う、『同質の強制のような圧迫感のある魔力』だ!!
大人数には不足気味の足場に繁茂する植物の根だか蔓だか枝だかが、一斉にうねりだしたっ!
「「「はぱーん??!!!」」」
これにアクアリーフウォーカー達が取り込まれだすっ!
「「ケムんっ??」」
上位ケムシーノ2体も混乱っ。
「マスター君! 浄化の応用です!!」
「坊、繊細に扱うのであるっ」
「うぇ〜? やるけどさっっ」
入り込んだ侵食植物とその毒素排除と、この地表の安定化だな! 鍵の杖を抜くっ。集中······
「こうか?!」
発光させた杖で地表に触れ、その魔力を解き放つ!
バシュッ。地表の侵食植物とアクアリーフウォーカー達が切離され、ちょっと雑いが地表も通路に沿ってこの場からかなり前方まで安定化はさせた。
「「「はぱーん······」」」
ぐったりするアクアリーフウォーカー達はすぐに数が多く機敏なモンクペンギン達に介抱されだした。
「よくできました」
「油断はあったが、まぁまぁである」
「そりゃどーもっ」
『最低限の環境ケア』は必要だったな······
「見抜けず面目ないですぅ······ヒィィィッッ」
見張りのツルベ火クィーンはしょげてしまった。
「いや、これはここの地面の環境的な異常反応? みたいなもんだろうし、しょうがないよ」
「『多数の同化対象が触れ続けていた』からでしょうね。4層で見ないでもない現象です。3層に出張ってる首魁の影響でしょう、マスター君」
「うっっ。甘っかった、リーフウォーカー達はごめんよ」
「『ヨミロートス』。数代前の俺と先代ザトウマージをこの層から追い出したらしい木の化け物だ。貸、返してやらないとなっ!」
「······」
息巻くリュブリャナと存外冷静な様子のスキュラ。判断する立場にない、てとこかな?
「まぁそのままか? 代替わりしてないかも定かじゃないし、今は初期拠点開発に専念しよう。こっからは地表の安定化くらいはしていくよ」
アクアリーフウォーカー達が回復すると、気を引き締め直し、俺達は脇では毒水がコポコポ湧く毒靄の通路を進んでいった。




