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親父の遺産がダンジョンだった件  作者: 大石次郎


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3話

親父にはよく言われていた。


『石門の先の森は危険なんだ。行ってはダメだ。木こりのドワーフもそりゃ恐ろしいヤツさ、気に入らない人間は木の肥やしにされるんだぞ?』


酷ぇこと言ってんな。資料を手に思い出してた。


「というか、親父も爺さんも資料がスカスカ過ぎる! うっすら周辺知識しかわからんっっ」


爺さんの資料は『たまに帰る村での暮らししか書かれてない日記』『簡単な解説付き当時の洞窟周辺図』『村に持ち帰っても不自然でない鉱石一覧』のみ。


親父は『簡単な解説付き親父の時代の洞窟周辺図』「初歩的なモンスター生態学を独自に纏めた物」「初歩的ダンジョン構成学を独自に纏めた物」のみ。


「······あーダメだっ。都会で学んだことがある。『美味いもんも、コケ威しの物も食ってみないとわからない』だ!」


俺は資料と水筒をしまい、休憩を切り上げ薄暗い林道を再び歩きだした。


_____



洞窟は、あった。強力らしい魔除けが一組ずつ4本、入口に立てられてる。読み齧ったばかりのダンジョン構成学の知識通りなら外側の2本は『侵入阻止』、内側の2本は『漏洩阻止』の効果のはずだ。


外側の2本はただ古びて苔生してるだけだったが、内側の2本は冬の滝か? くらい結晶化した魔力がほとばしるような形でこびり付いていた。


もう一度親父の独学資料本を取り出して確認してみる。


「······典型的な魔力の過剰滞留兆候てヤツか。迷宮が暴走するって話もあながちだな」


中等教会学校を中等してから諸々の資格取るのに必要で中等卒業資格を取り直しただけの俺が、学者風にフムフムて具合に見比べながら読み込んでいると、


ドコォッ!


いきなり投げ付けられた斧が俺の足元に直撃っ。地面が爆発する勢いっっ。


「だぁっ?!」


俺は吹っ飛ばされてすっ転んだっ。


「魔法使いか? 冒険者か? どうやって結界を抜けた? 正しく答えろっ? 木の肥やしにするぞ?!」


のしのしと俺も来た林道の暗がりから、やや小柄でも筋骨隆々の角張った体型の典型的なドワーフの男が現れた。覚えてるっ、木こりのドワーフだっ。つーか親父のアドバイス、マジだった!


「むっ、ヘイスケ?」


爺さんの名。


「いやいやっ、孫孫! ピロシ・シープランドだっ。コレを継承してさっっ、て、熱っ?!」


見せようと腰の後ろの鞘に差してた杖になったグランドマスターキーを抜いたら、また鈍く光って熱くなってた!


「孫! ······なんと、あの坊がこんなくたびれてっ、これだから人間族は駆け足なのだ」


この世の無常を垣間見たような顔をする木こりのドワーフ。


そこまで? 仕事上手くいかなくて田舎に帰る中年ってよくあることだぜ??


「落ち着け、俺は確認しにきただけだ。この洞窟もあんたの私有地なのか? 村の登記にはないようだったぞ? 親父や爺さんとはどういう話になっていた? 正直、事情がよくわかっていないんだ。なにかを盗ったり壊しに来たワケじゃない」


よし、さっぱり売れなかったが口はまだ回るな。


「······ヘイスケの息子が引き継ぎを行わんからこうなる。しょうのない甘ったれであったわ」


斧を拾いながらナチュラルに親父をディスる木こりのドワーフ。人に言われるとさすがに微妙だぜ。


「グランドマスターキーが杖の形を成しておるということは契約は誠のようだ。しかし、よくわかっておらんか······取り敢えず入口まで案内してやる。その後のことはお前次第であるが、マスターをやり切れないというのであれば、相応の『責任』は取ってもらうぞ?」


責任?


「······命を、差し出せ。とか?」


冷や汗かいて聞いたが鼻で笑われた。


「契約を放棄する程度の人間の命に価値等無い。安心しろ。その場合、お前はなにも失わずに村に帰るだけだ。とにかく、来い」


木こりのドワーフは斧の柄を肩に掛け、洞窟に歩き出した。よほど強い結界なのか木こりが通るだけでパリパリと軽い反発現象が起きてる。


「待ってくれっ。あんたどういう立ち位置なんだ??」


俺は予期される『パリパリ』に一瞬躊躇したが、一組目の結界柱の魔除けは無反応だった。あれ?


鍵の杖の効果? と思いつつ進むと、


バシュゥゥッッッ!!!


二組目の魔除けにこびり付いていた全ての魔力結晶が全て鍵の杖に吸収されたっ。


「ええっ?」


「当然だ。この先のダンジョン、『メジハの牢獄』に属する全てが今はお前の物だからな」


木こりのドワーフは鋭い眼光で言った。


「マジか······」


持ってきていたランプを手に俺は薄暗い洞窟を進む。魔除けのお陰かモンスターどころか虫や小動物もいない。苔だけだ。


ドワーフの木こりは先頭をなにも灯りを持たずにズンズン進む。ドワーフ族は暗がりで色はわからないようだが、視界は利く。


会話も特になく、ちょい気まずく、そういえばパン渡せてないな。パンパンパン、等と思いつつ、進み······やがて行き止まりまできた。だが、ただの岩壁しかな、


「?!」


ガララッ! と、岩壁の表面が崩れた。鍵の杖が光ってる。


崩れた先には古めかしい、金属の大扉があった。


「仮のマスターよ! 牢獄の門を開けるといい」


「お、おう。よし······よしっ、やるぞ?!」


杖になってるし、どうすりゃいいとも思ったが、鍵の杖が示すままに掲げると杖は激しく輝き、扉の鍵穴が呼応してガチャりと音がし、続けて扉がこちら側に開かれたっっ。


すると猛烈な魔力の旋風っっ、周囲一帯に魔力結晶が発生した!!


「うおおっ?!」


そして現れる黒い影!


「ホーホッホッホッ!!! わたくし完全脱獄!! ついに娑婆に顕現し、死と夜の女帝とし」


出てきたのは全体的に喪服のような格好のオッドアイの豊満な体型の骨の翼を持つ女で、扇を持って余裕綽々といった感じで扉の外に一歩踏み出した、途端にっ、


「ほひゅうっっ??!!!」


急激に干乾びて倒れ込み、端からサラサラと塵に変わり始めた······


「ええっと、なんか忙しい感じのヤツがいきなり死んだようだが?」


「こやつは『サキュバスクィーン』のアリッサ。最高位の夢魔(むま)でダンジョン最下層の住人だが、だいぶ浅はかな傾向はある」


浅はか······


「た、たちけ、て」


最高位のなんとかが、なんか言ってる。


「このメジハの牢獄には『勇者に敗れた旧魔王軍の幹部どもが収容されておる』。囚人ゆえ、刑期を終えねば解放されることはない。勝手に出れば、まぁこうなるな」


勇者? 魔王軍? 御伽噺だろ??


「······つまりここのダンジョンマスターって、『看守長』てことか?」


「平たく言えばそうとも言える」


「た、たちけ」


うわ〜、ガチだった上になんか思ってたのと違う感じがきたぞコレ。

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