28話
なんだかんだ疲れてしまって、また長々と寝入って起きたら翌日の昼前だった。
ゴツい懐中時計片手に困惑だ。
「油断すると時間飛んじまうな」
2階の狭めの居住スペースの居間だか食堂だか、ていうベランダのある部屋で、兄貴が作っておいてくれたフィッシュバーガーと保温水筒のハーブ茶でブランチにした。
「ん! キノコと食用苔か。影響され過ぎ」
苦笑しちまう。昨日の帰ってからずっとなんか作ってたが、俺は眠くて途中で屋根裏に引っ込んでいた。
まぁ悪くはない味だ。こういう郷土料理です、と言われたらそんなもんか。と納得してしまう感じだった。
さて、ダンジョンには明日戻る予定だが、今日はどーすっかな?
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取り敢えずノームの蒸し風呂屋でさっぱりして、曜日と時間的にモリオは事務で忙しく、ミラルゴは教会学校か治療院手伝いだったか?
他に話せる知り合いも今んとこいないな。平日の昼過ぎ。小腹が空いてきた気もしないでもないが、またいつものパン屋に行くのもなぁ。
等と考えながらぶらぶらしていると、
「お、ここって、あれか」
せせらぎ亭、発見。ユーナンがやってるらしい店だ。小ぢんまりしてるな。俺の記憶では空き家があった気がするが改装したんだろな。
店は程々に入ってる感じだ。
「······」
俺は位置を変え、窓から中が見えないではない所まで行くと改めて見てみた。
うん、確かに若めの女性客が多いが年寄の夫婦もそこそこいた。
今のユーナンは、どの人だ? 店員はそう多くない。
そもそもユーナン自体記憶は朧気だった。
「まだ前髪長かったりして······」
ん、あの人かな? 結構背が高くなってる。バンダナとエプロンをしていて、前髪は変わらず長めだ! ええ〜? 本人? え、本人??
「覗き魔はやめるのである」
「うぉうっ?!」
いきなり背後にアバドンさんっっ。
「なんだアバドンさんびっくりした〜。村で話し掛けるの珍しいな」
「用がないと村に入らないからな。それよりビッグヘッドから報せがあったぞ? 2層南西の未整備エリアの最新詳細図が仕上がったそうだ」
ダンジョン内の言霊の石は基本的に外とは繋がらないが、アバドンさんは例外で繋がってる。
「昨日遊んでたのに仕事早いな」
「全員は1層に来ていない。それに前後に時間はそれなりに空いていたのである」
「おお······」
そこはほぼ寝てたから実感ないな〜。
とにかく、2層の残作業はすぐにでも取り掛かれるようだった。
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翌日、朝から俺は予約してた大量メープルココア玉子パンを土産に2層のスライム御殿にアバドンさんとアリッサときた。
ここにしたのは今回はスキュラも来てもらうからだ。多少はサイズ調整できるようだが、それでもリュブリャナ越える巨体だ。
スライム御殿は戸口の大きさを自在にできるのと『家具』も自在だった。
「外の菓子パンだ食べよう。スキュラも」
「パン······甘いのですか」
甘味はあまり食べてなさそうな環境ではあったが、食べてはくれた。
「甘い!」
お、気に入ってくれた気配。しゃっ。もう各代表だけでも人が多過ぎるから、アバドンは挽いた煎り豆だけ持ってきてそれで茶を作って振る舞ったりもした。
「で? 作業はどうするのですか☆」
「もうそのキャラいいだろ······」
「おほほ」
作業的はそこまで複雑じゃない。
俺と護衛いくらかで未整備スポットをガンガン整備! 他は整備済みの池を住み易く整備する班と、2層中央の市場跡を再整備する班、手狭なリザードマンの2次拠点作り。
元々2層で暮らしてたオークとキラーモール達の2層の小規模拠点作り。
1層にケムシーノとワーグの棲み処作り。2層にはリーフウォーカーとモンクペンギンの棲み処作り。
オークの拠点の完全復旧も進める。
「オークキングの王冠の復活用素材と、まだ無理そうだが、ザトウマージの王冠の補修下準備も同時に進めよう」
適材適所、それぞれ作業に当たることになった。
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俺、アバドンさん、アリッサ。それから未整備があるといっても難所の池は終わって他の大体は済んでるので他の護衛はゴブリンハイウォリア達と上位ケムシーノ2体、それからブルワーグだけだ。
「いや〜、俺達の代で2層を歩き回れるなんて、信じられないですよ〜」
「水もたっぷり、土もたっぷり、酒と食事もたっぷり! 俺なんて太っちゃいましたよ〜」
「ゴブリンからオークになっちゃいそうだよな!」
「「「アハハっ!」」」
めちゃお気楽モードなハイウォリア組。これはそろそろアバドンさんに······
「真面目にやれ。役に立たないなら囚人一覧の『文字列』に戻すのである」
「「「すいませんっっ」」」
はい、怒られた〜。そして手近な小規模な毒沼を直し、目に付いた崩落やら穴ぼこを直す。
と、塞いだ穴ぼこの地面から2層お馴染みのクサレ大ビルが大量に飛び出してきた。
慌てて対処しだすハイウォリア個体達。喧嘩ケムシーノとスタンケムシーノ、ブルワーグも奮闘。
今日は『護衛の木こり』でもないアバドンさんが出るまでもないが、数匹の取りこぼしが向かってくると、俺の頭の上のアリッサが尻尾で切断して仕留めた。
「あ、マスター君の訓練用にやらせてもよかったですね」
「作業日と訓練日分けてくれよ?」
「どーしよっかな☆」
このキャラ気に入っちまってるな······
まぁ、そんな調子で作業は進んでいった。
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そして2層の全エリアの浄化、補修! 魔王城の瓦礫の移動等、完了!!
回収で見違えて立派になった旧ザトウマージの屋敷の広間に代表が集まった。スキュラもギリ入れる。
「魔法使い勢総掛かりでザトウマージ殿の王冠の破損は直りました」
「オークキング蘇生の為の素材も集まりましたな」
リザードマンプリーストとビッグヘッドを中心に上手くやってくれた。
「よし、引き続きザトウマージ復活用素材は2層の環境で揃えるだけ揃えてくれ。あとは、オークキングか」
「よろしく、頼む······」
オークジェネラルは頭を下げた。うん。外の基準だと微妙なとこだが、ここはまた、違うだろうからな。
「ビッグヘッド、プリースト魔法陣の準備をしてくれ。約束通りオークキングの蘇生を始めよう。アバドンさん」
「うむ」
アバドンさんは光の陣を宙に張り、そこからオークキングの錆びた王冠を取り出し、俺に渡した。
強く、結構悪かったオークキング。
「ふぅ」
息を吐き、いつも通り腹を括った。
この魔の主の1人の生まれ直しを、認めよう。




