26話
まだ体調は万全じゃないんだが、一大事だ! モモミと、嫌そうだったが兄貴が本当にダンジョン1層の様子を見にくることになったっ。
俺は慌てて、
「まだ雄鹿ハントの途中ですっ」
と迷惑がるアリッサを説得し、
「村の林業ギルドと商談があるのである」
と億劫がるアバドンさんも説得し、ダンジョンに引き換えした。
「あたしは構わないけどさ、普通の人間の接待なんて『歴代のあたし』の内、1人だってしたことないよ?」
2層で『いい土』が容易に手に入るようになり拡大改良されて豊作の気配の農園で、ばかデカい魔力充填型のドワーフ風の機械噴霧器の容器を背負い『特製ポーション肥料水』を散布していたゴールドスコップは困惑気味だった。
「そこをなんとか頼む。ビッグヘッド達他の1層首魁はちょっと刺激が強いし、オーク達も無理だろ?」
「そりゃ、ねぇ」
外じゃオークは食人種族の悪名が広まってるしな······
「因みにマスター君は、妹ちゃんや兄貴ちゃんに知性の高い個体が共同体作って暮らしているが先代の放置で環境は荒れてる、くらいしか教えてないですよ?」
「杖使い過ぎの魔人化リスクや、未処理だとここが毒気まみれなことや、各首魁の試しが危ないことなんかは伏せてボヤかしてあんぞ?」
「俺はヘイスケの知人で入口の洞窟の管理していただけの者、ということになっているのである」
「魔王軍云々もボヤかしてあるからなっ」
「ボヤかし過ぎだね。霧の中だよ。ま、話くらいは合わせるけど、他の連中にも通しておきな」
「おお」
既に言霊の石で通信はしておいたが、全員反応が『いまいち』なんだ······
ビッグヘッドは「さようですか」だけ。オークジェネラルは既読スルー。
ツルベ火クィーンは既読もつかない。収納の魔法陣の中に入れっぱに違いないっ。
ヘルスパルトイは「ヒーホっ!」とだけ返信された。いやわからん、て。
まだ全部済んでないから連れてく予定はないにしても、2層のリュブリャナとエル・ジェリーマンにも一応報せてはおいたんだが、こっちはこっちで微妙な反応だった。
リュブリャナは「知らん、プリーストに言え!」ときたもんだ。そッスね······
エル・ジェリーマンは「わかりました〜、行きますよ?」と返してきた。呼んでないぞっっ。
ええい、ややこしいなっ。エル・ジェリーマンはもう来るものとして! 1層首魁連中とオークジェネラルはこれから回って念押しと確認しておこう。
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なんとか根回しが済んだ! 俺は一応収納の腕輪はもう身に付けてるが、他はシーカーローブではなく最初の旅装のまま、村はずれの石門の所までモモミと兄貴を案内してきた。
「この先、行くの始めてだよっ。今度、ロミーも連れてきていい?」
「俺は店休んでまで行きたくないのだが······」
モモミと兄貴の温度差っ。
「いやまぁロミーはまた今度な! よし、行こう」
どぎまぎしてる2人をとっととアバドンさんの小屋まで連れてく。
小屋の前で腕を組んで待っていたアバドンさん。
「こちら、木こり業の傍ら、洞窟の管理人をしてくれていたアバド······アバ・ランスさん!」
「ヘイスケは古い仲間だった」
「ど、どうも、孫で長男のシュウベイ・シープランドです」
「長女で妹のモモミ・シープランドです」
2人はたぶん、村では変わり者で通ってるアバドンさんとは始めてまともに口を聞いたはず。
モモミは興味津々。兄貴は居心地悪そうだ。
「よしっ、とっとと洞窟に行こう!」
『開通済みならどこでも繋がる転送陣』はいかにも危なっかしいので伏せておく。俺達は小屋の裏手から、最初に行った時のようにメジハの牢獄ダンジョンに続く洞窟に向かった。
「は〜いっ☆ わたくしはアリッサだよ☆」
洞窟の入り口で待っていたアリッサ。
すげぇ盛ってきたな······
「えーと、彼女はこの『賢く平和なモンスター達の地下コミュニティ』のマスコット的なことをしているんだ。はは」
変なキャラ付けしやがったから、紹介むっず。
「わーっ! 可愛いっっ。初めて見た! なんていう種族なの?」
「あー、種族、か」
『夢魔族の女王の矮小体』とは言い辛いな······
「彼女はレアモンスターで種族は『デブ蝙蝠』ぐぇっ?!」
尻尾で締め上げられたっっ。
「『ふっくら軍師蝙蝠族』でぇす☆」
締めながら笑顔で訂正っ。
「そ、そうなんだ」
「参った参った! 死ぬ死ぬっっ」
どうにか解放されたっ。
「じゃれてないで、さっさと降りて済ますのである」
「あれ? アバ・ランスさんもゆかれるんですか?」
この入口の洞窟の管理人としか見てなかった兄貴。まず年長な分、長年の『木こりの人』てのが根強くあるから認識の要素が増えてく余地が少ないんだろな。
「地下には懐柔されていない野良のモンスターもいる。護衛してやろう」
斧を手に、ニッと笑ってみせるが普通に怖いので兄貴もモモミも引くばかりだったぜ······
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扉を再び開け、降りると速攻でゴブリンハイウォリア達とシャーマン個体、コマンド個体。さらに喧嘩ケムシーノとスタンケムシーノを引き連れたビッグヘッドがいた。
「お待ちしておりました」
ペコっ、頭を下げるビッグヘッド達。
「なんでお待ちしてんのっ?!」
「いえ、ケムシーノ達がどうしても言うのでまぁよいかと」
「「ケムんっ!」」
うっ、慣れたケムシーノ達のフレンドリーさを侮ってたぜっっ。
「ご、ゴブリンと喋ってる??」
「ビッグヘッド個体じゃないか? ケムシーノの強いのもいるしっっ」
「えーっと! 彼らは『賢いゴブリンとケムシーノ』で平和は種族だよっ? 杖で話せるんだ。ハハハ」
「コンニチハ、私、達、友達、ダヨ?」
ビッグヘッドからも片言の人語で話し掛けてきて、合わせて一斉にニッと笑って犬歯や牙を見せ付けるとまたドン引きするモモミと兄貴だったさ。
これは······ヤバいな。嫌な予感しかしない! 手早く済ませて、2人には速やかに地上に戻ってもらおうっっ。




