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親父の遺産がダンジョンだった件  作者: 大石次郎


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24話

「ヤツ本体はもう戦える状態ではないのである」


アバドンさんは淡々と言う。俺は拡声のワンドを構え直した。


「ピロシ・シープランドだ。グランドマスターキーを引き継いだ。2層の環境改善はあんた達のテリトリーだけだ。ここの環境は改善する。引き換えに、いける所まででいい。3層以降の探索、攻略に協力してほしい」


こっちの呼び掛けにザトウマージは拡声効果らしい小さな魔法陣を展開し、口を開いた。


「遅きに失した新たな鍵の主よ。その旨、通したくば我が眷属スキュラ、マブチタユウ、ミズチ、このサハギングラディエイター4者をそちらの眷属4体で打ち倒してみよ。主の鍵を持っての助力、天使、夢魔の主の介入は認めない」


そう、なるか。


「眷属達を納得させる必要があるのでしょう。受けてやるとよいです、末期の水のような物ですよ? マスター君」


アリッサは言った。俺はため息ついちまったが、改めて拡声のワンドに魔力を込めた。


「わかった。······ツルベ火クィーン、マブチタユウに当たってくれ。ヘルスパルトイはスキュラだ、やや不利だから他が片付くまで抑えてくれたらいい。エル・ジェリーマンはミズチを。リュブリャナはサハギングラディエイター達を頼む。なるべく殺さずに」


「坊、ヌルい。相手は全員決死の様相よ」


アバドンさん、手厳しいっっ。


「悪い、全力で! 生死は結果的で構わない。皆、環境の不利を考慮してくれ」


「承知っ!!」


跳び上がって、首魁の島に降り立ちサハギングラディエイター達と対峙するリュブリャナ。


「御意ですぅっっ、ヒィィィッッッ」


負の火の尾を引いてマブチタユウの元へ向かうツルベ火クィーン。


「斬り甲斐がありそうですぞっ? ヒーホ!」


水面を駆け出しっ、スキュラと間合いを測りだすヘルスパルトイ。


「了解ですが戦うのは久し振りですねぇ〜。ムフフフ」


身体から出した『多数の浮遊するスライム玉』に乗ってミズチの方に身軽に接近してゆくエル・ジェリーマン。


「······魔が、ここに集った! いざ存分にっ、始めよ!!」


ザトウマージが杖の石突きで地を打ち、水飛沫を派手に上げると、交戦は始まった。


リュブリャナが顎で促すとサハギングラディエイター達は飛び退いてサハギンマージから離れるっ。


「シュウゥッッ」


猛然とサハギングラディエイター達に突進するリュブリャナ!


サハギングラディエイター達は初手は『連射弩弓』『毒を塗ってる風の銛の投擲』『帯電する網の投擲』『1人正面で大盾を構え突進に備える』だったが、


「ハハハハッッッ」


笑って、矢は全て鱗と鎧で弾き、毒銛は撃ち込まれても無視し、電撃の網は引き裂いて大盾持ちに突進し、矛槍(ハルベルト)で盾ごと両断するリュブリャナ! 技じゃないただの『強打』だっ。


こりゃ戦わずに仲間にできて命拾いできたかもな······


「ヒィィィッッッ」


周囲を旋回し『ネガパイロシュトルム』スキルで負の炎の渦を起こして、マブチタユウを焼き払いに掛かるツルベ火クィーン!


有利に見えるが、水と炎だ常に攻勢に回った方が有利でひっくり返される危険と隣合わせだな。


「ヒッホ! ヒッホ! ヒッホ〜」


ふざけて見えるが、反撃しつつ水面を走り回ってタコ足による猛烈な連打を凌ぐヘルスパルトイ。


半端な攻撃は弾力があるタコ足に効果が薄そうか上に再生力も高いようだな。どうにか持ち堪えてほしいところだ。


「ムフフフッ、ちくっとしますよ〜??」


軟体の身体でアクアブレスや巨体の噛み付きや尾の一撃を回避しながら、足場でもあるスライム玉を柱のような槍に変えてミズチに突きさしてゆくエル・ジェリーマン。完封の様子だ。思ったより、強っ。


「弱体化し、性質も『マシ』になっても『魔の冠』戴く個体達ですからね〜」


「ツルベ火クィーンに関しては『初期の勇者』に倒されておるから、むしろ昔より強くなっているのである。まぁ邪気が抜けてきた結果『様子がオカシイばかり』になってはいるが······」


観戦モードのアリッサとアバドンさんだよ。皆が極悪だった時代に生まれなくて、心底よかったぜ。


「泳ぎたいのかっ?! おおっ?! ハハッ」


1体がリュブリャナによって胴に風穴を空けられるのと引き換えにハルベルトを押さえ、もう1体が腕を鉈で切断に掛かって得物を手放させ最後の1体が飛び掛って池に落としに掛かっていた。


鉈持ちも歯で鉈を咥えて飛び掛かり、2体掛かりでリュブリャナを岸に押し出してゆくっ。


「リュブリャナ! 水中じゃ向こうが速いぞっ?!」


「上等!!」


リュブリャナは池に落とされた。大丈夫かよ? サハギンは勇者より泳げるはずだが······


「ヒィ?」


マブチタユウを大炎上させていたツルベ火クィーンだったが、爆炎の中から『3分の1くらいに縮んだマブチタユウ』が高速で飛び出してきたっ。『水』を噴出して推進力にしてる!


「ツルベ火クィーン! 捕まえにくるぞっ?!」


言った側から高速化マブチタユウは水草の触手の展開しながら突進してきたっ。ヤバっっ。


「ヒィ!」


ツルベ火クィーンは火炎の全身を『小さく集約』し、一気にマブチタユウに解き放った。


ジュッ。 貫通され、爆炎を上げて弾け飛び池に墜ちてゆくマブチタユウの残骸······酷っ。だが、引いてる場合じゃない。


「ヘルスパルトイの援護に!」


「御意〜っっ」


元の炎の貴婦人の姿に戻り、苦戦してるヘルスパルトイの援護に向かうツルベ火クィーン。


エル・ジェリーマンの方はどうだ?


「ん?」


エル・ジェリーマンがスライム玉だけ残して、いなくなってる?? ミズチも不自然に動きを止めていた。が、次の瞬間、ドパッッ。


ミズチの頭部が弾け、放射状に変化したエル・ジェリーマンが飛び出し、元の姿に戻った。


「ムフフフ」


攻撃がエグいな······等と思っていると、


「シュウゥッッ!!!」


サハギンの緑の血が浮かび上がっていた水面からサハギングラディエイター首を2つ持ったリュブリャナが飛び出し、それをザトウマージの足元に転がした。そういうとこあるな、リュブリャナっ。


「ヒィィィッッ」


「ヒーホーっ!!」


ツルベ火クィーンの負の炎を双剣に宿し、ヘルスパルトイは斬撃を乱打するスキル『エッジスコール』を放ち、スキュラの全身に大ダメージを与え、昏倒させた。


勝負あり、だ。俺は拡声のワンドを構えた。


「ザトウマージ。俺達の勝ちだ」


ザトウマージは盲目の両眼を一度深く閉じ、また開いた。


「この期に有用な首魁どもを集め、従えた器量、認めよう。皆の者! これより我ら水棲の一軍っ、新たな鍵の主のに与する!!」


ザトウマージはそう宣言すると水棲軍はそれぞれの鳴き方で吠えだして応える。


俺達はザトウマージの水棲モンスター軍を戦力に加えることになった。


打算と話し合いだけで決まったことでもない、慎重に対応してかないとな······

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