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親父の遺産がダンジョンだった件  作者: 大石次郎


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22/28

22話

取り敢えず『主に石拾ってるオジサンだぞ』といった感じで姪っ子に名乗って困惑させ、不安定化した魔力も整えた俺はダンジョンに戻った。


スライム御殿はエル・ジェリーマン以外は落ち着かない、ということで結局またリュブリャナの館だ。


「頃合いみたいだから、ヘルスパルトイとツルベ火クィーンは矮小体から完全体に戻ってもらう!」


「ヒーホっ!」


「ヒィィィッ」


2体とも嬉しそう。


今の状態でも力が高まり、進化に必要な素材もなんだかんだで集まっていた。


ヘルスパルトイ用に『上等なダークジェム』『かなり不気味な骨』を大量に、そして『敗残の兜・滅』。


ツルベ火クィーン用に『上等なダークジェム』『負のファイアジェム』を大量に、そして『冥府のキャンドル・滅』。


いずれも下位素材をコツコツ錬成して中位素材を生成してさらに······という具合でビッグヘッド達魔法使い系の者達が根気よく造ってくれていた。


「では」


ビッグヘッドが主導し、ゴブリンシャーマン、キラーモールソーサラー、リザードマンプリーストが支援し、2つの錬成陣の中心2体を配置して強化進化の魔法を発動させた!


「ヒーホォォーーーっっ!!!!」


やたら魔力が強く重武装の子供のスケルトンのようだったヘルスパルトイは、大男サイズの重武装の骨の戦士の姿を取り戻した!


「ヒィィィーーーッッッ!!!!」


女の顔を浮かべ鬼火の姿から、負の炎を纏った足先まである霊体の古風な貴婦人の姿を取り戻すツルベ火クィーン!


2人とも格段に力が増した。


「よっし、よかったな2人とも」


「ありがたや〜」


「嬉、しぃぃーーー!!」


うん、中身は変わらない。


「厄介なの復活させやがって······」


オークジェネラルは渋面だな。


「これで眷属も強化される。アンデッドなら増やし易くもなるだろうさ」


「シュゥウッ、スライムの回廊攻略した時みたいに戦線が拡がってくると、首魁以外にもまともに意思疎通できる個体がほしいところだ」


ゴールドスコップとリュブリャナは特に思う所なさげ。リュブリャナに関しては代々関わりが薄かったろうしな。


「ではでは〜、ザトウマージ『君』攻略の協議を始めようではありませんか〜、ムフフフ」


君ね。エル・ジェリーマンは長生きしてるっぽいしな。


「ほーいっ!」


身体の一部を切り離し、それを増大変化分裂させて使い合わせにそれぞれの体格に合った風の椅子だけを作り出すエル・ジェリーマン。


ガラス質とゼリー状の中間くらいだ。テーブルはないが、俺達は奇妙な座り心地の椅子に全員座った。


「まず、今の状況込みでザトウマージとの交渉は無理かな? オークキングの時と違って険悪気味でもあちこち揉めてる感じでもないし、環境が合わなくて大変そうなんだろ?」


「記録した限りでは······こんな感じぃーーッッッ」


1回溜めが入ったら絶対シャウトが来るな、と分析しつつ、ツルベ火クィーンが負の炎を広げて宙に映した映像を全員で見る。


壁も通路もない広大なエリアを掘り下げてそれなりの規模の『池』を造っていた。


水棲のモンスターもちらほら見えた。


光源は発光する結晶の蓮のような物があちこちに浮いていた。


それとは別に結晶の柱も所々に露出している。


「この柱で地形を安定化させ、毒素を浄化しているようですな。負荷は大きいでしょう。2層の環境を変えてしまっていますしな。ツルベ火クィーン、首魁の根城の映像を」


「こちらです、ヒィィッ」


映像が切り替わり、地面の残された『島』に水性草等を編んで造られた屋敷があった。


魔力結晶にあちこち侵食され荒れ果てた様子。映像は島の周囲の水面から顔を出した下位水龍の『ミズチ』の『アクアブレス』で撃たれ途切れていた。


「随分前に見た時より荒廃している。爺さん、いよいよだろうな。矮小体でこの環境は支えられないし、錆びた王冠から復活できるかも怪しいもんだ」


「うーん。クドいが、これ、交渉できないかな?」


「昔は少しは交易もできた。だが、段々弱って俺達リザードマンに取って代わられると疑うようになっていった」


そんな感じか、追い込まれてんだな。


「2層をほぼ制し、環境を整えた新米ダンジョンマスターとなればまた違うかもしれないが、様子は見た方がいいな。まぁここまでいきなり破れかぶれで突貫してきたりはしてないが······」


「ちなみにザトウマージは何回生まれ変わっても最初から『お爺さん』ですよ?」


「アリッサ、今、その情報いいから」


「おほほ」


「坊、まずは未対応のスライムの領分等を片付けるのである。中途で何度か文でも送っておけばよい。長年悪環境に苦しみ、『屈託』もあるのであろうが、オークと違い当人が衰えているのであれば、引き際を決める猶予を自覚させてやるといい」


珍しくアバドンさんが対応の中身に踏み込んできた。相手に対して見かねた形かな?


「わかった。ツルベ火クィーン。眷属に灯りの蓮辺りにちょいちょい和睦やこちらの作業進捗具合を書いた文を置かせてくれ、また撃たれないよう気を付けてな」


「了解、ヒィィ〜」


警戒はしてきたが、もう十分有利。いきなり総攻撃! とはゆかず、まずは状況を作ることこになった。


_____



錯乱ないし完全に凶暴化している個体以外のスライムは襲ってこなくなったから、スライムテリトリーの作業は楽になった。


2日程で浄化補修作業は済んだ。


生きた村も安定化。でもって、


「ピー!」


「ピピー!」


微妙に自我と『目玉』を持つ『ハイスライム』個体群がゼリーの村をウロウロするようになっていた。


外だとレア種だ。不思議とあまり繁殖もしないこともあって収集家が結構いるくらい。


「まぁ、変化に応じてですね」


「へ〜、で、例のアレは?」


「もちろん準備済みですよ〜? ハイスライム達! 出番ですよっ!」


「「「ピピーーっ!!」」」


ハイスライム達は十数体ずつ集まり、周囲のゼリーの家屋』を引き寄せて合体し、船の形に変形!


「おお〜っ?!」


9隻の『ハイスライムの目玉を持つ船団』に変化した!!


「カッコいい〜っ」


「でしょう? まぁ全部私が造ってしまった方が完成度は高くなりますが、『進化』しませんからねー? ムフフフ」


「進化なぁ」


君ら、どうなりたいの? てのはある。


「あとはザトウマージの意固地具合次第ですね、マスター君」


「ここにはここの年月の流れがあったこともわかってやるのだ、ピロシ坊」


「わかった」


年月か。毎度だが、穏便にいきたいところではあるんだけどさ。

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