19話
リザードマン拠点に戻り、リュブリャナの館で今後の方針なんかの協議を始める!
パンの差し入れは『蜂蜜カステラパン』と『岩魚スモークと香菜のパン』だ。
「今、どんな状況? 拠点はいい感じに見えたが」
参加してるのはリュブリャナ、リザードマンプリースト、ビッグヘッド、ゴールドスコップ、ヘルスパルトイ、ツルベ火クィーン、オークジェネラル、あとはアリッサとアバドンさん上位ケムシーノ2体、ブルワーグだ。
「俺達リザードマン拠点は完全に復旧だっ。水魔法で水産品の促成養殖も活性化している!」
初期は大変だったろう、冷水浴場の排水設備も自力で掃除している様子だった。頼もしい。
「糧食、水の確保、兵の体調、武装、問題ありませんな」
「1層に関しちゃ完全に安定化だね」
ビッグヘッドとゴールドスコップも手堅く仕事をしていてくれたようだ。問題は、
「オーク兵も回復だ。いつでもやれる。ただ2層の戦果次第では俺達の首魁の復活を希望する!」
オークジェネラル、そろそろ言ってくるなとは思っていた。微妙な空気になる······
「アバドンさん。改めて確認するが、アンデッド以外の復活はどうなるもんだ?」
「通常の幼体として記憶と力の大半を失い復活する。あとは『環境』と『育て方次第』であるな」
だよ、なぁ。さてどうしたもんか。
長々考えてる時間はなさそうだ。即決でマシなアイディア、思い付いてくれ、俺!
「成体に育つまで、ゴブリン族から養育係を2人派遣する。これでどうだ?」
「「······」」
ビッグヘッドもオークジェネラルも炭の団子を食わされたような顔をしたが、
「いいでしょう。そちらはよろしいかな?」
割り切るビッグヘッド。
「ぐっっ、くぅ〜······養育には我らの教育係も当然携わる! その上で、ぬぅ~······っっっ」
テーブルに置いた両手でテーブルにヒビを入れるオークジェネラル。
「派遣を、認める」
「よし! それでいこう。まぁ、まずは2層の安定化だ」
しゃ、言質取った。
「ツルベ火クィーン、斥候の結果は?」
「ヒィィィ! まずは〜、北側の〜······ヒィィィッッッ」
「いやいや、わかり難いわかり難いっ」
ビッグヘッドが咳払いして、念力で紙の資料を全員に配った。
「よく調べてくれており、詳細に報告は受けております。説明を代わりましょう」
「よろしく······ヒィィィィッッ」
2層住人のリュブリャナ達の現状認識に、機動性があり各種環境悪化にも強いツルベ火クィーンのウィスプ軍の調査を加味し、吟味する。
2層の首魁持ち種族は、
『エル・ジェリーマン』スライム種の首魁。知性を持つスライム。知性があるのは首魁だけで、2層の棲み処と周辺を縄張りとしている。他勢力には不干渉だが、眷属の所構わずの徘徊は放任してる。
『ザトウマージ』雑多な淡水水棲モンスターの首魁。元3層住人。2層の一部を水環境に変えて陣取っていて踏み込めば攻撃的に応じてくる。環境が合わず、損耗している気配もあり。
「ザトウマージは手強い上に、水環境が厄介だ。俺達でも完全な水棲種との水中戦は面倒だな」
「現状、アリッサ様と天使殿を別にすれば、リザード軍、ウィスプ軍以外はやり辛い相手ですな」
「ヒーホ! 我らは溺れないですぞ〜?」
「まぁ溺れはしないであろうが······」
「まずはエル・ジェリーマンだね。歴代のあたしの日記よれば『会える所までたどり着ければ』話せるヤツのはずだよ?」
前提がしんどいっっ。
「リュブリャナ、エル・ジェリーマンは交渉できそうか?」
「話せることは話せるが、デタラメなヤツだ。だが、いや、ザトウマージよりはマシだな。あのジジイはムキになってるからなっ」
そんな感じか。
「先にエル・ジェリーマンと交渉で。あとは」
2層は環境改善の難度は高めだが、1層の貯金で物資問題や人員不足は最初から片付いている。
魔力濃度が強い分、徘徊モンスターや稀に自動生成されるトラップの厄介さも増してるが対処は可能。
シーカーローブもだったが、たま〜にある宝箱の中身も1層よりいい。
その他特には問題無そうだな。ザトウマージにせよエル・ジェリーマンにせよ、基本的には相互不可侵の姿勢だから動き易くもある。
順序立って方針を決めていった。
「マスター君。慣れてきてますけど、強い首魁は『1発で』状況ひっくり返してきますから、省略せずにできることをやってから進めないとですよ?」
「おお、久し振りに軍師アリッサだ」
「そういうことです。君がアリッサを忘れた時、しかしアリッサは覚えているのです」
哲学的ぃ。
「わかった。んじゃ、そだな······」
攻略順路以外の環境改善や仲間にできそうな徘徊モンスター探しは後に回そうかと思ったが、やれる範囲でやっとくか。
_____
エル・ジェリーマンの縄張りは2層北側。ザトウマージの縄張りは南西側。
俺達はそれ以外のエリアの環境改善を3日掛けてコツコツやっていった。途中、
「よ〜し、よし、落ち着け、落ち着けよ〜、今、浄化してやるからな〜」
俺はウィスプ軍の調べで2層最大の歩行植物『リーフウォーカー種』の生息エリアで手懐けに掛かったりもした。
1層で有毒種に苦労したモンスターだ。戦力的はそうでもないが、リーフウォーカーは様々な『植物系素材』を生成できる。治癒系能力も高い。
有毒種は環境悪化にハマり過ぎて手が付けられなったが、ただの野良モンスターならたぶんいける!
葉をわっさわっささせて威嚇しているリーフウォーカー群にグランドマスターキーを振るって、周囲の環境ごと浄化した。
「「「はぱーんっ!」」」
「「「はぱぱっ!」」」
よっしっ、手懐け成功! 生産性と回復周りに余裕ができた。
その後、3層から流れてきたらしい格闘するペンギン『モンクペンギン種』を手懐けることにも成功した。
······2層の中心部辺りにある、かつては3層住人主体の市場があった施設跡で野営をしていた。作業の中途だから結構な規模だ。デカくなったぞ、ピロシ軍団!
「この施設は活用したいな」
「それもよいでしょう。2層は本来、浅層の物資生産の要であったはずですしな」
ビッグヘッドが煙管で苔煙草を吸いながら珍しくのんびりと応える。
3層のイメージはまだぼんやりだが、1層住人と2層リザードマンやリーフウォーカー、モンクペンギンなんかも自由に行き来する市場か。
いいな、それ! やってみるか〜っっ。




