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親父の遺産がダンジョンだった件  作者: 大石次郎


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18/30

18話

ゴツいドワーフ式懐中時計で確認。仮眠は2時間程で目が覚めた。


ダンジョンの外は魔力が薄く、空気がすっきりしてるな。2層は1層より魔力が濃いから余計落差を感じちまう。


頭を冴えた俺は屋根裏は薄暗いのでテーブルのランプを点け、買ったパンの内、土産用ではないチーズ胡桃パンを齧りながら座学をすることにした。


ビッグヘッドにもらった『1層のモンスター、トラップ、宝箱、その他産出物、迷宮構造、現在の情勢の書』と『現時点で把握された2層の諸資料』だ。


「今日の夕方までに半分は頭に入れてやるぜっ」


俺は美味いパンを齧りつつ、途中で喉が詰まって収納の腕輪から水筒を出してダンジョンの『迷宮蓬(めいきゅうよもぎ)茶』を飲んだりして勉強を続けた。


やることがあってその勉強もできるってのはいいもんだ。


_____



夕方、勉強を終えてからノームの蒸し風呂屋に行った帰り、村の聖堂に寄ってみるともう閉じていて、裏手に回るとミラルゴが灰色の作業着で菜園の手入れを1人で黙々としていた。


「刑務作業みたいだな」


「言い方っ、なんだいピロシ? 来て早々」


「モリオも誘って呑みに行こーぜ? ミラルゴ。風呂行ってきたんだ、俺」


蒸し風呂効果でまだホカホカだぜっ。


「······いい人生だねぇ、君は」


少なからず呆れられちまった。


で、私服に着替えたミラルゴと田舎なりに兎パンチよりかは洒落てる、ちょい高めで楽士の演奏のある酒場『金葉(きんば)亭』の前まで来た。演奏音が漏れていた。


「あいつ、いいとこで呑んでんな」


「今日は第4曜日だから来てると思うよ? カウンターによくいるから」


入ると、いつからこの仕事やってるんだろう? ていうハーフエルフが小さなステージで、(ばち)で弾く東方式のリュートで演奏してる。


『悠久の里』


だな。勇者の旅立ちの村または帰還した村を表すっていう詞のない古典曲だ。田舎の酒場だと定番。変なアレンジせずそのままって感じだ。


「いたいた」


モリオは蒸留酒とチェイサーとナッツだけで1人、ムッツリ顔で呑んでた。感じ悪っ。ふふ。


「モリオ、2階席で呑もうぜ?」


「僕もお邪魔するよ」


「······」


めちゃ迷惑顔だがモリオは盆を借りて酒とツマミを乗せて、2階テーブル席まで付いてきた。


素早く小柄なフェザーフット族の店員に適当に頼んで1回席を見渡す。ステージ近くは若いカップルが多い。田舎でみんな稼ぎは知れてるから、彼氏がんばってんな、と。


俺もずっとメジハにいたらあの列に混ざる時代があったんだろう。へへ。


「ピロシ、奢らないからな」


「わかってるって、ただの呑みさ。つか、ミラルゴ、助祭も呑んでいいのか? 酒頼んでたが?」


アイランかルートビアでも頼むもんかと。


「宗派的に禁酒ではないので。嗜むくらいは」


程なく俺とミラルゴの分の酒とツマミが来ると、話し込みだした。


「モリオ、第4曜日にいるってミラルゴに見切られてたぜ?」


「うっ、監視するなよ。まず、俺、ミラルゴ助祭と付き合いないからなっっ」


「まぁ狭い村ですし」


「理由になってないっ」


互いを察知しつつ距離を置いていただろう年月を考えると面白いな、へへへ。


「息抜きか?」


「たまにな、ココミも『せせらぎ亭』に週一くらい通ってる。ココミは友達達とだが」


「せせらぎ亭?」


知らん店だ。


「同じ学年にユーナンっていたろ? あの子が始めた店だ。菓子と、ちょっとずつ摘むような料理とワインが充実してて村の若めの女の客が多い」


「へぇ」


ユーナン、確か前髪長くでめちゃ陰薄い女子だっけ? そんな気の利いた可愛い店を始めるタイプには見えなかった。変わるもんだ。


「夫婦で住み分けてるんだね」


「狭い村だからな」


「はは」


「結婚て、気を使うんだな~」


「他人同士だよ。いや、大体からしてそんなもんなんだ。お前らみたいに『その日暮らし』や『神様』に、みんな逃げないからな」


「んだよーっ」


「酷いなぁ」


これは凝り固まった偏見と多数派意識について、我々少数派勢としてやっつけてやらねばならんな、というわけで。


俺とミラルゴ2人掛かりでこのあと、モリオをやり込めてやった。


まず、どんだけ常識ぶっても『姉妹丼男』だしな!


_____



······2日間の休暇を終えシーカーローブを着込んだ俺は、森で待ち構えていたアリッサを頭に乗せアバドンさんの小屋に入った。


例によってデカい保温水筒に煎り豆茶を詰めてるアバドンさん。


「一杯飲むか?」


「飲むっ。メープルココア玉子パンは3人分だけ買ってきたんだよ」


「わかってますね、マスターく〜ん」


「だろう?」


なんなら朝食抜いてきたからな。


テーブルに着く。アリッサはテーブルの上に直座りだが、今朝は(ひら)クッションをアバドンさんが用意してくれていた。


「あら? 珍しいですわね」


「お前に限らず2級天使たるこの俺が野卑であるかのようだからな」


「『なにデレ』と言うんでしょう、これは?」


「ふんっ!」


ふふ、とにかく3人で朝食だ。この菓子パン、安定して美味い。


「······あ、そういえば、最初にダンジョンを継がない場合、責任取れみたいなことアバドンさん言ってたけど、あれってどういう意味なんッスか?」


「なんのことはない。管理しないのならもう放置限界であった。この迷宮は『破棄』され、全て纏めて『地獄に堕とされる』だけだ」


「えーーっっ??!!!」


そんな仕様だったのか??


「そもそも大罪人の巣窟。これは猶予であり、慈悲であり、ヤツらに対する試しなのだ」


「いいように言ってくれますわ〜」


「······まぁ、なるべく、管理はしてみるけどさ」


思ったより差し迫ってたんだな。


のんきな朝食から一転、冷汗かいちまったさ。

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