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親父の遺産がダンジョンだった件  作者: 大石次郎


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17話

鍛えた滑舌は、センスいまいちな『面白』ではなく『要点』を伝えることに集中!


「取引だ。階級じゃない。2層の環境を改善し『多少の』荒事に対応するにはあんた達の力が必要だ。加えて、あんた達の暮らしを改善するのも俺の仕事の内だ」


余分なことは言ってない。杖無しじゃ指で弾かれただけでノされそうなリュブリャナは、間近で俺の目を見ていたが、


「······いいだろうっ。『下』じゃないなら仕事をしてやる! リザードマンはオークやキラーモールより強い牙があるっ! 期待しろ、鍵の主っっ、ハハハッ」


爆笑だよ、現役の頃に欲しかったのと全然違うヤツだけどな。はー、しんど······


_____



まずはボロボロなリザードマン拠点の補修と浄化。


拠点の管理に関しちゃ結構荒かったオークより甘いかもしれないな。種族として強いから悪環境でもわりと生きていられて、代を重ねる内に悪環境自体に慣れきってしまったんだろう。でもこれじゃ食糧生産やまともな水の確保に支障をきたす。


リザードマンは大食いではないが、大柄でゴブリンよりは食べるし、水辺の種族だから水浴びできないと体調を崩し易くもあるようだ。


低栄養や体調不良者は主に住人の8割余りの庶民階級者だった。


「違う環境、それも劣化した環境に来て忘れちまったんだろうが、清潔な水の確保はあんた達の場合特に大事だろう? 環境改善後に庶民階級用に冷水浴場を作った方がいい」


俺はリュブリャナとプリースト個体に提案した。食糧に関しちゃ当面まともな物がタダで手に入る。環境改善後は時間差で自力でも手に入るようになるはずだ。


「いいだろう。プリースト、建造させろ、建材の備蓄を使え」


「心得ました」


冷水浴場の建造が決まった。最初は芋洗いみたいになるだろうが、生きてるんだからしょうがない。さっぱりするといいさ。


諸々の拠点周りの作業、俺達は分担して作業に当たることにした。


俺はアリッサ、アバドンさんケムシーノ達とブルワーグだけをお供にひたすら拠点の環境改善。


ヘルスパルトイは眷属も召喚して諸作業の補助。


ツルベ火クィーンも眷属を喚び2層の偵察を再開。


オークジェネラルは収納系の魔法道具も駆使して1層と2層を眷属と共に行き来して物資の運び込み。


ゴールドスコップは一旦1層に戻り、装備品を含め物資の増産を指揮。


ビッグヘッドは必要に応じて眷属を派遣し、諸々の調整を担当した。


······冷水浴場だけでなく、リザードマン側の諸生産品の体制改善にちょい手間取ったが4日後。一通りの作業は完遂した!


「風呂だぁーっ!」


「風呂ぉーーっ!!」


「やっと泳げるわ〜っっ!」


環境改善に物資提供やら交易やらをすっ飛ばして、冷水浴場に殺到する庶民階級のリザードマン達っ。


浴場運営員のリザード達は冷汗もんだ。


「大浴槽に入る前に身体を洗えっ! いいかっ? 難しいことじゃないっ。身体をっ、先に! 洗えっっ!!!!」


「「「うぉおおーーーっっ!!!」」」


「「「泳げるっーー!!!」」」」


大混乱だな、オイ。


「言い出しっペだが、なんかすごいな」


「元暮らした3層は『水の環境』であるからな」


「最初のリュブリャナは有利な湖水帯環境に勇者パーティーを誘き寄せて襲ったものですよ。まぁ原住民を虐殺したら激怒されて『湖水帯を真っ二つにする必殺技を開眼されて』ブチ殺されてましたけど」


「······」


勇者、つっよっ。


でもって初代リュブリャナ、(わる)ぅっっ。


「鍵の主よ」


お、当代のリュブリャナだ。プリーストとセットで現れた。


「おう、リュブリャナ。なんとか作業は済んだな。冷水浴場も盛況でよかったぜ。排水設備の手入れ大変だろうが最初だけさ」


杖の浄化でもたぶんいけるから手間取るようならやらんでもない。


「俺はちっと長居し過ぎたから一旦地上に戻るが、なにかあったらビッグヘッドに言ってくれ。あとあまり話したがらないがゴールドスコップとオークジェネラルとも」


「ピロシ・シープランドぉ! 俺は感動したぞっ?!」


「ええっ?!」


なんだなんだ??


「お前の言う通り、俺は庶民階級の者達にもリザードマンの習性があることを失念していた! 俺達は強壮な種族だっ。毒程度で早々死なん。ゆえに、庶民には最低限度飲める水と食える食物も与えておれば一先ず十分だろうと考えていた!! だがどうだ? 俺はこんな生き生きとした庶民達を知らんっ。一族が栄える尊さをっ! お前は思い出させてくれたのだっ!! 主に、『風呂』で!!!」


「お、おう」


そこ? て気はした。それでもめちゃ評価されてんな。そして両肩掴まれたんだが、膂力が強過ぎて鍵の杖に『攻撃』と判定されて魔力障壁で防がれ、しかし意に介さずだ。


さすが初代は『湖水帯を真っ二つにしないと倒せないモンスター』だ······


と、ビッグヘッドが咳払いをした。


「感極まっているところを悪いが、リュブリャナ。ツルベ火クィーン達の斥候の結果も集まってきた。交易やそちらの物資生産もプリーストとは話しているが、貴殿とも確認をしたい。マスター殿が迷宮に戻られる前に整理しておきましょうぞ?」


「シュウゥ? それもそうだな。では鍵の主よ、転送陣は補修済みだ。休暇に戻るといいだろう! ハハハッ」


「了解了解。んじゃ、な。オークジェネラルとゴールドスコップもアレしろよ?」


「どれだ?」


「考慮しとくよ」


手強そうだな、2人っ。


だがこれ以上は今はしょうがない、ケムシーノ達とブルワーグはビッグヘッドに預け、死霊首魁コンビは見当たらなかったからフラフラしてた眷属達によろしく伝え、俺とアリッサとアバドンさんはリザードマン拠点の転送陣の建屋に入った。


係のリザードマンが調整する中、陣に入る。


「人が増えてくると幹部だけでも把握しきれなくなってくるかもな?」


ふと思って言ってみる。


「浅層の采配はビッグヘッド辺りに任せればいいが、『深まれば』また違ってくるものである」


「全部終わった感出してるけど、2層はまだ面倒なのがいますからね? マスター君」


「いや、わかってるけどさ······」


げんなりしつつも準備は整う。


「お早いお戻りを!」


転送陣係のリザードマンに見送られ、俺達はダンジョン外のアバドンさん家の地下へとテレポートしていった。

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