16話
リザード拠点まで遠っ、と思いつつ延々ある途中の毒沼を浄化していたらなんか引っ掛かった。
「ん?」
宝箱だ。1層ではあまり見なかったが、毒まみれだ······
「『ポイズンミミック』でしょうな」
「宝箱でもどうせ大したもん入ってないか、毒で劣化してるよ」
関心薄そうなビッグヘッドとゴールドスコップ。ミミックは宝箱型のモンスターだ。1層でたま見掛けた宝箱は『ほぼガラクタ』かミミックだった。
「坊、『鑑定』だ」
教官モードになるアバドンさん。
「まぁ、やるけど······鑑定!」
鍵の杖で毒の宝箱を見定めるっ。結果、
「ミミックではある、けどなんか入ってるぞ?」
「わんこ、炙ってよしですわ」
アリッサの命でポイズンミミックに火の息を吹き付けるブルワーグ。
ミミックはたまらず本性を表し、大口を開けて浮きが上がり飛び掛かってきたがスタンケムシーノの電撃を食らい、とどめに喧嘩ケムシーノに『空気拳』のスキルで衝撃波を食らって壁まで吹っ飛ばされ倒された。
「よっし、確認してみるか」
杖の念力で中身をドロっと取り出してみる。毒液まみれだが、これは······
「ローブ?」
「鑑定である。出す前に見破れるようにならねば」
「はいはい、がんばりますっ」
教官に小言言われながら再鑑定。
『シーカーローブ』迷宮探索者の為の法衣。動き易く魔力耐性、毒麻痺耐性もそれなりにある。守備力は上等な鎖帷子程度。
と、出た。
「シーカーローブだってさ。冒険者関連の店で見たことあるわ」
「マスター君にぴったりじゃないですか?」
「おお、いや、でもドロドロだな」
「とっとと浄化しろ、すっとろいヤツだ」
オークジェネラル、言い方強くない? 兎ベーコンパンで上がった好感度どこいった??
「やるけどさ。やるけどね!」
俺はシーカーローブを浄化し、村で買った旅装の上着を取って代わりに着込んだ。
ダンジョン拾得品は限度はあるが、最初の装備者の体型や気質に合わせた形状になる。
シュルっと身体にフィット。おれ好みのより動き易い形になった。
「ヒーホ! お似合いですぞっ」
「裏地がお洒落、ヒィィィ」
「ちょっとは素人感が抜けましたね」
「これで毒地帯でうっかり杖を取り落としても即死はせんだろう」
「へへっ」
腕利き探索者ピロシっ、爆誕!!
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で、リザードマン拠点の城壁が見える所まで来た。
煉瓦主体の城壁。旧魔王城の瓦礫で補強もしてある。規模のある立派な造りではあったが表面の劣化が目立ち、番兵のリザードマン達も疲弊した様子だった。
「ヒーホ、まずは『殺され難い』我らが取り次ぎ交渉してきますぞっ?」
「怪しいので見える所には出ておいてねぇ、ヒィィィ!」
怪しい自覚はあんだな······
取り敢えず正門周囲の邪魔な毒沼は浄化し、姿も表し、白旗を持った矮小化体のヘルスパルトイとツルベ火クィーンを向かわせる。
番兵達は何事?! て顔だ。
そのまま死霊首魁コンビが接近して交渉しだすと、『うへぇっ』て顔をしていたが、数人が潜り戸から引っ込み、しばらくして中から僧侶風のリザードマンが出てきた。
「リザードマンプリーストです。幹部ですな」
プリースト個体は死霊首魁コンビと少し話したのち、2人と番兵数名を連れて俺達の元へ来た。
まじまじとグランドマスターキーの杖を見るプリースト個体。
「失礼。私はリザードマンプリースト。我らが首魁『リュブリャナ』様にお仕えしております。当代のグランドマスター様がとうとうお出でになられたこと、恐悦至極にございます」
「いや〜、ちょっと1層でも手こずっちまってさぁ。はは」
「オークを屈服させたのですね、ふっ」
「なに?!」
オークジェネラルが顔色を変えたが、ゴールドスコップが諌めてくれた。
「プリースト殿、あまりくすぐられても困りますな」
ビッグヘッドも間に入った。俺にも目配せする。俺は軽く咳払いした。
「首魁と話がしたい。2層の環境改善や攻略を手伝ってほしい。報酬として物資の提供の用意がある」
番兵達はこれに色めき立つ。相当なんだろう。
「······富も力。我らが首魁も認めましょう」
取り次ぎは叶う運びとなった。しゃっ。
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城壁内の住人の疲弊がやはり明白だった。ダンジョンの劣化現象は内部の各所にまで進行が見られた。土の階層は防ぎ難いのか?
あとは『階級社会』だな、と。
城壁近い庶民は土壁主体のやや細長い家。中心部は土地が高く盛られ坂道の先にあり、上級民の煉瓦造りのここも細長くはある家屋が並んでいた。
「堅苦しそうな街を造ってるな」
オークジェネラルが顔をしかめて言うと、
「秩序です」
プリースト個体は素っ気なく答えた。
······さらに中心部に進み、煉瓦造りの小規模な砦その物と言った館に着いた。首魁の館だ。
中へ通され、そのまま首魁の部屋へと向かう。
「っ!」
泉だ。奥に普通の部屋もあったが、中央は人工の泉が造ってあった。橋も掛かっている。
泉から人影が浮かび上がり、ザバッと姿を現したのは上半身は裸身の通常個体の倍はある竜のようなリザードマンだった。
本来3層の首魁個体、魔力が違う。オークキングを凌駕しているな。
プリースト個体が杖を振るって水気を払い、さらに近くの土器の棚に雑に置かれた大きなガウンを杖の念力で操り、首魁リザードマンの肩に掛けた。
「シュゥウウッ、天使と夢魔もいるなっ。俺はリュブリャナ! リザードマンの首魁だ。物資で俺達を釣って使役する気か?」
牙を鼻先まで近付けてくる。ここまで少しは手を汚して来ていなかったら、投げたいとこだぜっ。
ゴールドスコップと死霊コンビ、ケムシーノ達とワーグは殺気立ったが片手を上げて抑えてもらった。
圧を掛けても、リュブリャナはプリースト以外は部屋に入れずに俺達と対峙してる。これも試し、だ。
2層の時点でもう何度目って具合だが俺は腹を括ったさ。




