121話
帰りも玩具の扉から夢の世界から出て、首魁の間で応戦してくれていた『霜まみれ』にされていた皆と合流。
館から出てエル・ジェリーマンとフェネクス以外の外の仲間とも合流。
文字通り壁役に徹してくれたクリスタルリトーが結構ボコボコにされていてめちゃ機嫌悪かったっ。
なんにしてもエーリヴァーカルの軍がアリッサの支配域から引いたのも確認できた。
ちなみにネガジャバウォックはまだ昏倒してた。馬糞コロン・凶、強ぇ······
「フェネクス様も御無事で、こちらに向かわれてるようです」
フェネクスの無事もアストロロジーが水晶の交信で確認。まず早々死なないかんな。
そっから、
「皆さん無事でしたかぁ? こちらはアペフチさんの所まで戻れる転送陣は復旧できましたよ〜? かーなーりーサキュバスの転送陣は癖が強かったですけどねぇ?」
わりと奥まった位置だったが転送陣を上手く通してくれたエル・ジェリーマンとも合流し、俺達はフェネクスが帰還するとアペフチの元に戻った。
この時点で俺の眠気は限界にきていたが、よく見るとロックローズが復活したアリッサとまともに顔を合わすのがバツが悪いらしくコソコソしている。
ツッコミなりなんなり入れたいところだが、疲れ過ぎて頭が回んね······
等と思ってる内に、
「なにか、言うことがあるであろう」
と身も蓋もないないフリを入れてしまうアバドンさん。
「······起きれてよかったわね」
目も合わせないロックローズ。
「あら、ありがとうございます。お目覚めのハグでもしましょうか? おほほ」
「いらないっ」
シュッとコメリナの後ろに隠れてしまった。
えーと、ダークエルフの思春期ていつまでだっけ?
「······」
「ピロシ、ツッコまないならツッコミそうな顔でやっぱりなにも言わない、みたいなのは面はゆいからどうかと思うな?」
ヨミロートス目ざとい。
「疲れてんだよ······」
疲れ過ぎるとツッコむ元気なくなるんだよ。ツッコミは、カロリーあり······
「鍵の主はヘバってるようだが、しかしエーリヴァーカルまで懐柔するとはな。この牢獄に収監されてからどころか魔王様が御存命の頃から初だ。アリッサ、あんたどんな術を掛けたんだ?」
「術というか交渉ですよ。契約したので詳しくは言えませんが、『わりとしょうもない精神』で存在しているヤツなので大した理由ではなかったですね。ふひひ☆」
「へぇ?」
結構酷いこと言ってるが、魔剣とは長く小競り合いしてきただけになんとなく察するところはあったらしいアペフチ。
「ま、あんな『チンピラ剣』の精神なんでどーでもいい。特使にはストレイルタバガとヴァーリンとこのヤクシャを出すのがいいんじゃないか? 無難だろう?」
······あ、俺か。立ったまま寝るとこだった。
「いいと思う。えーと、移動手段もいるよな? ボルケーノ、小型の船と船員の機怪人兵を出してくれるかい」
「構わん。余の兵力、工学力っ、ありがたく使うとよかろう」
「そりゃどーも!」
よっし、これで一通りの事後対応の段取りはついたな。
ようやく、ついにっ、俺は地上に戻れることになった。
と思ったんだが、間で俺の魔力が溜まり過ぎてるやら雷属性の魔力も残ってるやらで、ウォージェムやマシンジェムの作業でヴァーリン城まで降りて来ていたビッグヘッドとエルボエルに余分な魔力を抜いてもらったり調整してもらったりした。
もはや真っ直ぐ地上に帰れんようになってきたぜ。気を付けよ······
_____
そして、極楽。
俺はよーやく! ついにっ、兎パンチの屋根裏のベッドに潜り込んだ。
「······」
5層の魔力が強過ぎるのに加え、7層再現環境の寒冷環境はさらに酷く杖と契約してなかったら確実にモンスター化してたくらいだったから、地上の圧倒的な魔力の薄さは小躍りしたくなるくらいの軽さだった。
「普通の村って最高過ぎる······」
俺は爽やかな心持ちで深い眠りに落ちていった。
···
······
······あ、これはあれだな。
「すまない。グランドマスターキーの引き継ぎは上手くゆかないかもしれない」
ヘイスケ爺さんだ。俺の記憶よりちょっと若いかもしれないが、既に『爺さん』にはなってんな。
お久し振りの杖の記憶か。
また力を使い過ぎたから? レア過ぎて検証はできてないが······
年季のは入ったシーカーローブをきたヘイスケ爺さんが、わりとシックではあるがおどろおどろしいなんとなく冒険者なんかがよく利用する『蘇生所』っぽくもある謎のティールームらしき所で誰かと同席していた。
記憶の中でもこの気配は知ってるな。
『以前、若い頃の爺さんと一緒に凍える温室で姫らしい人と会っていた青年』だな。
今思うと、凍える、温室、てのはアリッサ拠点っぽいけどアリッサはちょっと雰囲気違い過ぎる。
サキュバス族の他の幹部? いや、爺さんの態度がもっと特別だった。
最下層の、『まだ最下層の混沌の中に残っているはずの最後の首魁』か??
「持ち堪えるデシ。対策はある。相当な混乱は生じるだろうが、これまで紡いできた『我々の軌跡』は途絶えることはないデシよ? 君の一族から必ずや後継は現れる。最悪、犀天使殿が手立てを講じてくれると期待もしておくデシ」
青年の気配の人物は、しかし、この記憶ではヘイスケ爺さん同様年老いていた。
会話からすると下層域の首魁だが、魔物としては随分老化が速いような??
つか、喋り方独特っ。
「アバドンは善いヤツだが、厳格でもある。『自分が傷付いても』摂理を優先してしまう気はするな」
「デシシ! 彼が傷付くことを気に掛けるんデシね。君らしいな、ヘイスケ」
「······やり残したことばかりだ。ここへきたばかりの頃はいくらでも時があって、なんでも解決できる気でいたよ」
爺さんは苦い顔で鍵の杖を手にしていた。
今ならわかっちまうな。人のままの体の老いた爺さんにはもう、鍵の杖の力は重過ぎる。再現環境ベースに考えても7層だともう通常行動を半日するだけで限界だろう。
でもって老人が、気力体力の限界まで連日振り絞ることは致命的だ。
「君の代になって劇的に物事は進んだ。私の見立では直に出所できそうな者達が現れだしたデシね。ザリチュやエーリヴァーカルですら話せるようにはなった。姫も······数代ぶりにアリッサ以外と面会して下さるようになったデシから」
そんな感じだったんだ。つか、姫?
「私はシープランド氏が引き継いだ務めを、長い年月で培われた皆の『善性』を頼りに賢しく立ち回っただけさ。功績はどの代にもあった。例え、上手くゆかなかった代でもね。きっと、この迷宮は結局みんなの心の中にあるんだよ。いつか、『モート』。君も行くべき道を見出し、ここから出てゆくといい。私はその日を願っているよ」
「ありがとう。年月の果てに、別れを惜しめる者に逢えてよかったデシ」
モート、6層の混沌に残ったはずの首魁だ。魔王軍時代は『冥王』と呼ばれ、魔王戦の前に最後に勇者パーティに立ちはだかった最後の大幹部。
どの言い伝えでも悪の権化だった。
まず、デシとか言わないし!
鍵の記憶はそこで途切れ、俺は眠りの闇に落ちていった。
······今となっては、親父は責められないな。
爺さんみたいにドンピシャで適性があったり、俺みたいに元々浮世からハミ出てたワケでもない。
親父が普通だったから俺達兄妹がポコポコ産まれて好き勝手させてもらったわけだし。
爺さん達も言ってたが、なんつーか細い糸が連なって俺の所まできてる。
時には限りがある。だが、その向こうの連中もいた。俺もいつまでやれるかわからないが、立ち止まってらんねーな!
と思いつつ、夕方寝て起きたのは翌日のド深夜で、その翌日も身体がダルくて1日金葉亭と秋雨酒店でいつメン達とダラダラ過ごした俺だったぜ。
あれぇ??




