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親父の遺産がダンジョンだった件  作者: 大石次郎


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12話

俺達とゴブリン・キラーモール連合軍は雑な造りだが規模のあるオーク族の拠点前に到着していた。


毒気は周囲に立ち込め、キラーモールとゴブリンはマスク。ケムシーノとワーグ達は毒除けの首輪を装備している。


配置は正面に7割。裏門側に3割だ。


連中は半端に外で交戦せず、有利な城壁を利かせて籠城の構えだ。


「矢文、頼む」


「御意」


ゴールドスコップ前線指揮役。後衛で全体指揮を取るのはビッグヘッドだ。キラーモール側は名代としてソーサラー個体が後衛指揮を担当してるがあくまで全体指揮役はビッグヘッドだった。ここ数日の連携の成果だな。


俺→ビッグヘッドの順の指示で、距離の出る固定型弩弓のバリスタで矢文は正門に撃ち込まれた。


矢文はすぐ抜かれ、潜り戸から中へと伝えられた。


内容としては俺のマスター継承、和平、1層資源の共有等、穏便なことしか書いてない。


程なく正門の真上にオークの倍はある体格のオークが姿を現した。首魁個体、オークキングだっ。


望遠鏡で覗きながら思わず、うへぇ、となる。外だとオークキング個体の発生は地方だと冒険者ギルドや衛兵団が総出になる案件だ。


オークキングは拡声の魔道具を使うでもなく、大きく息を吸い込み、大音量で言い放ち出したっ。


「1層は俺様達オークが支配するっ! ゴブリンとモグラどもは『食肉奴隷』!! マスターは手足をもいでっ、ドタマに薬ぶっ込んで『環境改善器』として活用してやるぜっっ!! ブヒヒヒッッ!!!」


「······」


「代々粗暴ですが、当代は悪環境に慣れきっておりますので、あんな次第です」


ね? といった顔のビッグヘッド。


「坊、『見切り』も必要である」


住人同士の思惑が重なると不干渉的な態度になりがちなアバドンさんだが、見かねた様子だった。


「ああ」


相槌しながら、俺は拡声効果の魔道具、『割れ鐘(われがね)ワンド』をトントン叩いて利いてるか確認してから最後の呼び掛けを行った。


「捕虜は食ったりしないし、無駄に処刑することもない。交渉は個別にも行う。······食糧は普通に生産した方がポジティブだぜ? それだけだ」


言って、割れ鐘ワンドを切った側からオークキングは戦斧を遠い俺目掛けて平然と投げ付けてきたが、前衛指揮のゴールドスコップが剛腕で『投石』して撃ち落とし、それが開戦の合図になった。


_____



オークキングは不敵に嗤い合図した。


相手は城門の上に設置したバリスタと、事前調査によればあるはずの城壁内の高所に設置された固定型投石機カタパルトによる放物線攻撃を狙い出してくるはず。実際やられれば被害は甚大だ。


だがしかーしっ!!『めちゃ練習した俺がいる』


グランドマスターキーの杖の魔力を高めるっ。範囲はオーク拠点の城壁と、その内側手前、位置を暗記したカタパルト施設!


「どーんっ! だっっ」


俺は杖の『解体』の力を使った!! ドォッ! オーク拠点の城壁とカタパルト施設は崩れ去ったっ。


『直せるなら壊せる』! 連中も扱い難くはある魔王城の瓦礫主体で組まなかったのが運の尽きだ。


驚愕の表情で崩壊に呑まれてくオークキングっ!


オーク拠点が砂煙に覆われる中、ゴブリン・キラーモール軍は歓声を上げたが、


「ブッ殺すっっっ!!!!」


オークキングは瓦礫から顔を出し、続けて次々と瓦礫から顔を出すオーク兵達。キング以外は無傷でもないが、頑丈だっ。


キングが吠え、それに呼応してオーク兵達はゴブリン・キラーモール軍に突進を始めた。


ゴブリン兵達は炸裂矢。キラーモール兵達は剛腕によるスリング投石。炸裂矢と同等の火力が出る。


「癒しの祝福を与えるものである!」


アバドンさんは中空に魔法陣を伴う光の話を作りこちらの全軍に癒しの力を与えた。俺は用意してる魔力結晶で杖の回復も図る。


オーク兵はさすがにリーフウォーカーより頑丈な上に盾や得物、拾った瓦礫でも、炸裂矢や投石を防ぐし頑丈だ。状態によるが2〜3発は耐える。


3の矢と3投目を経て近接戦になる段でまだ半減程度。だが、こっからが違う!


「ケム〜ンっ!」


ゴブリンやキラーモール達の背後に潜んでたケムシーノ達が援護する! 回転体当たりや粘着糸をいずれも下半身狙いで放って妨害っ。


ゴブリン兵達は通常槍ではなく、数本しか持てず使い捨てでも炸裂矢と同じ構造の『炸裂手槍』を装備、キラーモール達は単純にオークに匹敵する膂力があった。さらに、


「おほほっ、華麗なるワンコ軍ですわ!!」


ブルワーグに乗ったアリッサ率いるワーグ軍が側面攻撃を行い、勢いを断絶した。


流れはこちらにあった。だがっ、


「頭を狙え!! 犬は壁を作っとけ!」


痺れを切らして前衛に出てきた戦鎚二刀流のオークキングがこちらの兵蹴散らしながら指示を出すと状況は一変!


正面のオーク軍は錐型に一直線に『俺』に突進を始め、ワーグ隊は攻撃を捨てたガード専門の部隊に進行方向を固められ動きが鈍くなった。


俺のいる後衛本陣の守りの要はゴブリンハイウォリア達とケムシーノ上位個体コンビ。あとはビッグヘッドとキラーモールソーサラーの魔法だ。


十分強いが、数はパワーだ。保つもんじゃないな。


「マスター殿、『撤退判断』をされると始末に負えなくなります。機会は逃さぬよう」


「了解!」


ビッグヘッドに釘刺された。ターゲット、オークキングを見極める。


ヘビィナイト個体とゴブリンコマンドに守られ、ゴブリンシャーマンの支援魔法を受けた、その名の通りばかデカい黄金のスコップを装備したゴールドスコップがこの対処に当たっていた。


素の実力はわからないが、狂戦士スキルで異常興奮状態のオークキングは手が付けられい勢いだった。


「······」


バレたらマズい。頭上の向かって左手にズラした位置に『魔力の杭』を生成する。1本に重ねる、2本、3本!


もそっと時間を掛けて交渉したかったぜ。


「っ!」


ドッ、撃ち出された魔力の杭にオークキングは反応し、交差させた魔力を込めた戦鎚で『受け切った』が、その時既に間合いまでゴールドスコップが飛び込んでいた。


「『ノヅチ(ぶすま)』!!」


地を削る斬り上げの一撃で切り裂かれ、さらに時間差で発生する岩の槍衾で串刺しにされ、オークキングは討ち取られた。


影響下にあったオーク兵達は急速に脱力し、降伏してゆく。俺達の勝利だっ。


「「「うぉおおおーーーーっっっ!!!!」」」


「「「わぉーんっ!!」」」


「おーほほほっ!!」


「「「けむ〜んっ!!」」」


ゴブリン・キラーモール軍、ワーグ隊、アリッサ、ケムシーノ隊は勝ち鬨を上げた。


「はぁ、話せる相手を倒すのはしんどいな」


「首魁級は大体会話するものであるが?」


「······」


アバドンさんの素っ気ない一言にげんなりする俺だったさ。

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