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親父の遺産がダンジョンだった件  作者: 大石次郎


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113/122

113話

ピロシ達はヴァーリンに雲を2つに分けさせ隊分けすると、即先の突入作戦の実行を始めた。


胡蝶の園の城壁は堅牢な上に攻撃者にカウンターで強い幻術を掛ける仕様。アリッサがいてそれを免れるか否かは検証のしようがなかった。


城壁には正門と裏門があった。隠し通路もあるはずだが調査の間はなく、修行時代あまり出入りはしていなかったロックローズの記憶も曖昧。


裏門は戦力の分断を嫌ったエーリヴァーカル軍が後付けで念入りな氷壁の封印を施しており、簡単には壊せそうになく、裏門自体を開ける術やこれを破壊した時の守護魔法によるカウンターリスクも不明だった。


胡蝶の園上空の結界は元々堅牢な上に強い迷いの術が掛けられており、これもアリッサがいることで抜けられるかは不明。


正門はよく見れば既に破壊された上で氷壁の封が施されたおり、『中に侵入があるのか?』については議論するまでもなかった。


正門に最大の戦力が集まっていたが、ピロシ達はここに仕掛けることを決めていた。理由は奇襲の機会は1度きりであるからだった。


「骨と死に損ないどもっ、ギハハハッ!!」


「焼キ甲斐ガアリマスナッ!!」


待機組の雲の、隠蔽魔法の効果内から飛び降りたボルケーノとキャニスターゴーストが拡散させた電磁熱線と無数の誘導爆弾をウバラシャチとリボーン兵の大群に撃ち込む。


ドドドッ!!


混乱の中、残りの待機組の雲の隠蔽魔法自体を切り、クリスタルリトーが氷壁に向かって飛び出す。


「うらぁっ!!!」


右腕を巨大化させて殴り付け、右腕と相殺する形で強い魔力の籠もった正門の氷壁を打ち砕いた。


空いた正門に、隠蔽魔法を維持したヴァーリンの駆るピロシ達の雲が突入していった。


着地したクリスタルリトーは正門内に敵影がないことを確認すると振り返り、左腕を巨大化させつつ、耐寒冷仕様のエッジキューブを多数召喚。


「俺様はただの壁より硬ぇぞ?!」


一歩も通さぬ構えだった。


(ふん、増援どもを牽制は任せておけ)


待機組の雲から黒炎怪鳥化して飛び出し、フェネクスは飛び去り、


「ボクらは無難に立ち回ろう。クリスタルリトーとボルケーノ達に攻撃を集中させないことが仕事だ」


待機組の雲で、バケヤナギエントに昏倒したネガジャバウォック護らせながらヨミロートスが言ったが、


「任せろ! 俺は投擲も得意だっ、シュウゥッ」


リュブリャナは嬉々として電撃属性の投射槍を投げ付けだし、他の水棲の4者を困惑させていた。


正門前での戦いは、城壁外周のその他のエーリヴァーカル軍の戦力が集まることでこれより激化していった。


_____



俺達はロックローズの隠蔽魔法を維持してもらいつつ、低速気味の飛行する雲で慎重に胡蝶の園内を飛行していた。


「ふぁーっ、あちし久し振り来た〜。今、こんなんなんだぁ〜」


「えらい寂しゅうなってまんなー」


内部は寒くはなかった。花園の中に洒落た小屋や一軒家がまばらに立ち並ぶ奇妙な街並み。


長い放置で草花が建物を侵食もしていた。迷宮の劣化崩壊の影響は見られかったが、所々に巨大な霜柱が噴出していて、外部の影響を防ぎきれないという意味では破綻はしてきているようではあった。


場の魔力は平時生活するには難があるくらい濃厚でもあった。本来は幻術が全体に掛かった空間だな。


実体のない『淡い光の蝶』があちこち舞っている。


勇者の伝説だけでなく、色々や伝承に出てくる夢魔達の棲み処の描写と概ね合致してんな。


「人気がなくて荒廃しだしてるけど、懐かしい景色だわ。今の代の私からするとダークエルフ郷より懐かしい場所かもしれないわ」


ロックローズは感傷的になってんな。


「それはそうと! こっちは万全で乗り込めてるワケじゃないからねっ。とっととアリッサの館に行くよ?」


「「ケムケムっ」」


眠るアリッサの籠を背負い、やはり眠るアストロロジーまで抱えてるケムシーノ達に護衛されたゴールドスコップ。


「わかってるわよ、案内はするわ」


「アストロロジー程じゃないが、俺も杖で索敵してみる。ヴァーリン、慎重にゆっくり、急いでくれ」


「いや難しいな? ダハハ」


俺達はロックの案内で、無人の幻想の蝶の花園を進んだが、


「······そもそもなんですがぁ、アリッサ様連れて行っても『全然起きなかったら』我々、ヤバくないですか?」


不意にポロっと言ってくるエル・ジェリーマン。


「「「······」」」


全員気不味くなったが、ド正論だ。


「あ〜。ロックローズ。使えそうな転送陣跡的なのわかる?」


「待って、今の状況はわかないけど、当時隠されてたのもいくつかあったからっっ」


インクを念力で操り巻紙に地図と位置を素早く記すロックローズ。手に取ってみると、隠し転送陣だけでも7箇所もあった。


「エル・ジェリーマン。君はこっそり転送陣造りをしてくれ。隠し転送陣跡だけ探る感じで。言霊の石で報せてくれ。使わずに済むならなによりだが」


「わかりました。では、詰まないよう退路をこさえておきましょ〜う。ムフフ」


エル・ジェリーマンは地図を手に、隠れ身のマントを2重に羽織って雲から飛び降りて花園に消えて行った。


「これでよし」


「よし、ではない。行き当たりばったり過ぎるのである、坊」


アバドンさん教官モードっ。


「ごめんて······」


いつもと違う流れで後手になっちまった。


「安心しろピロシ、いざとなったら私の音無し矢が火を吹くぞ?」


「その技ばっかりになりましたな? ヒホホ」


ま、いいけど。


俺達は1つ次善を整えアリッサの本来の根城。『花の主の家』に向かった。


_____



いや〜、『いる』なぁ。


鍵の杖がガンガン反応してる。臨戦態勢を取ってるからこっちの隠蔽魔法も看破してんだろう。


「······」


俺は指で差してみんなにも知らせる。


草花ですっかり覆われた洒落た大きな館の正面玄関の前の前庭の地中だ。


あんま上手に隠れてない。というかこれ見よがしなくらいだ。3体だな。1体はヘッジホッグくらいの体型で人型。帯状の装備の先にバカみたいにデカい球体をキープしてる。


他2体は······巨体のヒュドラだな。


つかどんな主旨だよ? 地中で初動遅れるだけじゃないか??


俺は空中に魔力で文字を描いた。


『エレファント、ヒュドラ2体』


全員了解した。


手筈は整ってるが、今更奇襲もない。ここは矢文文化も一応有効としてみるか?


俺は大きく息を吸い込み、察した皆から大体呆れられた。


ロックローズは諦めて隠蔽魔法を解く。


俺は腹を括って大声を張った!


「俺はピロシ・シープランドっ! 新しい鍵の」


「ド間抜け畜生がぁああーーーーっっっ!!!!」


地面を撃ち抜いてっ、錨用か? て太さの鎖と繋がったバカみたいなサイズの棘付き鉄球がこっちに飛来した!


ヴァーリンが長棍を巨大化させて打ち払ってくれたが、反動で雲も大きく後退させられるっ。


即座にコメリナが地中から姿を現した巨漢のニーベルング兵、ニーベルング・エレファントに音無し矢を連射!


が、同じく地中から爆発的に出現したカイザークライオヒュドラ2体が『氷結硬化』スキルで自らの多頭の首で受けきられた。


「うぉおおおっっ!!! 待ってる間に腹が減った!!」


エレファントは脈絡なく収納の腕輪から『デカい骨付き肉』を取り出すと、一瞬で肉を食べきり、骨も齧り尽くした。


ゲップもする。


「俺はニーベルンンングっっ・エレファアァッッントッッッ!!!! 力の権化ンだっっ!! 我らが主にまじないを掛けたクソ夢魔の主め! ここでぇぇっっ」


嵐の用に鎖鉄球を旋回させだし、左右のヒュドラ達が慌てて距離を取る。


「磨り潰ぅぅっっっっーーーーンンンすぅッッッ!!!!」


なんだコイツっ?! 素人の『濃さ』じゃねーぞ?!


「くっ、なんかすげぇ負けたくねぇ!!」


「ピロシ、張り合わなくていいから」


ロックローズに冷静に窘められつつ、俺達は対向したくなるパッションのニーベルング・エレファント達と対峙した。

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