114話
ニーベルング・エレファントはつむじ風を起こし胡蝶の園の花を散らし、
「ンンんばぁっっ!!!」
鎖付きの大鉄球を放ってきた!
ただの魔力の籠もった強打じゃない、爆破系の性質だなコレっ。ロックローズだけに結界で受けさせると下手すると一撃昏倒コースだ。
ここは攻撃用に練習した技を防御に使ってみっか?
······といったようなことを瞬間的に考えた気がする俺は『ガイアジェム使用、小規模展開3重完封陣』をロックローズの結界に鉄球が着弾する前に放ったっ!
ガァンッ!! 大爆発しつつどうにか弾けた。この衝撃でも鉄球や鎖は傷一つ付いてない。単に硬いっていうより爆破や鈍器的な打撃に強い耐性があるんだろう。
完封陣は魔力杭が基点になるから刺突な気もするが間に爆破が入るからか? あるいは接触の衝撃を爆破に変換する仕様なのか?
大味なようで『無敵要素』を内包した面倒なヤツだな!
「ヴァーリンっ、ヒュドラを1体頼む!」
「またゴツい竜だなぁ〜」
言いながらもヴァーリンは雲を分けてカイザークライオヒュドラの1体に即座に向かってくれた。
エレファントにはコメリナが音無し矢を連発して牽制。もう1体のヒュドラはロックローズが炎の結界で取り敢えず閉じ込めたが、すぐ破られそうだ。
「コメリナ達でも閉じ込めた方を足止めしてくれ! エレファントは俺、ロックローズ、クルー、ストレイルタバガで対応するっ!」
「わかった!」
「「ケムんっ」」
「錯綜している。全員に回復力底上げの祝福を与えるっ!」
「アリッサとおチビは任せなっ!」
「ヒーホッ!」
アバドンさんの祝福は回復強化か。雲はコメリナ達に譲って俺達は飛び降りた。
「降りるんだ?」
「クルーが走れないし、俺とロックローズとストレイルタバガは飛べるだろ?」
「あちしの『逃げ足』っ!」
「まぁヒュドラよりかは相性ええかも?」
クルーは仲間を守護する感じじゃないがめちゃくちゃ速い。ストレイルタバガは炎が本体でヒュドラの広域吹雪ブレス連打は具合悪いだろう。
「アリッサ以外はオマケだがンっ、お前の首と杖はグリズリーのヤツのとこに持ってゆくンぞぉっ?!!」
癖のある口調で喚きながら小さく回転させた鉄球で加速したヘルスパルトイを牽制しつつ、杖と杭に乗って飛び出した俺とロックローズには地を踏み締めて『高速回転する氷片の礫』を多数放ってきた。
「完璧!」
これは軽い、と見たらしいロックローズはまともには受けずに斧の刃のように展開した2枚の結界で氷片を逸らす。
俺は多数のファイアジェムを対価に3条の燃える8重魔力杭を放って、鎖でガードさせ、少し後退させた。
「ンンぅんっっ」
お? 爆破する鉄球を介さないと普通に赤く熱っする感じたな。
「余裕ぶり過ぎじゃないか? 俺とこの杖はもう『5層の魔力』に慣れて蓄え済みなんだぜ?!」
ちょいちょい『首と杖』だけ回収されそうになるが、今のところ全回避なピロシさんだぜ?!
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飛行する雲を操るヴァーリンは長棍を振るい、吹雪のブレスの連打は風の刃を操る『大鼬巻き』スキルで逸らし、巨大な多頭による噛み付き自在に回避した。
「猿なのに鼬ときたもんだ。ダハハ。つか、近間から始めるのやり辛ぇな」
脚の遅い上位竜はブレスも物理も強烈だが的は大きく、とにかく胴体の動きは遅い。
よって伸縮し巨大化もする長棍を操るヴァーリンとしてはわざわざ接近しないで処理するのが基本であったが、今から距離を取るとピロシやコメリナ達に一撃入れられかねない。
「······久しく使ってないが、やってみっか」
ヴァーリンは無造作に頭の『毛』を抜くと、息を吹き付けて撒いた。
散った毛は媒介となって煙と共に『数十の雲に乗ったヴァーリン』に変化した。
「?!」
戸惑うヒュドラ。
「耐幻術アクセサリー持ちのお前効いてんだから、分身だってよっ!」
本体程ではないがそれなりの攻撃力の分身達が一斉にカイザークライオヒュドラに打ち掛かり、狙いを絞りきれなくする。
その隙に本体が巨大化させて長棍の突きでヒュドラの胴を打ったが、氷結硬化で防がれた。
「おい〜、それ自動発動かよ」
苦笑しつつ、ヴァーリンは連携する分身達の中に紛れていった。
一方、早々に炎の結界を破ったもう1体のヒュドラに音無し矢を連発していたコメリナだったが、当たるには当たるが全て氷結硬化で防がれていた。
「また氷のガードかっ、アバドンロード! 回復はいいから『あれ無しにする祝福』をしろっ」
「短絡的過ぎる。ピロシ達はどうする? 強壮でもこれはただの眷属。最下層再現域までノコノコついてきたのなら対処するのである」
「ゴールドスコップ! 天使がノコノコついてきた、とか言ってくるぞ?!」
「なんであたしに言うんだよっ」
アバドンロードは祝福と、最低限、自身と非戦闘員を守るゴールドスコップを守る光の盾を展開する程度の介入以上はする気がないようであった。
割と隙の多いコメリナはミスリルケムシーノとテラケムシーノの2体が守っている。
吹雪は大して効かず、噛み付きは素早く回避するヘルスパルトイは前衛で注意を引きつつ、直接攻撃を繰り返し試みていた。
「一撃だと、氷で防がれる。これは反射で展開······」
思案しているヘルスパルトイ。
「くっそ〜。馬糞コロン・凶をネガジャバウォックに使い切ってしまった。あれさえあれば······」
やはり凶器として所持していたらしきコメリナ。
「コメリナ! ゴールドスコップ! ヒホっと、首を纏めて払ってもらえますかな?」
「やってみようじゃないっ!」
「よし任せろっ!」
コメリナは1度に纏めて音無しを放つ『音無し矢・鳳仙花』スキルを使って、嚙み付きを仕掛けてきた多頭を全て氷結硬化させて止めた。
ゴールドスコップは昏倒したままのアストロロジーを一旦ポイっと頭上に投げ、両腕を中心に筋力を一次的に高める『剛力・改弐』スキルを使い攻撃力を高めると、吹雪ブレスを吐いた多頭に炎のスローイングナイフを多数投げ付け炎のナイフが負荷で炸裂する形で全て相殺させた。
この機会をヘルスパルトイは活かした。
ファイアジェムを使った溜め動作で全身を燃え上がらせながら高めた火の魔力をオグンが鍛えたアンデッドにしか使えない負の炎の剣『残火のフランベルジュ』を用い、
「······ヒホ」
ナマクラ斬鉄を連打する『さみだれナマクラ斬鉄』スキルを放つヘルスパルトイ。
ブレスを封じられた多頭は見逃したが、氷結硬化を使った多頭は氷結硬化ごと両断して首を跳ね、傷口を魔剣の負の炎で焼き続け再生も阻止した。
「「「ザォオオォーーーッッッ」」」
残った多頭の首で苦痛に絶叫するカイザークライオヒュドラ。
猛烈な嚙み付きとブレスのカウンターは素早く飛び退き躱すヘルスパルトイ。
コメリナ達が追加の音無し矢と炎のスローイングナイフで牽制し、一旦全体の距離が取られた。
「大丈夫かヘルスパルトイ?!」
「『火葬された』みたいになってるよっ!」
「「ケムんっ」」
確かに全身の骨と装備が焦げていた。
「いや、あの、ピロシ殿ではないので、渾身の捨て身ギャグとかじゃないですぞ?」
「いいからさっさとダークジェムを使うのである。回復の祝福はアンデッドにも有効!」
「はぁ」
大人しくダークジェムを数個使って、わかり難いがガタはきていた骨の身体を回復させるヘルスパルトイであった。




