108話
迂回を終えたピロシ達は別動隊と連絡を取りつつ、潜行強襲移送艦で水面に茄子でも静かに浸けるようにしてアペフチの結界に突入した。
「うわっ、気持ち悪っ。なにこの魔法式?」
「あちしもコレ、嫌い!」
結界には敏感なロックローズと単純に苦手らしいクルーは総毛立った。
「ギハハハ。ダークエルフと『毛皮』よ、余達の工学力っ、怖いか?」
「······悪質だわ」
「最低!」
ロックローズとクルーは不快がったが、姿と航行に関する音や油の臭いや熱や魔力動力の気配等を隠蔽しながら、メジハの牢獄最下層の環境が再現された猛烈な寒冷環境の中へと侵入に成功した。
「艦全体ノ侵入ヲ完了シタ。コレヨリ索敵ヲ避ケツツ前進スル」
「しゃっ! 3割までだよなっ? 静かに行こうぜっ!! ふぉおおーーっっ! 起こすぞアリッサ!!!」
「マズ、オ前ガ静カニシタライイ」
「······了解だ」
伝声装置で注意され、気まずい当代ダンジョンマスターであった。
一方、土壇場でボルケーノ側が『1体ぐらい幹部を復活させろ』とゴネた結果、
「YOッ!」
いとも簡単に『身体を新造』されボルケーノに『魂の核の複製品』を入れられ復活したコッカリルゴーストが率いる艦隊は、結界の破損の回避以外には一切を配慮せずに結界を越えた。
騒然となるフィボルク達。
「せいほーッ! 久シ振リノ死ダゼ?!」
と、全員艦から出撃した。機怪獣も大量にばら撒かれる。
コッカリルゴーストは『半飛行形態』に変形すると、連射で次々と霜の巨人達の急所を粉砕してゆく。
突入したピロシ達の物より簡易な艦自体は帰還を考慮して即時撤退していった。陽動隊に深く進軍する予定はない。
「ポンコツ2号にばかり手柄は立てさせないゲコ!」
「今こそっ、『勇者パーティーが強過ぎるやら各個撃破されるやらでせっかく練習したのに使えなった合体必殺技』を使う時コォーン!!」
「ブゥンブゥ〜ンっっ!」
コンゴウガマ、ヤコゼン、ベルゼジュニアは魔力を合わせ、完全に調和を取れた構えを空中で取った。
「「「『絶対ジャストパリィもジャストスウェーさせない地獄極悪クレーム無視っ! お前の旅はここまでだワハハハーー!! 三滅槍波ぁああーーーッッッ!!!!』」」」
巨大な『槍』の形に高度に練り上げられた魔力の塊を放つネガジャバウォック三滅槍トリオ。
槍は直線では3者が敵と認識した者をある程度自動で追尾しながは次々とフィボルク達を撃ち抜き滅していった。
計画的に立ち回れば初見に限れば当時の勇者を討ち取れていた可能性のある凶悪な合体スキルであった。
「俺達も行くでしゅ!」
「チャッハーーっ!!」
黒玉仙はエビルカーバンクルに地の魔力を付与し、特大の棘の玉に変化させた。
「「『超・八つ裂きシューティングスター』!!!」」
三滅槍程の威力ではないが、削り穿つ残酷な強打スキルでフィボルク達を蹴散らすクリスタルリトー幹部達。
「ボォオオッッ、羽虫めぇっ!!」
「凍り付かせっ、叩き落とせ! ボォオッ」
フィボルク達も攻勢に転じだした。氷の棍棒を振るい、アイスブレスを吐く。
その棍棒を蹴り割り、ブレスを烈風で消し飛ばすダーファンとテラツツキ。カイムとヴクヴ・カキシュも控えていた。
「デカブツでも氷の眷属くらいがよぉ」
「ウチら火の権化と対峙してさぁ」
「無事では済まないピョ!」
「······私は雷の権化ですが」
カイムだけ気まずい顔をしていたが、フェネクス幹部4者は既に魔力の練りは万全。
ダーファンは大鎌による火炎の斬撃『炎獄首刈り』で次々と紙を裂くように巨人達の首を跳ね、テラツツキは嘴に黒い死の炎を宿し『聖鐘貫き』で正確に急所を突いて呪いの火で焼き殺していった。
「「ギャハハハ!!」」
魔物その者の顔で哄笑する怪鳥の女達。
「行くピョっ、カイム!!」
「カカァッ、いいですよ!」
ヴクヴ・カキシュは全力の『熱光波』のスキルで焼け付く閃光を広域に放ってフィボルク達の目を焼いて怯ませ、カイムは『雷閃斬り』高速特化の帯電した斬撃で頭部や首をやや浅く斬り裂いてゆく。
「「「?!」」」
致命傷には程通り攻撃にフィボルク達は戸惑う。が、
ボッッ!!!
カイムの手にある剣はオグンが鍛えた爆炎の魔剣『凶星剣』。一拍遅れて全ての傷口は爆裂した。
「あぶぇっ?!」
「べしぇっ?!」
「ひでぇぅっっ!!」
フィボルク達は死にただの雪と氷、あるいはすぐに吹雪に凍り付く蒸気と消えていった。
その様を後衛から、隠れ身のマントを来て伺う者達がいた。
岩の肌を持つ古の地下種族にしてエーリヴァーカルの眷属『ニーベルング族』の兵達であった。
「新たな鍵の主の来訪は確定か。鉄屑の眷属まで味方にしている」
「目障りなっ、我らが王さえ目覚めていれば!」
「······これは陽動だ。首魁も鍵の主もいない。通達を!」
「我らの宮殿狙いか?!」
「いや先に夢魔どもの方だろう」
「小賢しい! 奇襲したつもりだろうがただでは済まさん!!『アイスズー』群を回せっ、地上に落としてやる!」
「陽動だろう? 戦力が惜しい」
「本隊を待ち受けるなら増援を避ける。見ろ、捨て駒の機怪獣と『不死性の高い幹部個体』ばかり。破れかぶれで突進されては面倒だ! 上手くいっていると思わせろっ」
指揮を似合う岩の地下種族達は画策を始めた。
······この環境に完全適合した氷でできた言霊の石を用い、通達はすぐに氷雪のこびり付いた岩場にいた幹部の1体にも伝わった。
「ん〜〜ああーーー······何年ぶりだ」
身体と1体化した凄まじい魔力の隠蔽効果の旅装束と、針山のようにいくつもの矢筒を背負ったニーベルング族の大男が埋もれた氷雪を割りながら身を起こした。
周囲に並の隠れ身のマントを纏った弓兵のニーベルング族達が集まる。
「アペフチが必死こいて張ってる結界から出てくるってこたぁねぇなぁ······ん〜。ダークエルフにアストロロジーとかいうのがいたか。弱ぇが予見してくんなぁ······はぁ。億劫だ」
針山の矢筒の弓兵はマントを渦のように逆巻かせだした。
「俺は『深く潜る』。陽動の方にだいぶ取られたが、使えるだけ雑魚どもを使ってここに陽動しろ。兵も足りねぇし、遠いとこにわざと穴空けろ。ただし動かせ。今のアストロロジーがどんな仕上がり具合か? 知らねぇが程度の低い個体だ。予見は不完全。乱してやれ。他の幹部連中には『邪魔すんな』て言っとけ。······散れ」
命に従い、弓兵達は素早く飛び退き、雪煙の中に姿を消していった。
同時に逆巻くマントは周囲の風景その物に擬態し始めた。針山の幹部自体も溶け込みだす。
「俺が、この『ニーベルング・ヘッジホッグ』が外回りを担当する周期に突っ掛かってくるたぁ······持ってないヤツらだぜぇ? フェフェフェ······」
巨大な弓を手に、ヘッジホッグは氷雪の岩場その物に変化し、すぐに存在の全てを消失させた。




