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親父の遺産がダンジョンだった件  作者: 大石次郎


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107/122

107話

手近な東の端の野営地に転送してから寒冷地帯に突入するまでは、ボルケーノ達が建造した『潜行強襲移送艦』という中型船サイズの箱のような機械の飛行艦で運んでもらうことになった。


耐寒装備と耐熱装備の切り替えがややこしいからだ。シーカーローブなんて一張羅だし······


陽動隊はまた別動。


「······ボルケーノ、機械城のほとんどのフロアもだがここ換気悪いだよ。なんとかしてくれ」


「非機械生物の基準で言われてもな」


同じく船室内に玉座を作ってるクリスタルリトーと張り合うように機械の玉座に座っているボルケーノは億劫そうにしたが船の機構に同調して換気装置を強めに起動させてくれた。


ゴォゥっと唸りを上げて微妙に油臭い空気が吸い込まれてだいぶマシになった。


クリスタルリトーとフェネクスとか以外は大体辟易していたから、そういう意味でも空気よくなった。


「いいね。これならこのままアリッサの拠点まで直進してくれてもいいくらいだ」


「ふん、アペフチの結界を密かに越えるのでエネルギーを食う。予定通り3割進んであとは『デブ竜』に乗って移動だ」


「ゾァ?!」


「やめやめ、煽んなよ」


「ギハハ」


と、ここで艦内に艦を操縦してるキャニスターゴーストが伝声装置を使った。


「予定ノ地点ニ許容範囲以上ノふぃぼるぐ達ノ徘徊ヲ確認。回リ込ミマス」


船室内にうんざりした空気が漂ったが、まぁ迂回はしょうがない。


俺はスキュラとオークジェネラルが作ったらしいのを配っていた『ウォーターベリー』のギモーヴ菓子を1つ口に入れながら、アペフチとの敵対的な首魁の話を反芻しだした。


ザリチュ以上に交渉困難なんだよな······


_____



最初に聞いたのは試しを兼ねてた食事会でのことだ。赤々と竈で強い魔力の火が燃えていた。


「名は『エーリヴァーカル』。『冬の剣』とも呼ばれる。先代の『氷の魔王』の遺骸の葬られた魔界の辺境から現れた猛悪な『剣の魔神』だ」


アペフチはキビの濁り酒を飲みながら忌々しげに言った。


「私達が仕えた当代の魔王はこれを自分の剣として振るおうとしたのだが、ついぞ従わなかった」


エピが続けてヤバいヤツだな。


「魔王城内にヤツの支配域を造り、生成物と眷属の利用と、侵入者への『死の試し』として使っていた。よって厳密には最後まで『魔王様の臣下でもないただの荒ぶる魔物』だったモノだ」


「結果として勇者の仲間1人を討ち取り、名の知れたモノであった故にヤツへの対策を立てる為に侵攻の遅延を成立させる効果はあったがな」


フェネクスも話に加わり、エピのヤバさを上乗せしてくるエーリヴァーカルとかいう敵対首魁っ。


俺はパウンドケーキが喉に詰まりそうだった。


「アバドンさん、ここがこうなる前の時点でこの首魁はどうやっていたんだ?」


「どうもこうもないのである。孤立していた。人たらしのヘイスケでさえ、年に数回殺されずに面会するのがやっとであった」


「マジか······」


「よかったな、ピロシ。どさくさ紛れで冠にしちまえるぜ? ダハハ」


適当なこと言うヴァーリン。


「余もその案を推奨だ。アレは『次なる魔王の座』を狙っているフシがある」


この間は自分達以外を下等生物! とかなんとか言ってたがそれはそれって感じな小さなボルケーノ。


「でも、今はアリッサの術で眠り続けてるんでしょ?」


「え?」


ロックローズはポロっと言ってきたが、戸惑った。


「完璧補佐、聞いてないぞ?」


「言って······なかった??」


いやないよ。もういいけど。


「そういう噂はあったし、実際ここしばらく東部は『悪いなりに』落ち着いた感じではあったな。確認する術がなかったが」


5層にいたヴァーリンも知らなかったようだ。


「ふんっ、情報が古い! 余は定期的に『決死隊』を組んで調査していた。ヤツの休眠は把握済みよ、ギハハハ」


「マジなのかアペフチ?」


「ああ、私とアリッサで協力して十数年掛けて少しずつ、たまに眠るヤツの夢の中に『道』を作ってアリッサを侵入させた」


そんなことしてたのか。確かにアリッサは夢魔の女王ではあった。


今は籠で自分がぬいぐるみ化して爆睡してるが······


「最初にピロシの様子を見に上がってくる時に、結界張ってる私の夢の中に来てそんなようなこと話したのよ。『そういう夢』かな? って思ったけど、やっぱ違うし。え? 夢じゃないよね?」


混乱してきたロックローズ。


「実は、まだ君は結界を張っていて、これは『事態が好転したらいい』という願望の夢の中だよ?」


真顔でいらんこと言うヨミロートス。


「そんな、嫌ぁーーっ?!」


「うるさい。ロックローズ」


ツッコミが冷たいアペフチ。普通に『叱責』だよ。


「アペフチ様、アリッサ様の術はどの程度有効なのでしょう?」


普通の田舎の子供みたいな顔でケーキを食べていたアストロロジーが聡いいつもの調子に戻って聞いた。


「ついこの間までは正直いつ起きても不思議ないくらいだったが、ここ最近は随分落ち着いてる。あるいはアリッサが夢の中から改めて干渉してくれてきるのかもな」


全員の視線が集まると、


「ふひ☆」


と久々に寝言笑いをする籠アリッサ。


「当代鍵の主。寝込みを襲ってみるか? それとも放置されているアリッサの拠点の方をどうにかするか? このぬいぐるみが目覚める保証はないがな。どうする? 我は、どちらでもいいが」


フェネクスが挑むように言ってくる。


今度は全員の視線が俺に集まった。


「······アリッサだ。寝込みを襲って退治するってのは違うかなって。それに夢を介すれば交渉できるかもしれない」


俺はそう答えてたな。爺さん程スマートにはいかなくても、『矢文射つ方の』スタンスは維持したくてさ。


まずただ効率よく殺しに行くって、ちょい笑えないだろ?

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