106話
中心部程ではないが高温の焼け付く空をネガジャバウォックの背に乗って飛びながら、フェネクスとクリスタルリトーと同調しロックローズに編み上げた魔法式の維持を手伝ってもらいながら合わせて100を越える最適の各種ジェムを対価に補修浄化の力を発動させる!
「よっとっ」
焼け付く地上も、焦げてガラス室の目立つ元は砂の天井も、天井から地表に伸びる柱状、壁状構造物も、広域で光と共に補修し、浄化してゆく!!
······うん。想定通り、ボルケーノの支配域以上に管理の行き届いたアペフチの支配域の浄化安定化は2日でサクッと片付きそうだ。
(問題ないな、鍵の主よ)
「退屈な作業だ。さっさと終わらせんぞ?」
「そだな」
環境の性質的に炎熱地帯の作業はこの2体の世話になりっぱなしだ。
「完璧に喉渇くわっ」
ハーブ茶飲みまくりの補佐殿もな。
「辺りに異常はなしっ。つまんねーな!」
「野良モンまで管理利いてるとか、几帳面過ぎ〜」
見張りと偵察担当のダーファンとテラツツキは順調過ぎて飽き飽きしてる。
「遠距離でも大きな異変を感じません。しかし······」
探知担当のアストロロジーは『東側』を見て、眉をしかめた。
異様な光景が広がっていた。
アペフチの支配域の『端』に沿ってどこまでも迷宮の天井に達する火の結界が張られているのだが、その向こうは吹雪の雪原だった。
そこを雪と氷の塊のような巨人達が、
『入り口を探して』
終わりなく呆然と徘徊していた。怖っ。霜の巨人『フィボルク』だ。
「単純な炎の術じゃ防ぎきれないから『迷い』と『隠し』の術を掛けてるんだよ?」
護衛と案内を兼ねて付いてきてるクルーが寝そべって顔のあって齧ると無言で泣き出す『マンドラ人参』をボリボリ齧りながら言った。
「支配域の几帳面の管理やボルケーノとの長年の小競り合いも鑑みると、アペフチはかなり消耗しているかもしれませんぞ?『代替わり』の様子もないですし、ヒホっと心配ですぞ」
護衛というか、同じく護衛で付いてこさせられて不満顔のキャニスターゴーストの見張りで来ているヘルスパルトイ。
「そ。ほんとの話、アペフチ様は東部の最下層『忘却氷宮』環境の再現域への探索までは付き合えないよ? 環境改善で負担は減ってるけど、東側の結界の維持が難しくなっちゃうもん」
気楽な様子のクルーだったが、わりと深刻だ。いつかのザトウマージやロックローズの状況に近い。
「でも取り敢えず最初の探索はあちしとストレイルタバガが付いてくから安心してね? まずはアリッサ様を起こしに行くんだよね?」
「あー、それな······」
なにか反応あるかとケムシーノ達を連れ、アリッサ籠を背負ったアバドンさんにも付いてきてもらっていたが、アリッサは眠るばかりだ。
なんなら最近眠りが深くなった気がする。
『俺の代ではもう起きないパターン』もちょい考えたりもしてるくらいだ。
「アペフチの見立てでは拠点で眷属達の力を借りれば『夢の世界から引っ張り出せる』かもしれないんでしょう? 寝坊助、起こしにいかないと!」
ロックローズはその気になってる。
「アストロロジーはなにか見えないかな?」
「何度も試してみてはいるのですが、深く見ると、アリッサ様の精神体のようなモノに『吹っ飛んでしまう投げキッス』をされたり『物理的に吹っ飛ばされてしまうヒップアタック』をされてしまったりして、なんだかよくわからなくなってしまうのです······」
「意味わからん抵抗してくるな?? たくっ」
呑気にいつまでも籠で寝てるアリッサ。
軍師殿さ、俺もう5階まで作業終えちゃいそうだぜ?
「眷属のサキュバス達ならば『眠り』に干渉できるのは間違いない。問題はアリッサの拠点の『位置が悪い』ことであるが、そこもまぁなんとかなるであろう。例によってな」
「「ケムんっ!」」
珍しく大雑把なことを言うアバドンさんだった。
アリッサの支配域、サキュバス達のテリトリーはもう1体の『敵対的な首魁』の支配域のさらに先にあるそうだ。
「······イツマデモ喋ッテナイデサッサト作業ヲ終ワラセタライイ。時間ノ無駄ダ」
急にカットインしてくるキャニスターゴースト。今回はボルケーノがいないから飛ばずにネガジャバウォックの背で胡座かいてずっとムスっとするばかりだ。
「こいつ、生意気ゾァ。落としていいか?」
「フンッ。落下クライデ死ナヌシ、飛ベル」
「······」
「よしっ、次行こう! 今日中に終わらせないとなっ?」
本格的にネガジャバウォックが怒る前に促した。
東部の寒冷環境はかなり手強そうだ。まずはできることを固めてこう。
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5日後、俺達はすっかり落ち着いた機怪城に集まっていた。
「いい仕上がりだ。オグン! リュブリャナもいい仕事してるっ」
「そうか」
「だろ? シュハハッ」
寒冷地帯への探索組は主にオグンとリュブリャナ製の装備の確認をしていた。
加えて、そこまでするつもりはなかったんだが、連絡の行き違いで一族を引き連れたオークジェネラル達が『決起集会』用の食事を同じ広間に並べたりして慌ただしくもなっていた。
自分達用の石炭等も並べられるが、城の機怪人達は困惑気味だ。
それはそれとして、オグンは属性は火か雷か地に限られるが錬成鍛冶のスキルを持っていて、武具や素材の蓄えもあるから短期間で色々仕上げてくれた。
俺のシーカーローブには耐寒型に回収。防御力や『呪殺』耐性も上がった。
防寒帽子、マフラー、グローブ、ブーツもゲット!
ロックローズも防寒仕様で「完璧っ!」と上機嫌だ。
俺、ロックローズ、ヘルスパルトイ、ツルベ火クィーン、クルー、ストレイルタバガは基本的に今回組んで動こうと思う。
一方、リュブリャナは同行するリュブリャナ自身を含めた『水の属性』の者達に『不凍』の力を込めたアクセサリーを多数生成してくれていた。
水属性組は氷属性でダメージ受け難くても凍ると完封されちまうかんな。
「ようやく我ら水棲軍の出番だっ、『水回り業者』扱いから脱却する!」
「はい」
ザトウマージと防寒具を一応着た人間体スキュラは復活したミズチとマブチタユウを伴っていた。
ここに属性相性のいいリュブリャナも加わってもらう。
「隠蔽特性を持たせた『サンダーゴーレム・改参』群は撤退用だ。使い所は任せたぞ? キャニスターゴーストよ」
ビッグヘッドは今回ゴーレム量産に専念してもらっていた。
「自我ナキ単純ナ傀儡ダガ、使ッテヤロウ」
キャニスターゴーストは機械獣達を率いた陽動担当だ。
「先にアリッサを起こすのには賛成するが、問題は『ヤツ』の眷属どもがどの程度の反応をしてくるかだ。未知数なところがある」
術の維持の為、拠点を離れられないアペフチはクルーの持った小さな燈火台の炎を介して姿を現していた。今日のアペフチの護衛はストレイルタバガが残っていて、後ろでスコーンをもりもり食べてるのが映り込んでる······
「少し、大がかかりになるね」
防寒装備のヨミロートスはやはり復活したバケヤナギエントを護衛に連れている。
ヨミロートスには移送担当のネガジャバウォックと常に同行してもらうことにした。
「境い目付近の使えそうな拠点の転送陣は開通済みですよぉ? ムフフ」
エル・ジェリーマンもアクセサリーで凍結対策していた。
「アリッサには世話になったしな。今回は私も付いてゆくぞ?」
「私もです!」
4層作業をほっぽりだして降りてきたコメリナ。アストロロジーも同行。
「あたしは籠とケムシーノ係だね。天使はフリーの方がいいだろ?」
なんだかんだでゴールドスコップも同行することになった。エル・ジェリーマン、コメリナ、アストロロジー、ゴールドスコップとケムシーノ達は1つの組として動いてもらう。
フェネクス、ヴァーリン、クリスタルリトー、ボルケーノは単独で本隊に同行し、彼らの各幹部眷属はアペフチの護衛とキャニスターゴーストの援護に向かう。
フィボルクなんかはそこら辺の『普通の竜』より手強い。相手の戦力からするとそれなりの戦力がないと陽動にならないだろうからさ。
「当日決行となったら本隊は戦闘を基本避ける。可能な限り静かにアリッサの拠点『胡蝶の園』に接近しよう!」
「安全第一である」
「······余は、アリッサ寝ぼけネジに特段思い入れはない」
「決起集会で飯を作るっていうから来たが、俺達オークは同行しないからなっ」
温度差もあるが、しゃ! 全体として準備は万全だ。ぐっすり眠るアリッサ軍師、そろそろ起きてもいいんだぜ?




