100話
乱れ飛ぶ筒状飛行爆弾をツルベ火クィーンに落としてもらいつつ、集中!
杖と呼応させたライトジェムとサンダージェムを消費し、部屋全体に『帯電する光の粒子』を散布した。
「ネジッ?!」
電気熱線は打ち消され、飛行爆弾も目的と制御を失ったように明後日の方向に飛びだす。
電気熱線にも思ったより効いたが、飛行爆弾の方も電気熱線の通った前後の射線は制御が乱れる気配だったから利くとは思ったが想定以上だ。
詳細は知らないが、おそらく微弱な電気な光、後は熱源なんかを認識したり本体と通信したりして成立させてんだろう。
なんにしても、
「2人とも、チャ〜ンスっ!!」
ヨミロートスもクリスタルリトーも勿論心得ていた。
「『凍結・大樹海爪』!!」
鉤爪状に練った氷属性の最大強化の植物触手をボルケーノに放つヨミロートス。
「『お前死ぬ頭突き』だ、この野郎っ!」
凍り付いた相手に、硬化と結晶化の力を高めた強烈な頭突きを真上から胸部に打ち付けて床面に叩き込み、氷と地の結晶で磔にするクリスタルリトー。
「トドメは任せたっ、ツルベ火クィーン!!」
杖を振るい、俺は多数のダークジェムで輪を作ってツルベ火クィーンの闇属性の力に合わせた。
「とってもっ、ヒィィィーーーッッッ!!!!」
『超・墓場怪光』を放つツルベ火クィーン。負の光線が撃ち込まれ、磔のボルケーノはやたら硬いとんがり頭部以外は粉後に砕け散った。
散った『部品』は凍り付き、結晶化しながらさらに細かく砕け塵と消えてゆく。
「ツルベ火クィーン、倒し方がちょいグロい」
「不可抗力、ヒィ〜」
「交渉の本番はこっからだぜ?」
一応回復したヴァーリンが雲で近付いてきた。
「え?」
元のサイズに縮んでいったとんがり頭部からは強い魔力はもう感じなかった。
機械触手も筒状爆弾も全て力を失い塵に変わりだしていた。力を秘匿してる感じはない。微弱な魔力は残ってて、錆びた冠にも転じてはいないが······
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俺達がとんがり頭部を遠巻きにしていると、アバドンさん達一旦広間の外に下がってた組が戻ってきた。矮小体化も目立つが全員昏倒からは回復している。
「うっぷっ。完璧に倒せたようね」
飲みかけの2本目のハイエリクサーの瓶を片手に青い顔のロックローズ。
「ふむ、ボルケーノ。潮時である。試しは済んだとみるといい。ソフトクリームマシンのパーツにするのは免じてやるが、あまり意固地なようならお前の冠は『ザリチュの冠の隣に封じる』ことになる」
アバドンさんがそう告げるや否や、
「余の完敗と認めよう! ネジどもっっ」
霜付き結晶化の兆候のとんがり頭部の一部が煙を上げて開き、『機械を操縦する小部屋』から、なんとなくボルケーノっぽい掌サイズの機怪人が飛び出してきた。
そんな嫌だったんだ······つか、小っさ。
「中々よい試しであったじゃないか? 見込みのあるネジだ。締まり具合が違うっ。人類や他の下等、もとい『機械ではない魔族』との協調! 大いに結構っ! ギハハハ!! お? ヴァーリン君じゃないか?」
ぴょんっと跳んで、親しげにヴァーリンの肩に着地するミニボルケーノ。
「いい毛並みだ。『蚤取りマシン型機怪人』を貸してやろうか? ギハハ。君からも彼らに言ってやるといい。余は、友好的な、機怪族であると」
「······」
耳元で執拗な調子で囁くミニボルケーノを指で弾くヴァーリン。
「不敬であるぞっ? 屈せぬっっ」
足裏から炎を噴射して飛行して立て直し、今度はロックローズに目を付け、軽く張った結界に阻まれながらも結界にへばり付いて食い下がるミニボルケーノ。
「ロックロぉぉ〜〜ズ。アリッサの元への行帰り、見逃してやった恩を返す時ではないか? 合理的にぃぃっっ」
「関心なかっただけよね? 行きはアペフチに庇護してもらってたみたいだし、帰りは機怪人達に絡まれたけど自力で一気に抜けたしっ、恩着せだわ。ピロシ!『恩着せ事案』が発生してるわっ!」
「······ヴァーリン、アバドンさん。ボルケーノ、倒したら感じ変わり過ぎだろ?」
「あいつは『ボルケーノ型機怪人』に乗り込むと調子こくからな」
「ヤツらはマシンジェムとウォージェムを溜め込み、それに毒されてしまう性質がある。自己管理はできん。機神は所詮破壊神。眷属もその性質は変わらん。孤立させてよいことはないのである」
ややこしいな。
「ボルケーノ、でいいんだよな? 改めて和議を申し入れる。さっきのソフトクリーム云々も他意はなかったよ」
「ふんっ」
ロックローズの結界から飛び跳ね、兜を壊されたゴールドスコップの頭の上に着地するミニボルケーノ。おもむろにどこからどもなくマントを取り出して羽織り、大げさに翻した。
「ヘイスケのよしみだ。どうしても懇願するのであれば助力してやらんではないっ、力なき新たなダンジョンマスターよ! ギハハハっっ」
高笑いするミニボルケーノ。
「······大きな区分ではクリスタルリトーと同じグループだな」
「一緒にすんな!」
クリスタルリトーが噛み付いたとこで、のそっとフェネクスが現れた。
「終わったか?」
「「「フェネクス様!」」」
ダーファン以外全員矮小体化された眷属幹部達が殺到する。
「居酒屋まだやってる? みたいな面で入ってきたぞ? あいつ」
呆れるヴァーリン。ま、ね。
だが片は付いた。あとはネガジャバウォック達と待機組の様子だな。
いやはやそれにしても疲れたな······
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程なく、ピロシからのの言霊の石通信や、ヴァーリンの思念で話がヴァーリンの都に伝わった。
「少し、遅かったですね」
城壁の上でそれなりに奮闘した様子のコメリナ、ビショップ個体、アリッサ籠を背負ったスキュラ、ハイスライム・ヒーラー個体達と共に傷付いた城壁外を見下ろすアストロロジー。
エル・ジェリーマン、オークジェネラル、ビッグヘッド、レウケートレント、リュブリャナ、ザトウマージ達がその眷属達共に、コッカリルゴーストとその軍勢を討ち取っていた。
絵札兵とビッグヘッドの率いたゴーレム群はほぼ失われたが、味方の被害は疲弊程度であった。
「完勝でした」
「都の民にも知らせましょう」
ビショップ個体は部下に申し付け、ヴァーリンの都は主が戻る前から勝利の喜び満ちることとなった。
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地上の兎パンチの屋根裏部屋に戻り、超高級品だからこっそりハイエリクサーを飲んだ上で丸1日眠った俺だったが、まだ疲れと魔力過多の酔った感じが抜けきらず、ミラルゴと、行ってみたいと言い出した物好きな我が出戻り妹モモミに引き摺られるようにして夕暮れの秋雨酒店に入った。
既にモリオ、ココミ夫妻と仕事終わりのモーナンが来て呑んでいた。
昔、違うグループだったココミとモーナンだがそれはそれで盛り上がっていた。間によくも悪くも鈍感で八方美人のモリオがいるってのもあんだろう。
こういう才能もあるもんだ。
「お! シープランド兄妹と、のんべえ助祭が来たぞ?」
「私は酒はミードくらいですよ?」
「こんばんはーっ! お兄ちゃん、いいとこだねここっ」
「お、おう······」
「シープランド兄、呑む前からぐでんぐでんじゃない?」
「シープランド君! どしたぁ?」
「え〜と」
なんも、言えねぇ······
「石、拾い過ぎた」
「「「ぶははっっ!!!」」」
一応事情知ってる妹以外爆笑だよ。
なんだかなぁ~。取り敢えず、この後めちゃくちゃ呑んだわ。




