03
本日は校外学習三日目、自由行動の日であります!
「沖さん。今日は忙しいから、相手してられないよ!」
「大丈夫、セルフ放置プレイを楽しむからね」
「よし!!」
「(よしじゃねえよ馬鹿)」
そんなこんなでタクシーに乗り込み、いざ!!
それぞれ行きたい場所をピックアップし、効率のいい周り方を調べた結果。まず私達は、軽井沢に向かった。
おしゃべりしながら、流れる景色を楽しむ。
………今頃楓達はどこかなー…。なんか、「牧場行くんだー!」ってすうちゃんと盛り上がってたけど。
いいもんね。いつか大人になったら、リベンジ長野旅行するもんね!
歴史ある建物を見学して、散策して。ショッピングして、美味しいもの食べて。
またドライブを楽しんで…時間はあっという間に過ぎる。
「お土産何買おうかな。お父様とお母様、神戸さん…」
……楓に、何かあげたいな。うーん…
悩んで悩んで、ハンカチにしました。うふふ…お揃いで自分のも買っちゃお〜♪
ゴールに到着したのは集合時間の三十分前…生徒がちらほら集まってるな。
タクシーを降りて、運転手さんにお礼を言い。この辺をブラブラしてようと思ったら。
「あ、珠々からメッセージ。もうすぐ着くって。俺らは、今着いた…待ってるぞ……っと」
おお、ナイスタイミング。数分後、すうちゃん達を乗せたタクシーも到着した。
楓班はすうちゃん、庵くん、弓川かのんちゃんだ。
なんとなーく、男女に分かれて雑談していたら。楓が、私に控えめに話し掛けてきた…?
「あの…一華。これ受け取ってくれ」
「え……」
ドキン…♡楓は人差し指で鼻の下を擦るという、教科書に載せたい照れ隠しを披露しながら、小さい紙袋を差し出す。
プレゼントかしら…?一華ドキドキ。笑顔でお礼を言って、袋を開けると。
チャリ……
「………………」
これは。土産物売場でよく見る…
剣に龍が巻きついたキーホルダー…だ…
牧場…なんも関係無い…
それが姿を現した瞬間、私と楓以外の六人が勢いよく顔を逸らした。
…いや!これは楓からの、心のこもったプレゼント!!
「ありがとう楓!大事にするね!」
「…!えへへ、実は俺とお揃いなんだ!!」
なんでだよ!!!楓はポケットから、剣に龍が巻き以下略を取り出した!
お揃いなんて、嬉しい場面なはずなのに…!この、ぬうぅーーーっ!!!
「わ、わあ…嬉しいわ~…!」
「そっかー!よかった!!」
とりあえず。腹抱えてうずくまる男子三人は、後で叩く。
すうちゃんがこっそり私に近寄り、「スズと弓川さんは止めたんだよ~」と耳打ち。うふ……もうちょっと強く止めて欲しかったかも!
「(まあいいか…)私からも、はい」
「えっ?」
なんか気が抜けちゃって、自然に渡せたぞ。私もお揃いなんだよ~と、自分のハンカチを取り出してみせる。
が…反応が無い。不思議に思い、すっかり背が伸びた楓の顔を見上げると。
「………おそろい…」
顔を真っ赤にして。ハンカチを握り締めて…ぽけっと口を開けていた。
………かわいいっ!!!何そのリアクション、可愛い!!!もうっ、私のこと大好きかー!!?
ああ…なんだか急に、剣に龍以下略が素敵な逸品に見えてきた。楓が、私が喜ぶと思って選んでくれたのよね…スクバに付けちゃお♡
幸せな時間を噛み締めながら、私達は集合場所へ移動した。
*
本日の日程も全て終了し、同室の栞ちゃんと遊びに来たすうちゃんと、まったり過ごす。
お菓子食べてぼーっとしてたら、スマホの通知音が鳴った。しかも全員同時に…メッセージか?
確認すると、沖さんから?えーと…
[僕のSNS見てみて~笑]
ですって。三人顔を見合わせて、私が代表してアプリを開くと…えっ。
なにこれ!?カラオケの投稿が、バズっとる!?
彼は投稿する際、マネージャーさんが内容を確認してからになっていて。これは今朝アップしたみたい…コメントは…
《1人犯人いるwww》
《フランス人形が読経してるみたい》
《この茶髪の男の子、めっちゃ上手くないですか?》
《笑い声で半分聞こえませんw》
《「すげえ音痴ですね」ってオブラートに包む場合なんて言えばいい?》
《混ざりたい!!!!!!》
《マイク持った拓馬様、麗しい(歌声から目を逸らしながら》
《さすが佐伯拓馬、お友達のレベル高》
《ヘwwwタwwwクwwwソwwwww》
などなど。
その時ちょうど、ユキちからグループチャットにメッセージが届いた。
[マジで目線入れたのか拓馬コラ(♯`Д´)/
帰ってきたら覚えてろハゲ(っ`Д´)っ]
うは、ユキち怒ってる~。その後も次々と。
優[俺に対するコメント少なくない?撮り直そうぜ]
楓[これ楽しかったな!今度は女子も一緒に行こう]
千[(※照れてるスタンプ)]
幸[返事しろコラヽ(`Д´#)ノ]
聖[これが珠々の言ってたやつ?幸久、めっちゃキレてるじゃんw
次は俺も誘って~]
幸[もう怒ってないよ~:;(∩´﹏`∩);:
拓馬、帰ってきたら話し合いしよ?]
拓[話し合いには聖一郎先輩にも同席してもらいます]
聖[俺?いーよ!]
あはははっ!女子三人は高みの見物、スタンプ送っとこ。
今頃沖さんの個人チャットには、ユキちから怒涛のメッセージが送られていることだろう。
***
翌朝…早起きしすぎた。まだ五時半…
栞ちゃんもすでに起きており、メイクを始めている。
私も身支度を軽く済ませ、靴を履く。
「あれ一華、どっか行くん?」
「ちょっと散歩にねー」
立派なホテルは歩くだけで楽しい。きっと前世では、こんなグレードのホテルにゃ泊まったことないだろうな。
……ってアレ?向こう側から歩いてくるのは…優深ちゃん?
「おはよう、早いね?」
「おはよう、そっちこそ」
自然と合流し、歩き始めるが…
「………相手が楓だったら、ドッキドキ☆早朝イベントでも始まったのに…」
「俺だって珠々とエンカウントしたかったわ」
さいですか。
まあ…こんなやり取りが出来るのも、優深ちゃんだけなんだがな。
自販機の近くを通ったら…ボソボソと話し声が聞こえて来る?
どこだろう…?二人でキョロキョロと見渡すと…
「……はい、はい。分かってます…お母さん。
でも……はい。はい……」
自販機の陰に隠れてるあの後ろ姿は…庵くん。通話を切り、ふうっと息を吐いている。
「……うわっ!?」
「「ぐっもーに〜ん」」
隠れる暇がなかった。
私達何も聞いてないよー?爽やかな朝には爽やかな挨拶、爽やかに立ち去る…が。
「……………」
庵くんの様子がおかしい。
何か……諦めたように、目に光が無い。
「……なあ千那。今の電話、お母さんか?」
「ん…うん」
「そうか」
「「「……………」」」
気まずい。さ…部屋に戻りますか!
三人で来た道を戻ろうとしたら、庵くんが周囲を警戒しながら口を開いた。
「あのさ。大橋は……納夢さんと付き合ってる、のか?」
「「え」」
なぜそのようなことをおっしゃるのですか。
もしや彼は……優深ちゃんのことを!?運命は変えられないのか!?
けど…どうにもそういった雰囲気じゃなさそう。やや俯いて、優深ちゃんの目を見ようとしない。
「おう。まあ、高校に上がる前にな」
「そ、そっか。悪い、忘れてくれ」
それ以降は無言で、並んで歩く。
エレベーターに乗り…私のほうが先に降りる。
また後でね~と挨拶していたら、優深ちゃんがこっそり私に対して親指を立ててみせていた。
よし…後は任せた優深ちゃん!




