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当て馬女子の受難の日々  作者: 雨野
高校編
24/25

03


 本日は校外学習三日目、自由行動の日であります!


「沖さん。今日は忙しいから、相手してられないよ!」

「大丈夫、セルフ放置プレイを楽しむからね」

「よし!!」

「(よしじゃねえよ馬鹿)」


 そんなこんなでタクシーに乗り込み、いざ!!



 それぞれ行きたい場所をピックアップし、効率のいい周り方を調べた結果。まず私達は、軽井沢に向かった。

 おしゃべりしながら、流れる景色を楽しむ。


 ………今頃楓達はどこかなー…。なんか、「牧場行くんだー!」ってすうちゃんと盛り上がってたけど。


 いいもんね。いつか大人になったら、リベンジ長野旅行するもんね!



 歴史ある建物を見学して、散策して。ショッピングして、美味しいもの食べて。

 またドライブを楽しんで…時間はあっという間に過ぎる。



「お土産何買おうかな。お父様とお母様、神戸さん…」


 ……楓に、何かあげたいな。うーん…

 悩んで悩んで、ハンカチにしました。うふふ…お揃いで自分のも買っちゃお〜♪



 ゴールに到着したのは集合時間の三十分前…生徒がちらほら集まってるな。


 タクシーを降りて、運転手さんにお礼を言い。この辺をブラブラしてようと思ったら。



「あ、珠々からメッセージ。もうすぐ着くって。俺らは、今着いた…待ってるぞ……っと」


 おお、ナイスタイミング。数分後、すうちゃん達を乗せたタクシーも到着した。

 楓班はすうちゃん、庵くん、弓川かのんちゃんだ。



 なんとなーく、男女に分かれて雑談していたら。楓が、私に控えめに話し掛けてきた…?


「あの…一華。これ受け取ってくれ」

「え……」


 ドキン…♡楓は人差し指で鼻の下を擦るという、教科書に載せたい照れ隠しを披露しながら、小さい紙袋を差し出す。

 プレゼントかしら…?一華ドキドキ。笑顔でお礼を言って、袋を開けると。



 チャリ……


「………………」



 これは。土産物売場でよく見る…


 剣に龍が巻きついたキーホルダー…だ…

 牧場…なんも関係無い…


 それが姿を現した瞬間、私と楓以外の六人が勢いよく顔を逸らした。



 …いや!これは楓からの、心のこもったプレゼント!!



「ありがとう楓!大事にするね!」

「…!えへへ、実は俺とお揃いなんだ!!」


 なんでだよ!!!楓はポケットから、剣に龍が巻き以下略を取り出した!

 お揃いなんて、嬉しい場面なはずなのに…!この、ぬうぅーーーっ!!!


「わ、わあ…嬉しいわ~…!」

「そっかー!よかった!!」



 とりあえず。腹抱えてうずくまる男子三人は、後で叩く。

 すうちゃんがこっそり私に近寄り、「スズと弓川さんは止めたんだよ~」と耳打ち。うふ……もうちょっと強く止めて欲しかったかも!



「(まあいいか…)私からも、はい」

「えっ?」


 なんか気が抜けちゃって、自然に渡せたぞ。私もお揃いなんだよ~と、自分のハンカチを取り出してみせる。


 が…反応が無い。不思議に思い、すっかり背が伸びた楓の顔を見上げると。




「………おそろい…」



 顔を真っ赤にして。ハンカチを握り締めて…ぽけっと口を開けていた。





 ………かわいいっ!!!何そのリアクション、可愛い!!!もうっ、私のこと大好きかー!!?


 ああ…なんだか急に、剣に龍以下略が素敵な逸品に見えてきた。楓が、私が喜ぶと思って選んでくれたのよね…スクバに付けちゃお♡



 幸せな時間を噛み締めながら、私達は集合場所へ移動した。




 *




 本日の日程も全て終了し、同室の栞ちゃんと遊びに来たすうちゃんと、まったり過ごす。



 お菓子食べてぼーっとしてたら、スマホの通知音が鳴った。しかも全員同時に…メッセージか?

 確認すると、沖さんから?えーと…



[僕のSNS見てみて~笑]


 ですって。三人顔を見合わせて、私が代表してアプリを開くと…えっ。



 なにこれ!?カラオケの投稿が、バズっとる!?

 彼は投稿する際、マネージャーさんが内容を確認してからになっていて。これは今朝アップしたみたい…コメントは…



《1人犯人いるwww》

《フランス人形が読経してるみたい》

《この茶髪の男の子、めっちゃ上手くないですか?》

《笑い声で半分聞こえませんw》

《「すげえ音痴ですね」ってオブラートに包む場合なんて言えばいい?》

《混ざりたい!!!!!!》

《マイク持った拓馬様、麗しい(歌声から目を逸らしながら》

《さすが佐伯拓馬、お友達のレベル高》

《ヘwwwタwwwクwwwソwwwww》



 などなど。

 その時ちょうど、ユキちからグループチャットにメッセージが届いた。



[マジで目線入れたのか拓馬コラ(♯`Д´)/

 帰ってきたら覚えてろハゲ(っ`Д´)っ]



 うは、ユキち怒ってる~。その後も次々と。


優[俺に対するコメント少なくない?撮り直そうぜ]

楓[これ楽しかったな!今度は女子も一緒に行こう]

千[(※照れてるスタンプ)]

幸[返事しろコラヽ(`Д´#)ノ]

聖[これが珠々の言ってたやつ?幸久、めっちゃキレてるじゃんw

  次は俺も誘って~]

幸[もう怒ってないよ~:;(∩´﹏`∩);:

  拓馬、帰ってきたら話し合いしよ?]

拓[話し合いには聖一郎先輩にも同席してもらいます]

聖[俺?いーよ!]



 あはははっ!女子三人は高みの見物、スタンプ送っとこ。

 今頃沖さんの個人チャットには、ユキちから怒涛のメッセージが送られていることだろう。




 ***




 翌朝…早起きしすぎた。まだ五時半…

 栞ちゃんもすでに起きており、メイクを始めている。


 私も身支度を軽く済ませ、靴を履く。


「あれ一華、どっか行くん?」

「ちょっと散歩にねー」



 立派なホテルは歩くだけで楽しい。きっと前世では、こんなグレードのホテルにゃ泊まったことないだろうな。

 ……ってアレ?向こう側から歩いてくるのは…優深ちゃん?


「おはよう、早いね?」

「おはよう、そっちこそ」


 自然と合流し、歩き始めるが…



「………相手が楓だったら、ドッキドキ☆早朝イベントでも始まったのに…」

「俺だって珠々とエンカウントしたかったわ」


 さいですか。

 まあ…こんなやり取りが出来るのも、優深ちゃんだけなんだがな。



 自販機の近くを通ったら…ボソボソと話し声が聞こえて来る?

 どこだろう…?二人でキョロキョロと見渡すと…



「……はい、はい。分かってます…お母さん。

 でも……はい。はい……」


 自販機の陰に隠れてるあの後ろ姿は…庵くん。通話を切り、ふうっと息を吐いている。



「……うわっ!?」

「「ぐっもーに〜ん」」


 隠れる暇がなかった。

 私達何も聞いてないよー?爽やかな朝には爽やかな挨拶、爽やかに立ち去る…が。



「……………」



 庵くんの様子がおかしい。

 何か……諦めたように、目に光が無い。



「……なあ千那。今の電話、お母さんか?」

「ん…うん」

「そうか」

「「「……………」」」



 気まずい。さ…部屋に戻りますか!


 三人で来た道を戻ろうとしたら、庵くんが周囲を警戒しながら口を開いた。



「あのさ。大橋は……納夢さんと付き合ってる、のか?」

「「え」」


 なぜそのようなことをおっしゃるのですか。

 もしや彼は……優深ちゃんのことを!?運命は変えられないのか!?


 けど…どうにもそういった雰囲気じゃなさそう。やや俯いて、優深ちゃんの目を見ようとしない。



「おう。まあ、高校に上がる前にな」

「そ、そっか。悪い、忘れてくれ」



 それ以降は無言で、並んで歩く。

 エレベーターに乗り…私のほうが先に降りる。


 また後でね~と挨拶していたら、優深ちゃんがこっそり私に対して親指を立ててみせていた。



 よし…後は任せた優深ちゃん!



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