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当て馬女子の受難の日々  作者: 雨野
高校編
23/25

一 



「御伽戦隊 メルヘンセーブーンー!!

 行け行け 世界の平和を 守るため〜」



 うーん。楓がこれ歌ってると…なんか姉さんの結婚式思い出すなぁ。

 今日は拓馬の練習に付き合うっていう名目の集まりだったが。肝心の拓馬は…


「あぁえーないーひぃーびぃーがー わたっしーのっ こっこぉろーをー こがすーぅ

 なん、なっ、なんどぉもー あなたーからのー メッセージィーをぉ なーがめーてーーーっしまぁうー」

「「あはははははっ!!!」」


 バラードのはずが笑いが止まんねえ!!音外しまくり・テンポズレまくり・こぶしヤバい!

 俺が動画、ユキ先輩が写真を撮りながら爆笑。いかん、これじゃ拓馬の歌声聞こえなくなりそう。

 しかし歌ってる姿()()は様になってるな!



「……ふう、全くもう!!

 確認するから後で送って。みんな顔出しオッケー?」

「ユキはダメー」

「じゃあ目線入れとくよ」

「犯人かよ!!」

「俺みたいな美少年が写り込んでたら、拓馬のファン奪っちゃわない?」

「優深のその自信、心底腹立つけど嫌いじゃないよ。じゃあ幸久先輩以外は全員オッケーね」


 そりゃどーも。

 拓馬は一華がいないとマトモなもんで、物足りなく感じてしまうな…いかんいかん。


 俺の歌声は可もなく不可もなく。ユキ先輩も同じ。楓はまあまあ上手い、庵は…



「来たのはいいけどオレ…あんま流行りの曲とか知らないんだ」


 と、先程から歌いもせず電子パネルをずっといじってる。



 今回は庵と近付くため誘ったんだが。正直、来てくれるとは思わなかった。

 俺だったら仲良しグループに混じるとか絶対無理だし…。なので、連れて来た責任はきちんと果たすさ。


 庵の横に座り、暇にならないよう積極的に話し掛ける。


「楓みたいに昔の曲でもいいじゃん?」

「うーん……あっ、これなら」


 どれ…俺らが小三くらいの時にやってたアニメの主題歌だ。いいじゃん、俺もよく見てたなー。



「真っ直ぐな道を駆け足で 到着したのは古びたバス停 それが私達の秘密の合図♪」

「「うまっ!!?」」


 思わず拓馬と同時に叫んだ。拓馬よりこっち撮っとこう。


 歌い終わると、庵は照れくさそうにマイクを置いた。室内は拍手喝采、いい感じに盛り上がってきました。


 これで全員歌ったな。最初は緊張気味だった庵も、だんだん肩の力が抜けたように見える。



「千那ー。次これ歌ってくれ」

「うーん…?これはサビしか知らないんだけど」

「じゃあそれ以外は俺が歌う!」


 楓はすぐに誰でも名前呼びをする。

 俺も倣って…千那と呼んでみた。特に嫌そうでもないな、よし。まずはクラスメイトから友達にならないと…




 そんなこんなで延長しつつ、三時間楽しんだ。


「じゃあ最後、全員でメルヘンセブン歌おうぜ!!拓馬、音ずれるなよ!」

「……楓って皮肉で言ってないから、逆に突き刺さるね」

「?」


 うくく…笑いを堪える俺、ユキ先輩、千那。

 拓馬が外しながらも五人で歌い切った。あー面白かった。じゃ帰り支度を…



「なあ千那!!お前メルヘンセブン好きか!?」


 キィーーー…ン…


 楓の声に、奴以外全員突っ伏した。

 う、うるせえ!!マイク持ったまま叫ぶな!!

 ヨロヨロと立ち上がった千那が「昔見てたけど…」と律儀に返事をしたら。


「やったー!じゃあお前、今日からメルヘングリーンな!今度うち来いよ!」

「へ?え?なんの話?」


 え。楓以外、全員ポカン。




 楓は東雲家の一人息子ということもあり…学校でも寄ってくる者は多い。俺らも似たようなことはあるけど、楓はより顕著だった。

 それは彼の人懐っこい、大らかな性格によるもの。簡単に親しくなり、付け入る隙があると思われてのことだが…


 実は楓。たとえクラスメイトでも、いつものメンバー以外とは連絡先すら交換していない。ああ見えて、親しくなる相手は選んでいるらしい。


 その為、長年グリーンの座は空いていた。最近だと山室さんと友達になったんだが…

「栞子は女の子だからなー。参謀役のミス・クロアにしよう」と勝手に任命していた。謎のこだわり…


 その楓が、すっかり千那を気に入ったようだ。ふむ…


 とりあえず写メって、一華に送っとこー。





 ***





 翌日、千那は先に来ていた。

 おはよー、昨日楽しかったなー、と一通り挨拶する。そして……そこから進展ゼロ!!





「情けないな優深ちゃん」

「やかましい」


 はあ…放課後に、図書室で一華と顔を突き合わせる。更に…



「ハァ……ハア……あふン…」

「……なんで拓馬は転がってんの?」

「……………こうしておくと、静かにしてくれるのよ…」


 拓馬は一華の椅子の下に潜り込み、背中をぐりぐり踏まれている(上履きは脱いでる)。

 さっきまでヨダレを垂らさんばかりの表情で、踏んでください一華様!!とか騒いでたからな…


 それと、もう一人。



「ねえ。そいつ、さっきから何やってんの…?」

「山室さん。拓馬は一華限定ドMだから、存在を無視してくれ」

「………ヤベェ〜」


 山室さんも入れて、四人で調べ物。何かというと…

 我々は来月、四泊五日の校外学習で長野へ行くのだ。……校外学習ってそんなだっけ?


 それで、班ごとに自由行動の時間がある。この四人はそのメンバーという訳だ。

 楓は一華と離れて泣きそうになっていたが…俺だって珠々と一緒がよかったわい。




 そういや、珠々に告白されて…もう九年経つのか。

 あん時は本当に、親戚の子くらいな認識だったけど。今はもう…離れることなんて想像もできない程に、惚れ込んでしまった。



 だから、俺から正式に告白したいと思って。

 去年のクリスマスに、俺んちでパーティーをしたんだが…



『(パーティーが終わる前に、珠々と二人きりに…)』

『ねえ一華様、ロウソクって卑猥だと思わない?

 あ、SM的な意味で言ってる訳じゃないよ?そりゃ確かにポピュラーなプレイではあるけどね。

 僕が言いたいのは、このロウソクを僕のア』

『ちょっと優深ちゃん!!!ロープ無い!!?』



 その後拓馬は、亀甲縛りにされてツリーのオーナメントに追加されていた。



 ……そうだった。ムードぶち壊しだったから、クリスマスは諦めたんだった。




 回想やり直し。

 そう…あれは高校入学前の短い春休み。


 珠々が「篠宮学園受かったよー!」と電話で元気いっぱいに報告してくれて。

 その時俺は無意識に、「俺とお付き合いしてくれませんか?」と言ってしまった。


 数秒間、互いに沈黙…そして。



『うん!!!よろしくお願いしますっ!!』



 と、鼓膜を突き破る勢いで返事してくれたんだ…







 そんなこんなで、今の俺は幸せの絶頂なのです。…足元でイケメンがハアハア言ってても、気にしないからな。


 拓馬の息遣いという最悪なBGMを背負いながら、話し合い続行。



「一日タクシーを貸し切って、好きなところ行っていいんだよね」

「ウチ軽井沢行きたい、歴史あるホテルあんじゃん?」

「ハァ、軽井沢なら僕は、ショッピングしたい…フゥ…」

「八ヶ岳ってけっこうイベント多いって。俺、原村とか行ってみたいな~」

「うーん。移動に時間が掛かるわね。ホテルは諏訪だし…そこからとなると…」


 本やスマホ、タブレットを使いながら情報収集。あーだこーだ話し合い、こういう時間も学生の醍醐味だな~。





 ***





 そして当日。五月だけど肌寒く、ブレザーの前をきちっと留める。

 班行動は三日目、それまでは珠々と一緒に見て回った。俺すっげー青春してる…ふひっ。

 すると楓が「いいなー」といった目を向けている…早く一華に告白しろバカヤロウ。だってさぁ…



「優深ぢゃん…羨まじい…っ!私だってぇ…彼氏と腕組んで観光じだいぃ…!!」



 一華が。美少女にあるまじき修羅の顔で歯軋りをしているぞ。

 まあ結局、こうして友人同士で固まるんだよな。強引に千那も仲間入り~。



 俺は楓の考えも、一華の想いも知っている。だから「はよくっ付け」とも思うが…

 もうしばらくは、じれったい二人をニヤニヤ眺めていたい。今しか味わえない時間だもんな。




 流石は金持ち学園、ホテルも最高級。俺は拓馬と同室で、寝る前にラウンジで集まる。

 夕飯も温泉もたっぷり堪能し、他のみんなを待つが…


 修学旅行然り…泊まりと言ったら、パジャマは学校ジャージだろ!?なんで男子も女子もどいつもこいつも高級パジャマ着てんだ!!ここはランウェイか!!!

 俺だけジャージで目立つ!と思ったら、一華もジャージだった。これはもう、笑うしかない。


 そこに…


「あー、のぼせた…」


 遅れて千那が来た。

 なんと…和服姿で。なんとなく、みんなで呆然としてしまった。



「え、何みんな?……これ?

 オレは家じゃ和服が多いから…私服も洋服はあまり持ってなくて」


 とのこと。なんか…かっけえ。俺も「普段着は着物です」って言ってみたーい。



「えー、庵くんかっこいい〜」

「ねー!そうだ、今度みんな浴衣でお祭り行かない?」

「いいじゃん!近いとこだと七夕祭りとかー?ウチも仕立ててもらおっと」


 千那を囲み、きゃっきゃと盛り上がる女性陣。むー…俺も仕立てる!!



 時間ギリギリまでおしゃべりして、写真も撮って。それぞれの部屋に戻り…


 そんな風に、校外学習の夜は更ける。



「ねえ優深ちゃん。写メって死語だよ」

「だよなぁ…」

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