37.(季節感の無い)冬休み、突入!
<前回のあらすじを30文字以内で説明せよ。>
翼 「……フン。」
命子「もう、照れなくてもいいでしょー!」
綺都・美織「「なんだそのリア充感は。」」
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「上杉先輩。」
「ん?」
2学期の終わりを告げる行事、終業式を終えて帰るため昇降口で靴を履こうとしていたところ、後ろから声が聞こえた。
綺都が振り返ってみると、二人の女子生徒が立っていた。
上靴の色を確認してみると彼女は下級生だった。
「…どうしたの?」
「あ、えーっと…あのー……」
背の低い方の女子生徒は視線を右往左往させながら言葉を紡いでいる。
何事だろうか、と綺都は首を傾げて彼女の言葉を待った。
すると焦れったかったのだろうかそんな彼女の様子を見ていた片方の短髪の女子生徒が「代わりに言うから」と言って彼女を遮って口を開いた。
「上杉先輩と神崎先輩が付き合ってるって噂、本当ですか?」
短髪の女子生徒の言葉に綺都は目を丸くした。
近くにいた同級生達も彼女の発言が聞こえていたのだろう、好奇的な眼差しで綺都を見ていた。
綺都は苦笑いしながら答えた。
「それはただの噂だよ。俺たちは付き合ってない。」
「なら、何で最近神崎先輩と親しげなんですか? …前までは全然一緒に居なかったのに。」
眉間に刀傷の刻まれるような深い皺を寄せながら女子生徒は横暴に質問し続ける。
喧嘩腰の感じ取れる態度に流石の綺都もムッとした。
「…それは君には関係ないことじゃないか。」
「そうですね。なら答えなくていいです。」
「ていうか君は俺に用事ないんでしょ? 俺に用事あるのはそっちの子じゃないの?」
そう言ってチラッと隣にいた気弱そうな女子生徒に目を向けると彼女はびくりと肩を震わせた。
短髪の女子生徒との会話で不機嫌になったせいだろうか。
綺都は「ごめん」と彼女に一瞥した。
「俺は神崎とは付き合ってないよ。…ちょっと共通の趣味を見つけて最近親友になったんだ。」
「しん、ゆうですか……。」
「うん。だから付き合う根拠が無い。」
「そうですか……。」
うつむいているが彼女の表情が少しばかり明るくなったのがわかった。
「話はそれだけ? 友達待たせてるんだ。」
「あ、すいません…えーっと……それだけです……。」
「そっか。」
「気を付けてね。」と年下を配慮した言葉を残して綺都は昇降口を出ていこうとした。が。
「あの、ちょっと待ってください。」
短髪の女子生徒が口を開いた。
次はなんだと言わんばかりに不満そうに眉間に皺を寄せながら綺都は振り返った。
まず視界に入ったのは、自分を鋭く睨み付けている短髪の女子生徒だった。
明らかに自分に敵意を剥き出しにしている彼女の姿を見て綺都も皮肉気に氷のような冷たい視線を向けた。
女子生徒が忌々しそうに口を開いた。
「上杉先輩が鈍いって噂、本当なんですね。今明らかにこの子何か言いたげだったじゃないですか。」
「…俺も別の話があるって察したけど、その子が自分の意思で言わないと判断したじゃないか。」
「……。」
「それに、君も君だよ。言いたいことがあるなら友達を頼りにせずに自分で言うといい。」
そう指摘すると背の低い女子生徒は目頭を赤くさせてグッと歯を食い縛った。
しばらくするとその小さい弱々しい口を開いて震えた声で彼女は話し始めた。
「その…もし冬休み予定がない日があるなら…」
「ちょっと上杉! 遅すぎーーー!!!」
「!」
電流が流れているかのような重苦しい空気を突き破ったのは、綺都の待たせている『友達』である美織だった。
彼女はネックウォーマーを整えながら下級生のふたりを見ると目を丸くさせ綺都の方を見た。
「上杉お前……罪な男だな。年下二人いっぺんに手を出すなんて……!! ワロタw」
「違うよ初対面だよ。」
「は? 初対面って…あー、もしかするともしかして。」
隣の背の低い女子生徒を見て嫌らしい笑みを浮かべた美織はそのまま昇降口の扉を手に掛けた。
「頑張れよ少女! 君なら愛の天使を捕まえられる!」
「えっ!? ちょっ、違います違います!!」
「そんなに照れなくてもいいって。上杉は良い顔をしているからな。ディスイズ赤ちゃんガンメン。」
「もしかしてベイビーフェイスって言いたいのか? しかも『これ』呼ばわりて。」
「そうそれだ。ベイビーフェンス。」
「俺はいつベビーフェンスになったんだ殴るぞ。」
「おっと殴られるのは御免だぜ。スタコラサッサー」
「あっ! 待ってください!!」
昇降口の扉を手に掛けて外に出ようとした美織を女子生徒は必死になって食い止めた。
ネックウォーマーを引っ張られた美織は「グッ」と苦しそうな呻き声を上げながら後ろへと後退した。
「ごめんなさい…上杉先輩にも用事はあるんですが、本当は神崎先輩の方にも用事があったんです。」
「ほほう、申してみよ。」
「良かったら…冬休み予定がない日、上杉先輩と神崎先輩と私でっ、どこか遊びに行きませんか!?」
真冬だというのに顔をゆでダコの様に真っ赤になりながら彼女は床に向かって叫んだ。
誰もいない校舎の中で甲高い声が木霊する。
美織は驚いているのか真顔で何度もまばたきをしながら自分の頭ひとつ分低い彼女を見下ろしている。
「…遊びいきたいの?」
「はい。」
「上杉と、私と、少女の3人で?」
「はい。」
女子生徒はうつむきながら静かに答える。
しばらくして美織は綺都の方に視線を送ると口パクで「いける?」とジェスチャーしてきた。
綺都は右手で親指をたてると彼女は大きく頷いた。
「いいよ、どーせ帰宅部で暇人だし。行こっか3人で。」
「……! 有難うございます!」
「いつにする? 大晦日辺りは店とかあんま空いてないから来週の24日とかはどうだい。あ、その日クリスマスイブか。」
「いえ、24日で大丈夫です……」
「そっか。なら11時に駅前ね。」
「はい! ……本当にありがとうございます。」
女子生徒は律儀に美織に会釈するとその場をあとにしてしまった。
それに連なって短髪の女子生徒もため息をつきながら彼女の走っていった方向に歩いていった。
身体を向ける矢先、彼女は綺都を睨み付けながら。
「…なんか感じ悪いなあの子……。」
「なんか恨み買うようなことしたんじゃね?」
「まさか、初対面だよ。」
「てか上杉には直接聞かなかったけど24日大丈夫だった? お姉さんとクリスマスデートとかする予定だった?」
「ああ、姉さんとは25日に出掛けると思うから大丈夫。」
「……ホントに兄弟でデートするとこっているんだね。」
「なんだよ別にいいだろ。」
「悪いなんて一言もいってないジャンww」
「……帰ろう、待たせてごめん。」
「せやな!」
鼻を赤くさせて無邪気に笑う彼女を見て思わず綺都は顔を綻ばせた。
冬休みにも彼女に会うことが出来ると考えると少しだけ嬉しくなって胸が暖かくなるのを感じた。




