31.西野○ナ聴け、そしたら解決するから。
<前回のあらすじを30文字以内で説明せよ。>
翼 「きっさまああああ言いたいことあるなら伝言せずに己の意思で伝えぬか!!」
綺都「ごめんごめん最近忙しかったから…ブフォッ!!」
翼 「何を人の顔見て笑ってるんだ!」
綺都「いやあの広瀬の昔の写真思い出して……」
翼「………………写真?」
綺都「…あっ。」
_______________________
「俺は、神崎に恋してるんでしょうか?」
終始、部屋のなかに沈黙が流れる。
あまりの沈黙に綺都はだらだらと嫌な汗をかいた。
「…わりぃ、わからねぇ。」
沈黙を破ったのは礼だった。
礼は困ったように頬をポリポリと掻きながらため息をついた。
「さお…俺の友達曰く、今まで俺は恋をしたことは無いらしい。だからどーいったのが恋の基準になるかわかんねぇ。わりぃ綺都、力になれなくて。」
「……そうですか。」
「美織と恋人になりたいとか思うか?」
「それは考えたこと無かったです。……でも、神崎と恋人同士になったら楽しいんじゃないかと思います。」
「微妙な解答だな。うーん…接吻したいとかは?」
「それも考えたこと無かったです。中学生にはまだ早い。」
「だよなぁ。……難しいな恋愛って。」
礼はそのままのけ反り天を仰いだ。
恋をしたことが無い者同士だとこれほどにも苦労するのか。
「広瀬さんは、神崎のことどう思っていますか?……えっと、その…好きなんですか?」
「ん? ああ好きだよ。」
「!!」
「ただし、人としてだ。」
「人として……。」
綺都はオウムのように無表情で礼の言葉を繰り返す。
「だから恋といわれたら違うと思う。」
「…どのような根拠で、恋じゃないと言い切れるのか教えてくれませんか。」
「まず、俺たち広瀬家と神崎家が昔からの付き合いっていうのはわかるな。つまりは幼なじみだ。」
「はい。」
「俺と翼と美織、そして姉の紗織はオムツ穿いてた頃から今までずっと一緒にいる。家も近所だしよく寝泊まりしている。」
「現在進行形ですね。」
「たとえ血が繋がっていなくても365日ずっと一緒にいると家族のように思えてくるという人間の錯覚はわかるな?」
「わかります。」
「うん。だから妹みたいな存在の美織を好きになることはまずあり得ない。紗織も同様にだ。」
「ですが小説やドラマなどでは男女の幼なじみ同士が恋に発展するものが多いと同級生に聞いたことがあります。」
「よそはよそ、うちはうちだ。俺にはまだ美織たちを兄弟としてしか見ていない明確な根拠があと一つあるんだ。」
「そ、その根拠とは?」
ごくりと生唾を呑み込み綺都はメモ用紙とペンをかまえた。
礼は渋い顔で人差し指をたてて言った。
「全裸を見てもどうも思わない。」
「え、み…見たんですっ、か?」
「意図的には見ていないが。中3の時神崎家の風呂を借りたら風呂上がりの紗織と鉢合わせになったことがあったんだ。その時なんとも思わなかったんだ。普通こーいう場合って慌てたり恥ずかしがったりするだろ? 俺はなんともなかった。まあ、その時紗織にはビンタされたけどな。」
「それは紗織さんが正しいと思います。」
「本題はここからだ。二週間くらい前に漫画借りるために美織の部屋に行ったんだ。」
「へ、へえ…」
今なんとなく、綺都は胸が痛くなるのを感じた。
「ノックしてどうぞって言われたからドア開けたんだ。そしたら美織の奴、着替え中でパンツ一丁だったんだ。」
「う、うわぁ……。」
なんでだろう。
彼女の普段の言動からすごく想像が出来る。
「そして俺はパンツ一丁の姿見てもどうも思わなかったという話だ。美織もなんも動じていなかった。俺は美織に発情しねぇし美織も俺に発情しねぇ。な? わかったろ?」
「とりあえず貴方と神崎がお互い無関心すぎるということだけはわかりました。」
「だから、俺と美織はお互い恋してねぇ。」
「それは伝わりました。」
そういえばそんな話をしていたな、と綺都はゴミと化したメモ用紙を見てため息をついた。
もしかするともしかして彼は俗に言う天然という種族なのかもしれない。
「ああでも、翼はわかんねぇな。三毛猫のオスが生まれる確率並に美織のことが好きな可能性がある。」
「30000分の1の確率じゃないですか。ほぼ無いですね。」
「滅茶苦茶ねぇな。」
残り少しの麦茶が入ったグラスを持って綺都はぐいいいっと飲み干した。
とりあえず礼が美織に恋心を抱いてないということはわかったが、美織がまだ明確になっていない。
それに翼も三毛猫のオスが生まれる確率で美織のことを好きかもしれない。
そして自分も彼女に対して抱いている感情がなんなのかわかっていない。
苦しげに頭を抱える綺都を見た礼は彼の頭に優しく自分の手を置いた。
「とりあえず謝ればいい。すぐに許してくれる。アイツもきっと早くお前と話したいと思ってるよ。」
「……でも、」
「美織、お前の話するときいつも自分のことのように嬉しそうに話してるぞ。大丈夫、お前は嫌われてない。」
「広瀬さん……」
「あいつが好きなのはフルーツサンドだ。謝るのと一緒に持っていけばいいと思うよ。」
綺都は少しだけ自分の顔が熱くなるのを感じた。
今さらだけど、あの時美織が彼を頼った理由がなんとなくわかった気がした。
「……有難うございます。」
綺都は笑いかけた。
あの時彼女が礼に向けていた笑顔と全く一緒の笑顔で、彼に笑いかけた。




