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29.倍返しだ!!

<前回のあらすじを30文字以内で説明せよ。>


綺都「ボクっ娘。」


翼 「ボクっ娘。」


命子「うあああああやめてぇええ!!」

___________________________


翼が綺都を無理矢理追い出しておおよそ3分。

科学室内は気まずい雰囲気で包まれていた。

命子は隣で試験管の用意をしている翼を横目で見た。



(…さっきの話、聞いてたんだよ、ね?)



長い時間見すぎたのか命子の視線に気がついた翼は切れ長の瞳で彼女を見返した。

目があってドキリとした命子は反射的に目をそらした。



「命子。」



彼の冷たい凛とした声音が科学室に静かに響いた。




「あの時俺は、入江と話していたからお前たちの話はほとんど聞いていない。」



「えっ、」



「えっ、ではないぞ。だから聴いていなかったんだ。」



「……別に聴かれても良いんだよ?」



「ん? そうなのか、ならば聞いてた。ガッツリ聞いてた。」



「開き直りすぎでしょ!!」



命子は呆れてため息をつきながら右側の長い前髪を整えた。

その時、変に違和感を覚えた。

いつもの綿布のような手触りが感じられない。



「…っ!!」



咄嗟に命子は右目を隠してしゃがみこんだ。

(最悪だ!!見られてた見られてた見られてた!!!)



「…何をしているんだ貴様。」



彼女の行動に驚いた翼は試験管を磨きながら命子を見下ろした。

悠長な様子の彼に対して命子はキッ、と左目で睨み付ける。




「なんで、なんで教えてくれなかったの!!翼!」



「別に…気づかない方が悪いのではないか。」



「そうだけど…っ、酷いよ……!!」



「ほら。」



翼は自分のすぐ近くに落ちていた命子の眼帯を拾い上げて埃を払って彼女に差し渡した。

すぐさま命子は奪い取るかのように受け取って眼帯をつけた。

そんな彼女の様子を見て翼はため息をついた。




「そんなに慌ててつけなくてもいいだろう。」



「だって…気持ち悪いじゃん。」



「気持ちが悪いだと? 何がだ、お前の転校の動機か?」



「ちがあああう! おめめがだよ!お、め、めっ!!」




ちぎる勢いで(というかちぎれた)せっかくつけた眼帯を再び外して命子は己の右目を指差した。

熱烈な命子とは対称的に冷静な翼は「ああ、そっち」と興味無さそうに一瞥した。



「この傷のせいで…転校してきたのもあるんだ……。」



「……その言葉は、美織を敵視しているとも見なすぞ。」



「ちがう! 美織ちゃんは悪くない! 悪いのはっ、……っ、皆…気持ち悪いとかゾンビとか………うっ」




堪えきれなくなった命子は再び蛇口から大量の水が出るかのように涙を流し始めた。

失明して何も見えないくせに、涙だけ出るこの目を命子はいまいましく感じた。

泣き崩れる命子を見て翼は大きくため息をついて頭をガシガシと乱暴に掻いて彼女の側に座った。




「貴様は本当に面倒くさい女だな。」




そう言って命子の小さな顔を片手で掴みあげて細長い指で右目の傷を優しくなぞった。

命子は抵抗して翼の手を払って顔を隠すがすぐに両手で顔を押さえつけられた。



「ちょっ……今すごいブサイ…っく、だから……っ」



「もとから不細工だろうが恥じらうな気持ちが悪い。」



「ぬ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!」



「…傷の深さからして裂傷と刺傷あたりか……こめかみ辺りに微妙に擦過傷も残っているな。」




冷静に傷の分析をしている翼を命子は片目で睨み付けた。




「許ざない…づばざぁ"……!!」



「ふん、恨みを買うのも悪くないな。」



「五世代…いや、六世代先まで呪ってやるぅぅう……」



「貴様も死んでいるぞ。」



「も"お"お"お"お"お"早ぐはなじでよっ!見ないでよっ! ボグっ、この傷だいっぎらいなんだがらっ!!」




そう言って命子は次こそ翼の腕の中から抜け出した。

まだ右目を見ている翼の視線を気持ちが悪く感じた命子は右目を手で覆って眼帯を拾った。




「それ、紐ちぎれてるぞ。」



「いいのっ! 結べば済むことなんだから。」




ちぎらて離ればなれになった紐を手際よく結んだ命子はそのまま鞄を手にして科学室を出ていく。




「今日はブサイクは帰ります。じゃあね翼、ブサイクでごめんね!!!ブサイクでっ!!」



「まて、」



「やだ。もう待たない。」



「そんなんだから貴様はブサイクなのだ。」




そう言うと翼は己の着ていた薄緑色のパーカーを脱ぎ命子の頭部に叩きつけ、驚いている彼女の顔を指差した。




「目が腫れて更に不細工になっている。フード付きだから隠すことが出来るぞ。この不細工。」



「……翼寒くないの? 学ラン着てないし、シャツ一丁はきついんじゃないの?」



「阿呆極寒に決まっておろうが。12月だぞ。」



「……私が着ていったら、翼困る?」



「困るわ。今日はダッフルコートも忘れたんだからな。だが貴様のその可哀想な顔面を晒して我が校の顔面偏差値を下げられる方が困るんだ。」



「じゃ、きてく……」



そう言って命子はモソモソと翼のパーカーを着る。

胸は少々きついが他の袖や裾は余る程度で問題なかった。

大きなフードを被って命子は「じゃあね。」と翼に手を振って科学室をあとにした。




「翼!」



「なんだ不細工。今頃感謝の言葉を述べても……」



「私、実はちゃんとフード付きの上着持ってるんだー! ありがと!!貸してくれて!!だから反省しろこのっ…バーーカッ!!」



そう言って命子は駆け足で廊下をあとにしていった。





「……あんの酪農女あああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

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