↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
18/53

Another-3

今後3日に一回投稿になりますご了承下さい。

 

「広瀬くん!」


「お、」




 昼休みの後半、自動販売機でお茶を買おうと広瀬礼(ひろせらい)が小銭を挿入口に入れようとしたら不意に背後から甲高いの声がした。

 最近よく呼ばれるなと思いながらその場で振り替えるとそこには自分よりも頭二つ分くらい小さい女子生徒が立っていた。

 礼は彼女の姿を見るなり眉間にシワを寄せた。

 スリッパが青色ということは同級生だろう。

 しかし念入りに化粧された彼女のその顔を見て礼は本当に同じ17歳なのだろうかと彼女を疑った。

 第二ボタンまで開けてあるシャツにアクセサリーやピン等キラキラしたものがついた学校指定のものではない派手なカーディガン。

 もう11月も終わりというのに寒いだろパンツ見えるぞというほど短いスカートからは血色の悪い脚が出ている。

 一言でいえば、最近よく友達が言ってるパリピというやつ、悪くいえばケバいギャルだ。

 校則違反いいところだ全く。(まあ自分も学ランの下に学校指定じゃないパーカー着ているが)


 彼女は恥ずかしそうに下を俯いて口をモゴモゴしている。

 そんな彼女に礼は呼び掛ける。




「俺は歯医者とかくわしくないぞ。」



「は?」




 彼女は礼の言葉を聞いて口をポカンと開ける。

 あれ?もしかして歯を痛めてるわけじゃないのか?

 ならなんだ?




「なんか用か?」




 礼がそう尋ねると彼女は何か言いたげに押し黙っている。

 正直寒いので早く教室に戻りたい礼は静かに女子生徒にバレない程度に貧乏ゆすりをして彼女の言葉を待つ。

 すると女子生徒はずっと閉じていた口を開いた。




「私と付き合って!!」



「あ、ごめん無理。」



「え、ちょ即答てなくない!?こんなに勇気だして言ったのに!!!」



「いや気持ちはありがたいけどよ。」



「ならなんで!?なんでふるの!!」




 そう言って女子生徒は礼の肩をガクガクと揺らす。

 ふる理由としてまずひとつは好きでもないのに付き合ったら相手と自分にとても失礼だから。

 二つめは化粧が濃い女性は苦手だから。

 三つめはこう自意識(プライド)が高く強引な女にろくなやつはいないと親友(翔琉)に教えられたから。

 これらを彼女に伝えたらおそらく彼女は悲しんでしまうだろう。

 だからといって彼女は引きそうにも引いてくれない。

 さてどうしたものかとガクガク揺さぶられながら礼が考えていると目の前の対の校舎から見たことのある人物が出てくるのが見えた。




「あ……」

 



 目の前の鬱陶しい女子生徒とは対称的に第一ボタンまでしめられたシャツに制服のリボンをつけ、その上からは学校指定の紺色のカーディガンを羽織っている。

 膝まである長めのスカートから伸びている脚は黒タイツで包まれていて如何にも冬の女子高生を連想させるような格好だ。

 そしてなにより化粧無しの天然物の整った顔。

 胸下まである長めの黒髪は今日は黒いヘアゴムで緩く横にひとつの三つ編みにされていた。

 一昨日屋上まで近所のおばあちゃんのパウンドケーキを届けに来てくれた女子生徒、上杉花透(うえすぎかすか)だ。

 図書室帰りだろう、彼女は文庫本片手にひとりで渡り廊下を歩いていた。

 だんだんこちらへ近づいてきてやっと礼の存在に気付く。

 礼と目が合うなり彼女は一瞬戸惑ったかのように目をそらそうとしたがこちらに笑いかけて小さく手を振った。

 いやいまそんなことしなくていいからこの状況をどうにかしてほしいんだが。




「上杉!」




 礼が向こうにいるカスカに聞こえるように名前を呼ぶと彼女は素直に礼の所へ駆け寄ってくる。


(犬みたいに忠実だなあいつ……。)




「広瀬くん…えと、こんにちは。」




 大した距離ではなかったが息をあげながら来たカスカは礼とそのすぐそばにいる女子生徒を見て双眼を大きくする。

 何か察したかのように彼女はそそくさと小さくしてその場へ退散しようとする。

 驚いた礼は逃がすかと藁にすがり付く思いで退散しようとするカスカの腕を勢いよく掴んだ。

 びくりと肩を震わせたカスカはで礼の方に顔を向け、自分の掴まれた腕と礼の顔を交互に見る。

 礼はマスクを顎まで下ろし、口パクで「たすけて」とわかるように大きく動かす。

 状況を察したカスカは弱々しくうなずいた。




「ちょっと…なにさっきから二人でこそこそしてるの。」



「悪いな…ギャル。」



「直球に言うなおい。」



「俺、実はこの人と10年前から契約結婚してるんだ。」




 うん。やはり俺には語彙力というものが皆無だ。

 礼は隣から冷たい視線を感じながらも真っ直ぐと女子生徒から目線をそらさない。




「なんていう漫画だよそれ、絶対ちげーっしょ。隣のかわいこちゃんモロ『はぁ!?』って顔してるし。」



「照れてるなこれは。」



「いや明らかに驚いてますけど。そんなん初めて聞きましたって顔してますけど。」



「そんなことねぇよ。なっ、上杉。」



「う、うん……。」




 そう言ってカスカは礼から目をそらす。

 どうやらここには自分の味方はいないようだ。

 女子生徒はこのchaosな状況に呆れを通り越して笑っている。かなりこの状況を楽しんでるように見える。




「ちなみに、上杉は強いぞ。上杉は普段こんなか弱そうな乙女だが触れた瞬間緊張で筋肉が膨張して世紀末覇者のような姿になりお前を200海里まで飛ばすだろう。そして海の藻屑となる。」



「上杉さん強いなwwww」



「……広瀬くん。」



「…そーいうわけで俺はお前と付き合えない。わりぃな。」



「……そうだな。そんな強い嫁さんに、アタシが敵うわけなかったぜ。へへっ……。」




 そう言って女子生徒は潔い足取りで教室へと戻って行ってしまった。

 礼とカスカは二人で彼女を見送った。

 今回の勝因はおそらく彼女が世紀末の某少年漫画を好いていたこと、カスカが途中参戦してくれたことだ。




「わりぃな上杉。助かった。」



「……広瀬くん。もう少しましな嘘は無かったの……。」



「わりぃ。俺、語彙力無いから……。」



「でも、あれって告白、だったんじゃないの?」



「…………あ。」



「あの人も帰って行っちゃったけど…告白だったん、だよね?」



「……告白、だったな。」



「……。」



「……。」



「教室、戻ろうか上杉。ありがとな。」



「あ、うん。力になれたなら……。」




 冷たい風を辺りながら礼は思った。

 やっぱこういうのは友達と行った方がろくなことに巻き込まれないな、と。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。