13.そうですね例えるなら素麺で焼きそばを作るようなものと一緒ですね
<前回のあらすじを30文字以内で説明せよ>
美織「お義父さん…お宅のアヅマさんをっ、僕にください!」
翼 「貴様にうちのアヅマはやらんっ!!」
美織「うへへへへ梓馬たん可愛いうへへへへへへへ」
翼 「などと上杉被告は供述しており……」
綺都「普通にやりなさい。」
美織・翼「アヅマがなかまにくわわった!」
綺都「YDK!!」
梓馬「OH!CHAOS!!」
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「ただいまー……」
「おかえり綺都。」
我が家の玄関を開けるとすぐさま姉の花透がパタパタとこちらへ迎えに来てくれた。
いつもの変わらない日常の光景に綺都は安心の一息をついた。
カスカは綺都の顔を見て驚いたかのように目を丸くした。
「ど、どーしたのその顔!?」
「あー、これはちょっと、ね。」
そう言って綺都は笑って誤魔化しながら先ほど翼に蹴られたこめかみ付近を撫でた。
もう大分時間も経過したためか触ってみるとこめかみはプックリと腫れていて熱を帯びている。
あまりの痛さに綺都は顔を歪めて素早く触っていた手を離した。その反応に即座に気がついたカスカは心配そうに綺都の腫れたこめかみにかかる長い横髪を耳にかけてあげる。
「…ちょっと顔を洗うのは無理そうだね。」
「…ん。」
「冷やそっか。」
ねっ、と自分に笑いかけるカスカを見て綺都は胸がキュゥとなった。(別に恋心を抱いているわけではないぞ)
もしもカスカが自分と全くの赤の他人だったら、きっと自分は彼女に恋心を抱いていたであろう。
すると不意に雄市の言葉が綺都の脳裏でよみがえった。
『綺都はこれからだよ。恋愛。』
人間は恋をすると毎日が楽しくなると何かの本で言っていたような気がする。
恋をしなくても別に生きていけるし、楽しいものは他に補えることが出来るし、何よりそんな相手がいない。
変なところで出てきた雄市の言葉に、綺都は理不尽に憎み深くため息をこぼした。
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「はい、氷袋。」
「ありがとう。」
「じゃ、お風呂入ってくるから。」
カスカが持ってきてくれた軽くタオルで包まれた氷袋を貰い、綺都はそれをこめかみに当てた。
やはり少々冷たいので神経に響いて痛い。
風呂から上がった綺都はリビングに腰かけその場ですぐにテレビのリモコンを手に取り、電源を着けた。
放送されていたのは、最近始まった恋愛もののドラマだった。
クラスの女子が最近始まった月8がおもしろいと騒いでいたがおそらくこのドラマだろう。
他に面白そうな番組が無かったので綺都は興味本位でチャンネルをそのままにしてドラマを見ることにした。
『最近どうなの?綾斗くんとは。』
『いや?普通だよー。なんで綾斗くんが出てくるの?』
今のシーンはおそらく友達同士だろう、二人の女性が喫茶店でコーヒー片手に話に華を咲かせている。
よりによって同じ名前かよ、と綺都は頬杖をつきながら心の中で呟く。
『だって最近実織、綾斗くんが綾斗くんがしか言わないから』
思わず綺都はボトッ、と氷袋を落とした。
文字は違うものの、いきなり親友と同じ名前が出てきたため一気に複雑な気持ちになる。
しかもその実織が好きな相手が綾斗というので更に何か複雑な心境に包まれる。
もしもこいつがこの場にいたら、自分をバカにしつつも優しく氷袋を拾ってくれるだろうなと思い苦笑いをする。
落とした氷袋を拾っているとテレビから二人の会話が耳に入る。
『人って恋すると、美味しいもの食べてたり綺麗な景色見たりしてたら「ああ、あの人はもしこの場にいたらこうしてるだろうな」って自然に考えたりするものなんだよ。常に一緒に居たいっていうのがその気持ちに出るんだよ。』
『え?』
「え?」
思わず綺都はテレビの中の女性を凝視した。
女性はコーヒーを飲みながら悠々と語り続ける。
『恋って、気付いたら好きになってるものだよ。そんな自分で恋してるなんてわかるわけないじゃん。その人の名前とかに反応したり、すぐに顔が思い浮かぶならもうそれは完っ全に恋心を抱いているね!だから実織はつまり、』
『そ、それってつまり、私……』
「……。」
なら、つまり自分は。
「神崎が、好き…?」
『綾斗くんが、好き…?』
「えええええええええあ"だぁっ!!!!」
『ええええええええええええええ!?』
綺都は大きく動揺してソファーから滑り落ちた。
打撲したこめかみを庇うために肘を思い切りぶつけてしまったのでかなり痛い。
ジンジンと痛む肘を優しく押さえながら起き上がり先ほどのドラマの中の女性の言葉を思い出す。
名前に反応する、いつどこでも思い浮かべる、顔をすぐに思い出せる、頭の中でいつでも存在している。
それをまとめて恋という。
「いやいやいやいやあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ない……」
「あ、綺都……?怖いよ?」
「はっ!姉さんいつの間に!?」
「今きたんだけど……顔真っ赤だよ大丈夫?」
カスカは綺都の持っていた氷袋で真っ赤に熱くなった彼の頬を冷やした。
綺都は俯いてされるがままになっている。
そんな小動物のような我が弟が愛らしくなったカスカは思わず綺都に抱きついた。
「わ、ちょっ、なになになに!?」
「可愛いなぁもう綺都はもう。どうしたの今日月8なんて見ちゃって。もしかして恋してるの?」
「はっ!?い、いや!してないしてない!」
「ええーなにその反応!!教えて!誰誰誰誰!!!」
「だからいないってば!恋してないってば!!てか離して!」
「やだ言うまで離さない!!!」
「ねぇぇーーーさぁぁーーん!!!」
もしも神崎美織に恋をしているとしたら
もしもあのバカに恋心を抱いているとしたら自分で自分に言ってあげたいことがある。
なんでよりによってアイツなんだよもっと他にいい人いただろうがあんな変人とどうやって恋すればいいんだよ!!




