第九十八話:やらかさなきゃ死なない
やらかさなきゃ死なない。
死ななきゃ学べないのが、冒険ってもんか。
ウリエルはセラフィーナを引っ張って左手の分かれ道に突っ込んだ。
この方向には道なんてない。
灌木が両側から押し寄せてきて、垂れ下がる蔓が絶えず顔に叩きつけ、鋭い枝が頬を掠めて飛んでいく。
足元の泥水が革靴に飛び散り、後ろのセラフィーナにもかかった。
ウリエルは空いている左手を上げて、必死に遮る棘のある蔓をかき分け、後ろの少女を引っ張って錯綜した樹根の間を跳躍して避けた。
セラフィーナはウリエルに手を引かれて必死に走りながらも、もう片方の手で肩の採集袋を庇わねばならなかった。ウリエルが身を挺して前方の藪を切り開いてくれているとはいえ、彼が払いのけた反動で勢いよく跳ね返ってくる枝や棘など、彼女自身で避けなければならない障害物も絶え間なく襲いかかってくる。
「ウリエルさん」
彼女の声は激しい走行で揺れている。
「あなたの逃走ルートが三匹目の面倒を引き寄せないことを願います」
ウリエルは振り返る暇もなく、ハードルのように地面の丸太を跳び越えた。
「後ろのあの二匹が追いついてこないように祈る方が先だろ!」
セラフィーナは目を伏せて、視線を二人がしっかり握り合っている手に落とした。
「まさか、手を繋ぎたくてわざとこの道を選んだんじゃないですよね」
彼女の声は、けたたましく鳴る木の葉の擦れる音をすり抜け、正確にウリエルの耳に届いた。
「は?」
ウリエルは激しく振り返って、目を見開いてその無表情な顔を見た。
ほんの一瞥しただけで、何かに衝突するのを恐れてすぐに前へ向き直った。
前を見ないで何かにぶつかるのが怖い。
否定の声は焦りで少しかすれた。
「今そんなこと言ってる場合か!」
背後から狂風が巻き起こり、大地を揺るがす轟音が響き渡った。
あの巨大な円頭虎が攻撃を仕掛けてきた。
まさに、典型的な猛虎の飛びかかりだ。
巨獣の利爪が二人の斜め後ろの大樹に激しく叩きつけられた。
碗ほどの太さの木が真ん中から二つに折れ、巨大な樹冠が轟然と倒壊して、地面が激しく震え、無数の折れた枝と葉が頭上から降り注いで、二人を埋めかけた。
舞い上がる土煙の中、円頭虎の巨大な体躯が折れた木の後ろから跨いで出てきて、足掌が幹を踏むと、木が耐えきれずギシギシと軋んだ。
その琥珀色の双眸が前方の二つの小さな点を捉えて、喉の奥から低い唸りが転がり出た。
ウリエルの背中の産毛が全部逆立った。
彼は大樹が倒壊する隙に乗じて、舞い上がる土煙越しに、前方の地形を正確に捉えた。
それは何年生きたか分からない太古の巨木だった。
幹は太すぎて十数人が手を繋いでも囲めず、灰褐色の樹皮が亀裂してブロック状の紋様になり、根元は腐朽と風化で、天然に真っ黒な巨大な樹洞が形成されていた。
あのサイズなら、円頭虎は絶対に入ってこれない。
「こっちだ!」
ウリエルは地面を強く蹴り上げ、セラフィーナを引っ張って泥濘の中で急カーブを滑った。
二人は前後して樹洞に飛び込んだ。
ほとんど転がりながら這うように。
樹洞内部の空間は意外に広く、外から見るよりずっと大きかった。
空気中には腐った木と苔が混ざった独特の匂いが漂っている。
二人は粗い樹壁に寄りかかって、大きく荒い息をついた。
セラフィーナは手を上げ、手の甲で頬についた泥水を拭った、採集袋を足元に置いて、数回息を整えた。
「観察力がいいですね」
彼女は平坦に一言褒めた。
「この樹洞に気づくなんて」
ウリエルは手の甲で額の汗を拭って、「当然だろ」と返そうとした——
「ただし、あの子猫が追いついてこなければ、という前提ですが」
だが、セラフィーナはすぐに話題を変えた。
「あと、この手の樹洞の中には、毒蛇とか他の穴居魔物がいるかもしれません」
ウリエルが汗を拭く手が宙で止まった。
「フラグ立てるなよ」
言い終わった瞬間、「ドン!」という轟音で、巨木全体が震えた。
木屑が洞の天井からパラパラ落ちてきて、ウリエルの肩に積もった。
彼は激しく頭を捻って洞口を見た——
巨大な猫科動物の顔面が洞口の外を塞いでいて、眼球が洞口から中を睨んでいる。
瞳孔は光量不足で真ん丸に開いている。
円頭虎は鼻を洞口に近づけて嗅ぎ、吐き出す熱気が濃厚な生臭さを帯びて洞内に流れ込んだ。
そして獲物が中に隠れているのを発見すると、低い咆哮を発して、あの太い前足を上げて、洞口に沿って激しくかき込んできた。
爪が適当に掻き回して、木屑があちこちに飛び散った。
爪はウリエルのつま先からまだ半メートル離れている。
届かない。
ウリエルは盲目に振り回される巨爪を睨み、また洞口の外に嵌って半歩も前進できない巨大な体躯を見た。
この怪物が絶対に入ってこられないと確認した後、彼の緊張した神経は瞬時に緩んだ。
「入れないだろ?」
彼は立ち上がって、両手を腰に当て、命拾いした安堵から来る、謎の強気さを帯びていた。
「このデブ猫! 頭がデカくて体が丸い! 入ってきて捕まえてみろよ!」
円頭虎の爪がまた中に掻き込んで、ウリエルがビクッとしたが、やはり届かない。
ウリエルはチャンスを見計らい、伸びてきた虎爪の側面を蹴飛ばし、ちっぽけなプライドを守った。
円頭虎は痛がって、激しく爪を引っ込めた。
洞口の外から怒りの低い唸りが伝わった。
それから洞口の光が再び差し込んできた。
「ざまあみろ!」
ウリエルは手の埃を払って、セラフィーナの方に振り返り、顔に得意げな笑みを浮かべた。
「あれが掻き疲れたら自分で帰るさ。猫科動物の辛抱強さは——」
しかしセラフィーナの視線は彼の肩越しに、洞口の方向に落ちていた。
「ウリエルさん」
「ん?」
「押し込んできてます」
背後から、身の毛がよだつようなメキメキという音が聞こえた。
ウリエルは振り返った。
円頭虎のあの巨大な頭が、無理やり樹洞口に押し込まれていた。
その丸顔が洞口両側の木に押されて変形し、首の筋肉が異様に捻れている。
本来硬いはずの頭骨が、この瞬間だけは異様なほど柔らかくなったかのようだ。
まるで橙黄色の生地の塊。
少しずつ中に押し込んで、肩と前足が続けて入ってきた。
鋭い爪で樹洞の内壁をしっかりと掴み、巨大な肩が力を込め始めた。
洞口の縁の硬い木質が無理やり砕かれて、木屑があちこちに飛び散った。
この巨獣は純粋な蛮力で、自分の体が入るはずもない空間へ、少しずつ体を押し込んでいた。
「マジかよ!」
ウリエルは一歩でセラフィーナの脇に飛んだ。
「猫ってマジで液体だったのかよ!」
セラフィーナはウリエルの隣に立っていた。
彼女は目の前の、強烈な圧迫感を放つ光景を見て、また振り返って満面に恐怖を浮かべたウリエルを見た。
「ウリエルさん、さっきはとても勇敢でしたね」
彼女の語調は真摯で平坦だった。
「これからどうするつもりですか? 樹洞の地形を利用してあれの活動範囲を制限して、ここで討伐しますか?」
ウリエルは頭を上げて中に押し込んできている円頭虎を一瞥した。
虎爪はすでにさっき彼が立っていた位置に届いていて、爪先が地面に五本の深い溝を刻んだ。
さらに樹洞の奥を見た——
洞窟は袋小路ではない。
もう一端からかすかに光が差し込んでいる。
「そんなの決まってるだろ」
彼はセラフィーナの手首を掴んだ。
「逃げるんだよ!」
二人は樹洞の奥に向かって走った。
あそこに光があるなら、高確率で外界に通じる出口がある。
潜り抜けられれば、この自分を液体だと思っている変態デブ猫を振り切れる。
前方のあの光の塊がどんどん近づいて、どんどん明るくなる。
出口だ。
彼は足を速めて飛び出し、目の前の視野が開けた。
これは極めて広い円形の空き地で、何の木も遮っていない。
そして空き地の正面は、まっすぐ上に伸びる急峻な崖壁。
高く聳え立ち、滑らかで平坦、数十メートルの高さが絶望を呼ぶ。
登攀どころか、足を置く場所すら見つからない。
頭上の天光が降り注いで、崖壁に枠取られた不規則な楕円を作っている。
空き地の中央には、誇張的に太い巨大な蔓が数本あるだけ。
直径は数メートルもあり、死んだ大蛇のようにあちこちに地面を貫いて、奇妙な生命力を示している。
ウリエルは空き地全体を一周見渡した。
彼らが飛び出してきた樹洞通路以外、ここには何の出口もない。
袋小路。
徹頭徹尾の袋小路。
ウリエルは呆然と立ち尽くし、視線は虚ろにあの登れない崖壁を見つめ、無意識にセラフィーナの手を握りしめた。
セラフィーナは彼の傍らで、痛くなるほど強く握られた手首を、極めて冷静に引き抜いた。
彼女は振り返って、来た時の樹洞出口に向き合った。
「なるほど」
彼女は頷いて、語調に得心した冷静さを帯びた。
「まず激怒させて、樹洞を利用して円頭虎を引き込んで、この袋小路で始末する。とてもいい作戦計画ですね、ウリエルさん?」
彼女が話している間、背後のあの樹洞出口から重い足音が伝わった。
円頭虎の巨大な体躯が通路からゆっくり這い出てきた。
もともと艶やかだった橙黄色の毛皮は、木の棘で無残に引っ掻かれ、その上まだ埃と木屑が沢山ついている。
這い出た後、押し乱れた毛を震わせて、ゆっくり体を起こした。
空き地中央の光が遮るものなくそれを照らしている。
黄褐色の毛皮の下で筋肉が起伏を描いていた。
それはウリエルを見た。
ウリエルはそれを見た。
「ガオォォォォ————」
ウリエルはふと思った。
(さっきの一蹴り、ちょっと強く蹴りすぎたかも)
【第九十八話・終】
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