第九十四話:思い立ったが吉日の冒険
転生してから初めての、母さんと離れての一泊。
心配性なのは、いつだってお互い様だった。
出発の日は二日後に決まった。
場所は樹海近くの大きな宿。
ウリエルはセラフィーナに「宿で待ち合わせしよう」とだけ言い残し、颯爽と背を向けて家路についた。
頭の中でリストを作っていた。
何を持っていけばいい?
採取袋、虫除け、水筒、干し肉あたりか。
一番大事なのは——
どうやってママにこれを切り出すか。
ドアを開けた時、ガラティーナはベランダでしゃがみ込んでミントの鉢に水をやっていた。
休暇に入ったから、毎日ティアンに化けている必要もない。わざわざ男装に戻る気はないらしい。
開く音を聞いて、玄関に顔を向けた。
手にはまだ水差しを持ったまま。
「おかえり。休校式、何か言ってた?」
「無期限休暇。復課は連絡待ち」
ウリエルはスリッパに履き替えて、ローテーブルに寄り、グラスに水を注いだ。
一口飲んだ。
「そういえば、明後日ちょっと出かける」
「出かける?」
「セラフィーナの休暇実習、手伝うみたいな感じかな。南の樹海に素材を採りに行く。昼間入って、暗くなる前に帰る。ただちょっと遠いから、近くに一泊してから戻る」
彼は軽く言ったつもりだった。
でもガラティーナの表情が変わった。
ウリエルは彼女の瞳が輝いたのを見て、次の台詞が何か分かった。
彼女は水差しを置いて、両手をエプロンで拭いた。
目をキラキラさせて彼を見た。
ウリエルは彼女が口を開く前に先手を打った。
「俺と彼女の二人だけ。ママが行ったら、雰囲気すごく変になる」
ガラティーナはまばたきした。
口まで出かかっていた「ママも行く」を飲み込んだ。
少し考えて、ソファの脇に歩いて座った。
手を膝に置いた。
別の説得方法に切り替えた。
「ウリちゃん、樹海に何があるか知ってる?」
「植物。昆虫。たぶん小型の魔獣も」
「それだけじゃないよぉ。湿気もあるし、泥沼もあるし、雨も降るんだからねぇ」
彼女は指を一本ずつ立てて数えた。
「靴はちゃんと滑り止めのついたやつを履くのよぉ。上着は防水のものをね、もちろん靴下の予備も忘れずに。それとね、干し肉は甘すぎても塩辛すぎてもダメ。食べ過ぎると喉が渇いちゃうから。水筒は満タンにして……いいこと、樹海の生水は絶〜対にそのまま飲んじゃダメだからねぇ?」
ウリエルは彼女が項目を一つずつ挙げていくのを聞いた。
言っていることは全部正しかった。
本で読んだという感じでもない。
たぶん実際に泥沼を踏んで、雨にずぶ濡れになって初めて知る類の細部だ。
彼は彼女が以前勇者だったことを思い出した。
歩いたのは樹海だけじゃないだろう。
「分かった」
彼の語調が少し柔らかくなった。
「全部持っていく」
ガラティーナはまた眉を寄せて考えて、立ち上がってキッチンへ入った。
戻ってきた時、手に小さな布包みを持っていた。
ローテーブルに置いて開いた。
中には薬草の小袋がいくつか、細い麻紐できっちりと縛られていた。
どの袋にも手書きのラベルが貼られていた。
文字は丸っこい。
少し歪んだ、不器用で丸っこい筆跡だった。
一目でガラティーナがラベルを貼って自分で書いたものだと分かった。
「これが虫除け、腰のベルトにつけて。これが止血用、潰して傷口に塗る。これが蛇除け、キャンプ地の周りに撒く。ウリちゃん、火起こしできる? 樹海の木は濡れてるから、外側の樹皮を剥がないと。中の芯が乾いてるの」
ウリエルは薬草の袋を見下ろして、手を伸ばして一つ取り、裏返してラベルを見た。
「虫除け——ヨモギと何?」
ガラティーナは薬草の名前をいくつか挙げた。
ウリエルは全部覚えられなかったが、この配合は彼女が勇者時代に積み上げた実戦経験から来ているのだと分かった。
「火起こしはできる」
彼は薬草を包み直して、きつく結んだ。
「昔、旧い家の裏でママが教えてくれたじゃん。ファイアボール投げるやつ」
「あれは乾いた薪。樹海は違う。それに魔法を使わない方法もできないと。ママが、もう一回教えてあげるねぇ」
彼女はローテーブルの下から使っていない割り箸を何本か探し出して、短く折った。
それからキッチンに行って、半分削った人参を持ってきた。
割り箸が乾いた薪。
人参が湿った木。
彼女はローテーブルの脇にしゃがみ込むと、人参の外皮をピーラーで削ぎ落とした。中からやや薄い色の芯が現れる。
「見て、外は濡れてて、中は乾いてる。濡れた部分を削って、中の芯で火を起こす。まずナイフで細く削る。細い方が太いより燃えやすい」
ウリエルは彼女の隣にしゃがんで、手の中の人参が一層ずつ細く削られていくのを見た。
ローテーブルの上に小さな山ができた。
彼女は割り箸を一本取って、人参の細切りの脇で小さな井桁型の焚火を模して並べた。
彼はふと思い出した。
幼い頃、旧い家の裏庭で、まだ魔法を教わる前、彼女が火起こしを教えてくれた時もこうだった。
あの頃は心の中で「子供に火遊びを教えるのか」とツッコんでいた。
彼女は地面にしゃがんで、木の枝と木屑で小さな焚火の構造を組み上げて、火には通気が必要で、薪は細いものから太いものへ一層ずつ加えると教えてくれた。
あの時、彼女の髪は今より長かった。
風が吹いて、うっかり火の粉が毛先に届いた。
彼は驚いて、傍にあった水桶をひっくり返しそうになった。
でも彼女は笑いながら毛先を摘んで消して、「ママは大丈夫」と言った。
十年が経った。
彼女はまだ地面にしゃがんで同じ姿勢で火起こしを教えている。
まったく同じ辛抱強さで、生きていくための一番基本的なことを、何度でも教えてくれる。
他の誰かなら、とっくに学びが遅いと文句を言っているだろう。
彼は思考を引き戻して、こくりと頷いた。
「覚えた。濡れたところを削って、乾いた芯を使う」
二日後の早朝。
陽光はまだ刺すような強さになっていなかった。
街路には薄い霧が漂っていた。
ウリエルは鏡の前で装備を点検した。
丸めた防水ジャケットをバックパックの上部にくくりつけ、予備の靴下はサイドポケットへ。満タンの水筒と油紙で包んだ干し肉を確認し、最後にママから渡された薬草の小袋をベルトの内側にしっかりと結びつけた。
滑り止めブーツは新品だった。
靴底の溝が深くて、普通の靴より重かった。
彼はバックパックを背負って、ドアを開けた。
ガラティーナがドアの前に立っていた。
子供を見送る準備だった。
ウリエルは彼女を一瞥した。
「行ってくる。たぶん明後日に帰る。この二日間、ママは……ちゃんと食べてね」
「うん」
彼女は笑って頷いた。
それから手を伸ばして彼のバックパックのストラップを軽く引き、ずれていた肩紐を直してくれる。そのまま指をストラップに沿って下へと滑らせ、肩の埃を軽く払うと、彼女はウリエルを優しく抱きしめた。そして半歩下がり、道中気をつけて、安全にね、ともう一度念を押した。
ウリエルは玄関を出た。
早朝の涼風が顔に当たった。
霧が晴れゆく中、通り向かいの街灯は今まさに消えたばかりだ。半分だけ開いたパン屋のドアからは、生地が焼ける香ばしい匂いが漂ってくる。
彼は数歩歩いて、また振り返らずにいられなかった。
宿の四階のあの窓の向こう。
カーテンが少し動いた。
誰かがたった今手を下ろしたような動きだった。
彼は顔を戻して先へ進んだ。
なぜだか、心に長く尾を引く、ちょっと可笑しいような心配と寂しさが湧いてきた。
考えてみれば、これがこの世界に転生してから初めて、本当の意味でママを離れて、家を離れて外で一夜を過ごす。
彼女は夜、一人で、料理を多く作りすぎて一人では食べきれないことに気づいて、夜は自分がちゃんと布団をかぶっているか心配で眠れないんじゃないか。
(いつもママは心配しすぎだと思ってたのに、いざ自分が出かける側になると、今度はこっちが心配性の親みたいになってるじゃねーか)
彼は深呼吸して気持ちを落ち着かせた。
柄にもない感傷を心の奥に押し込んだ。
大股で乗合馬車の発着所へと向かった。
出発だ、樹海へ。
樹海、俺が来たぜ。
【第九十四話・終】
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