第九十三話:ハッピー・ブレイクアップ
ようやく訪れた臨時休校式。
別れたその足で、二人は次の約束をすることになる。
休校式の通知は、すぐに届いた。
ガラティーナに肩を押さえられながら、剥いたみかんを次々と口に押し込まれていた。
みかんが冷たかった。
たぶんあのアイテムボックスから今取り出したばかりだ。
彼はみかんを飲み込んで、彼女の手から学院委員会の赤い印が押された通知書を受け取った。
一瞥した。
「第一学院の全学生は、明日午前九時、聖マルガレット講堂にて臨時休校式を開催する。式典後、正式に休暇に入る。復課時期は追って通知する」
通知書をローテーブルに置いた。
ようやく来た。
ここ数日、彼は自分の先延ばし癖とママの餌付け攻撃のダブルパンチで気が狂いそうだった。
商店街から帰ったあの日から、ガラティーナとの長い攻防戦が始まっていた。
お見舞いには行かなきゃいけない。
別れも切り出さなきゃいけない。
ただ一つ、どう切り出せばいいのか分からなかった。
(だってこの二つ、一緒にできる話か?)
ガラティーナの立場は一貫していた。
行かないとダメだよ。
当然だ。
彼女はウリエルが別れたがっているとは知らない。
「お家で静養してる時に行かなくてぇ、それでお見舞いって言えるのぉ?」
ガラティーナは切ったリンゴを皿ごと彼の前に押した。
「家に行くのはちょっと。親に会うじゃん」
「親に会うの、いいじゃない」
「よくない」
「怖いならママも一緒に行くよ」
「いらない」
ここ数日、こんなやり取りが十回以上は繰り返された。
毎回ウリエルは新しい先延ばし理由を見つけた。
今日は体調がよくない。
明日は別の予定があるかもしれない。
明後日は従姉さんが留守かもしれない。
ガラティーナは急かさなかった。
ただ、彼が言い訳を見つけるたびに、何かを口にぽいっと放り込んできた。
みかん、りんご、ぶどう、焼きたてのクッキー。
数日が経ち、セラフィーナへのお見舞い品は半分以上彼の胃に収まっていた。
厳選したぶどうは、今ではもう最後の一房だけになっていた。
もう彼女の家に行く必要はない。
休校式で直接会える。
ウリエルは最後のみかんの房を飲み込んで、ソファから立ち上がった。
「明日、行く」
ガラティーナは空いた皿を持ってキッチンに向かっていた。
その言葉を聞いて振り返った。
彼は「ママも一緒に来る?」と聞かれるかと思った。
でも彼女はただ少し笑って、皿を持ったままキッチンへ入っていった。
聖マルガレット講堂は、教会が王都東側に所有する附属施設で、普段は各学院が講座用に借りている。
大ホールは通常数百人を収容できるが、今日は長椅子がきっちりと列を成していて、千人でも問題なさそうだった。
ウリエルの到着は早くなかった。
中に入った時、すでにホールは半分以上埋まっていた。
彼は習慣的に全体を一瞥して、後方の隅の席を見つけて座った。
代理学院長は白髪の老教授で、演台に立って両手を台の縁に置き、話す語調には公文書のような響きがあった。
「……第一学院は創立以来、王都教育の重要な象徴であり続けてきました。今回、不可抗力により校舎が完全に損壊したこと、学院委員会は深く痛心しております。各方面との協議の結果、修繕・再建作業に要する時間と資源は予想を大きく上回り、短期間での復課は困難との結論に至りました。委員会は本日をもって、全校正式に休暇とすることを決定いたしました。復課時期は再建の進捗に応じて改めて通知いたしますので、連絡を取れる状態を保ち、後続の公告にご注意ください」
ホール内に低いざわめきが広がった。
「不可抗力」が具体的に何を指すのか小声で議論する者。
卒業生の単位はどう計算されるのかと心配する者。
もう休暇中の遊び先を興奮気味に相談し始めている者。
ウリエルは背もたれに体を預けて、人混みの中へゆっくりと視線を巡らせた。
三列目、通路側。
静かに座っている背中。
セラフィーナ。
髪を少し切っていた。
毛先がちょうど肩甲骨のあたりまでで、以前より少しすっきりして、少し洗練された印象になっていた。
(おかしいな。これから別れ話をしようってのに、なんで俺は相手の髪型なんか気にしてるんだ)
ウリエルは自分がなぜこんな細部に気づいたのか分からず、最終的に「観測者」バフのせいにした。
代理学院長は休暇中の注意事項と安全提示について数句述べてから、まばらな拍手の中で散会を告げた。
学生たちはぽつぽつと立ち上がった。
喜ぶ者もいれば憂える者もいた。
ウリエルは残ったお見舞い品の袋——少ししなびたぶどう一房と食べられずに残ったみかん数個——を提げて、人の流れを縫いながらセラフィーナの方へ向かった。
「セラフィーナ」
彼女が振り返る。彼を見た瞬間、その表情に大きな変化はなかったが、視線だけが何かを確認するように彼の顔に長く留まった。やがて立ち上がり、椅子を脇へと寄せる。
「ウリエル君」
彼女の語調は相変わらず波一つなかった。
「これ、私に?」
ウリエルが差し出した袋は、封口こそやや皺になっていたものの、中の果物は少し置いた跡がある程度で、まだ辛うじて見られる艶を保っていた。
「数日前に見舞いに行くべきだったんだけど、ちょっと用事があって。誘拐されて、怪我したって聞いた。今はもう大丈夫? 何ともない?」
セラフィーナは袋を受け取って中を覗き込んだ。いくつか擦れた跡のあるみかんを確認すると、顔を上げてこくりと頷き、標準的な微笑を浮かべた。
「大丈夫です。神官に診てもらいました。後遺症もありません。数日休んだらもう平気でした」
「それならよかった」
「果物、ありがとうございます」
「どういたしまして」
微妙な静けさが二人の間に落ちた。
周囲の同級生がばらばらと脇を通り過ぎていった。
このカップルにはもう見慣れていて、休暇中のデート先でも相談しているのだろうと思っているだけだ。
どこのスイーツ店で休暇を祝うか相談している者。
休暇の課題がすでに出ていると愚痴る者。
誰も彼ら二人が三列目の通路脇に立っていることに気づかなかった。
セラフィーナはクラフト紙袋の封を折り直した。
それから目を上げてウリエルを見た。
セラフィーナの目が、ほんのわずかに見開かれた。
ウリエルの言い淀んだ様子を見て、答えはもう大体分かっていた。
ただ相手が自分から言うのを待っているだけだった。
ウリエルは彼女の視線がいつもと少し違うことに気づいた。
用意していたいくつかの言い回しが一度に詰まった。
最後に別のセットを選び直した。
深呼吸して、ゆっくりと口を開いた。
「話したいことがあるんだ」
セラフィーナは軽く頷いた。
心の中ではもう残りの会話をほぼ予想していた。
ウリエルは別れを切り出す。
理由は難しくない。
彼女が誘拐された後、ウリエルは最後に彼女と接触した人物として、騎士団に連行されて数日間尋問を受けた。
最終的には釈放されたが、尋問の味は良いものではない。
それに従姉のエステラがどんな人物か、彼女も紹介していた。
ただ彼女の前に立つだけでも勇気がいる。
ましてや彼女の彼氏を続けるなど。
それに、あの時自分が誘拐されたことで、精神的にも相当なプレッシャーを受けたはずだ。
彼女はウリエルの微かにしかめた眉と意図的に平らにした口角を見て、少し申し訳なくなった。
この関係は最初からギブアンドテイクだった。
今、私のせいで厳しい尋問を受けさせた上、無理して別れを切り出させようとしている。なら、こちらから助け舟を出してあげよう。
「別れの話ですよね」
彼女はあっさりと口にした。
ウリエルは一瞬固まった。
用意していた前置きをまだ言い終わってないのに、セラフィーナはもう、彼のために見事な助け舟を出してくれていたのだ。
反射的に否定しようとしたが、彼女の表情を見た。
とっくに予想していて、これは当然のことだと思っている淡々とした顔だった。
「そう」
彼は認めた。
「この件、俺にはすごくプレッシャーだった。君は伯爵家の令嬢で、俺はただの平民学生だ。最初は付き合ってみてもいいかなって思ったけど、尋問されたあの数日間で、いろんなことが分かった。身分の差、君の従姉さんの態度、それに俺自身がこれを受け止められるかどうか。いろいろ考えて、やっぱり——」
「分かりました」
彼女は遮った。
こういう建前は聞く必要がない。
それに彼が詰まっているのを見て、無理に言葉を紡がせたくなかった。
損切りのタイミングだった。
彼女はクラフト紙袋を左手から右手に持ち替えて、彼に軽く頭を下げた。
大きくはないが、距離を開ける礼儀として適切な角度だった。
「この間、お世話になりました。約束したことは、引き続き秘密にします」
セラフィーナは身を起こして、袋からしなびたぶどうを取り出した。
一粒摘んだ。
皮は少ししわが寄っていたが、果肉はまだ張りがあった。
手で軽く擦ってから口に入れた。
まあまあ甘かった。
選び方は悪くない。
「ただ、ウリエル君、こういう時はもう少し正直な方がいいですよ。本当の交際関係なら、相手が直すべき点を知れますから」
ウリエルはその反撃に一瞬言葉を失った。
どう返すか言葉を組み立てていた。
セラフィーナは続けた。
「騎士団に何日も尋問されて、ごめんなさい。私のせいで、辛い思いをさせました。従姉のことは心配しなくていいです。彼女は一部のことで少し理不尽ですけど、私が誰と付き合っているからといって相手に嫌がらせはしません。別れた後でも大丈夫です。今月分のお金は、予定通りカードに振り込みます。契約は今月末まで。早期終了でも同じです」
ウリエルは静かに頷いた。彼女ならそう言うだろうと分かっていたからだ。セラフィーナという少女は、決して関係を曖昧にしない。公私をきっちり分け、「契約は契約」と割り切る通透さがある。
彼は何か大人らしい別れの挨拶を言おうとした。
「この間の協力に感謝します」とか「また何か困ったことがあったら言ってください」とか。
言葉が出る前に、セラフィーナが先に口を開いた。
「その前に、聞きたいんですけど。まだ時間ありますか、一つお願いできませんか」
ウリエルの眉が微かに寄った。
「この展開は俺の脚本にない」という警戒感を帯びていた。
ウリエルは彼女を一瞥した。彼女は笑いもせず、探る様子も見せない。その表情は真剣かつ冷静で、どこまでも事務的だった。
彼はボールを蹴り返した。
「言ってみて。できる範囲で」
「休校にはなりましたけど、その後まだ予定があって。錬金の課題で、古代樹海に指定された素材を採取しに行く必要があるんです。もう一人いると、何かあった時に頼れます」
ウリエルは聞き終わって、頭の中で選択肢がポンポン浮かんだ。
冒険者を雇うか、あの従姉と行くか、それとも学友を頼るか。
「冒険者を雇えばいいんじゃない」
彼はその選択肢を順番に口にした。
「あと従姉さんと行くとか。学友とか」
セラフィーナはすぐには答えなかった。
クラフト紙袋を折りながら、ウリエルと視線を合わせなかった。
「レンタル彼氏としては、そんなに鈍いと困ります」
彼女は言った。
「他を探さないのは、最後の思い出にしたいからです」
ウリエルは頭を掻いた。
契約関係。
レンタル彼氏。
最後の一か月。
最後の思い出。
これらの言葉を並べると、理屈としては一応通る。
でも、どうにも腑に落ちなかった、どこかしっくりこなかった。
彼は考えた。
セラフィーナは誘拐されたばかりだ。
何日も閉じ込められて、殴られて、血を抜かれて、何か得体の知れないものを注射された。
契約関係とはいえ、急に切れたら、彼女もプレッシャーや悩みがあって、外に出て気晴らしがしたいのかもしれない。
一応、彼女はまだ彼のスポンサーだ。
金を払ってくれる人だ。
それに、対価なしに報酬だけ受け取るのはさすがに気が引ける。
彼女はわざわざ今月の分は振り込むと言った。
何もしないで一か月分の報酬をただ取るのは、ちょっと筋が通らない。
樹海に付き合って素材をいくつか採る。
最後の仕事だと思えばいい。
仕事を終えて金をもらって別れる。
これで清算だ。
最後に——行ったことがないから、見てみたい。
樹海。
こっちに来てからこんなに経つのに、まだ本当に中に入ったことがなかった。
教科書には樹海の植物多様性は温帯森林の何倍もあって、稀少種の中には樹海にしか分布していないものもあると書いてあった。
彼はガシガシと乱暴に頭を掻きむしった。
それから、彼は本題に入った。
「どのくらいかかる? 何日もじゃないよな」
「普通なら、昼間入って、暗くなる前に出られます」
外で泊まる必要はない。
この答えで彼は微かに残念に思い、微かに安堵した。
残念なのは、樹海でキャンプするのも面白そうだったから。
安堵したのは、テントを張ったり焚火をしたり交代で見張りをしたりしなくていいから。
そして、もっと重要な点は——
別れたばかりの元カノと野外で一夜を過ごさなくていいから。
「わかった」
彼は手をポケットに入れた。
「日を決めよう。いつ?」
【第九十三話・終】
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