第六十話:レンタル彼氏
「あなたの近くにいる方のためでしょう」
その静かな断定が、ウリエルの心臓を射抜く。
けれど、次に彼女が差し出したのは追及ではなく、一枚のカードだった。
セラフィーナの視点から見れば、物事の真相はこれ以上なく明白だった。
あの廊下の曲がり角でのことを、今でもはっきりと覚えている。
最初にやってきたのは、銀髪の少年だった。
整いすぎた顔。
あまりにも綺麗な顔立ち。
声は冷静そのものだった。
告白の内容は一言一句、教科書のお手本みたいだった。
セラフィーナはその場で背中に冷や汗をかいた。
目の前に立つその人の、隠しも飾りもしない、まっすぐな、ある種の圧を帯びた真剣さ——そして何より、女性と見紛うほど整った顔立ちが、自分の最も苦手なタイプに重なったからだ。
そのとき初めて、隣にもう一人いることに気づいた。
ウリエルだった。
壁にもたれ、腕を組んで、「俺も告白の列に並んできました」という顔をしていた。
立ち姿は気だるげで、視線は堂々と銀髪の連れに向いていた。
緊張している様子もなく、気まずそうにしている様子もなく。
(この二人、どういう関係なんだろう。連れが他の人に告白しているのをそばで見ているのに、少しも気にする素振りがないなんて)
その後、食堂で何度か顔を合わせた。
銀髪の少年はいつもウリエルの隣に座り、静かに食事をしながら、ときどき顔を上げて彼を見た。
その目に浮かんでいるものは、うまく言葉にしにくかった。
友情よりも強くもなく、かといって友人同士の気安さとも違う。
どちらかといえば、観察に近かった。
穏やかだけど濃い視線で、周りの全てをゆっくりと測るような。
他に二人の男子がよく一緒にいた。
赤髪で声が大きいほうと、金髪で手帳を持ち歩くほうが、カイとレオだろう。
この二人も数日前に告白してきた。
まともに言葉すら紡げていなかった。
金髪のほうは流暢だったが、流暢すぎて研究発表みたいだった。
三人。ウリエルを入れて、四人。
セラフィーナはその断片を繋ぎ合わせた。
他の二人はそれぞれ告白して、玉砕している。
銀髪の少年が告白しにきたとき、ウリエルはすぐそばで見ていて、まったく動じていなかった。
そしてウリエルがきた。
大仰で、明らかに本心ではない口調で「子供の名前まで考えてある」と言った。
そのとき彼の後ろに目をやると、銀髪の少年が廊下の曲がり角に立っていた。
金色の瞳がこちらを向いていた。
真剣で、穏やかな表情で。
(ああ、そういうことか)
そのとき全部わかった。
今、訓練場の縁のベンチに座って、「あなたの近くにいる方のため」という言葉を受けてウリエルが固まるのを見ながら、セラフィーナはさらに確信を深めた。
同調圧力だ。
男子の小グループの中で、他の三人が同じ相手に告白している。
残った一人が何もしなければ、そのグループの中で浮いてしまう。
ウリエルは彼女のことが好きで来たわけではなく、仲間外れを避けるために来た。
別に不快ではなかった。
むしろ、花束と愛の詩を合わせたどんな理由より、ずっと本物に思えた。
セラフィーナは目を伏せた。
この状況が、ある人物を思い起こさせた。
最も会いたくない、最も怖い人。
従姉だ。
強くて、目鼻立ちが整っていて、有無を言わさぬ存在感を持つその人は、いつも「あなたのためを思って」という目でこちらを見ながら、セラフィーナの選択をひとつひとつ管理された予定表に変えていった。
銀髪の少年の目は違う種類だった。
でも、心の中での危険度のランクは同じだった。
あれは好意の眼差しではなく、値踏みするような目だ。
礼儀作法と社交辞令を毎日無数に繰り返す中で何度も感じてきたもの——誰かの基準で測られて、満足げに頷かれる感覚。
銀髪の少年がこちらを見るとき、その目は明らかにこう言っていた。
うん、合格。
従姉とまったく同じ温度だった。
(無理。ほんと無理)
セラフィーナは思考を引き戻し、まだ固まっているウリエルを見て、遠回りをやめることにした。
「ただ、今別れられると私も困るんですよね」
口調は穏やかだった。
しかし言葉の切れ味は鋭かった。
「今あなたがいなくなったら、あの綺麗すぎる『いい友達』がまた来るじゃないですか」
「いい友達」という部分を、ごく軽い声で言った。
でも意味は十分すぎるほど伝わった。
また金色の瞳を思い出した。
食堂でも廊下ですれ違うときも、あの瞳はいつも静かにこちらに向いていた。
頭の先から爪先まで眺めて、それからゆっくりと目を細めた。
敵意ではなかった。
評価だった。
親が子の縁談を確認するときの、あの目だ。
(無理。無理無理無理)
「あの、査定するような、じっとりした視線、正直しんどいんですよね」
ウリエルが勢いよく顔を上げた。
さっきまでの硬直と緊張が、何かに押し流されたような顔になった。
正体が暴露されるかもしれないという恐怖で張り詰めていた心臓が、この一瞬で砕け散り、粉々になった後、猛烈な脱力感とともに「マジかよ」という、とてつもなく理不尽な徒労感と呆れに変わっていく。
理解した。
「査定するようなじっとりした視線」——これはもう完全に、お母さんのお嫁さん審査モードだ。
昨日の食堂で、ティアンが隣で飯を食いながらセラフィーナを見ていた。
あの満足げな口元の弧は、ウリエル自身がリアルタイムで目撃していた。
満点。満点お嫁さん。
(そういうことか)
短い驚きの後、理性がようやく高地を奪還した。
待て。
セラフィーナは今「今あなたがいなくなったら」と言った。
これは暴露ではない。
このときの彼女の語り口は落ち着きすぎていた。
脅しではなく、自分が望まない結果を淡々と述べているだけに聞こえた。
ティアンにまたきてほしくない。
だから今の状況を維持してほしい——そういう示唆か。
ティアンのことは口外しないという、暗黙の取り引き?
セラフィーナはウリエルの顔の上を走る表情の変化を見ながら、口元がわずかに上がった。
反応した。反応してくれれば十分だ。
座り直して、両手を膝の上で重ね、続けた。
さっきよりも少しだけ気楽そうな口調だった。
どちらにとっても遅かれ早かれ話し合うべきことを、ようやく切り出す取引相手みたいな声で。
「それに、私が普通の男の子に——そう、ごく普通の——ひどい振られ方をしたって知れ渡ったら、あなたの立場、どうなると思いますか?」
ウリエルは考え込み、眉根を微かに寄せた。
問いそのものは大した問いではない。問題は、彼女がこれを問う意図だ。
弄ばれて捨てられた被害者が同情を集めるのは当然として、捨てた側は全校——いや、二校合わせて、公敵から全生徒の敵に格上げされる。
でもそれは別にいい。
中学三年間でもっと大きな危機を何度も乗り越えてきた。全員の敵くらいでは怯まない。
考えているのは別のことだ。
この女は何を考えている。
ずっと遠回りしている。一周また一周、出てくる問いのひとつひとつが、こちらに梯子を差し出しているように見える。
なぜ?
セラフィーナはウリエルの表情を見て、まだ待っていることを察した。
この人は思っていたより慎重だ。
遠回りをやめることにした。
「実は私も、好きで承諾したわけではないんです」
急に声が素直になった。
礼儀という包装紙が一枚剥けて、代わりに直接な告白が出てきた。
風に吹かれた葉が何枚か舞い落ちてきて、彼女の肩に乗った。
手を上げてさらりと払い落とした。
「単純に——ええと、従姉から距離を置くため。それと、あなたのちょっと整いすぎた友達から距離を置くため、ですね」
二つの理由を並べて、軽やかに言った。
今日は紅茶にしたか、コーヒーにしたか、それを説明するような口ぶりで。
それから少し首を傾けてウリエルを見た。
灰色の瞳には恥ずかしさも色めきもなかった。
あるのはただ、淡々とした事務的な静けさだった。
「いわゆる、レンタル彼氏ということで」
ポケットから銀行のカードを取り出し、ウリエルの前に差し出した。
王室御用達の銀行の専用カードだった。
木漏れ日の中で、豪奢な金の箔押しが、庶民の目を焼き尽くすような、忌々しい輝きを放っていた。
ウリエルの目がほんのわずかに見開かれ、喉仏が一つ上下して、ごくりと喉が鳴った。
感動でも怒りでもなく、頭の中でロードしている映像が一瞬フリーズした、という顔だった。
セラフィーナはさっきと変わらない口調で続けた。
「毎月百ゴールドを振り込みます。いかがでしょうか」
ウリエルはそのカードを見つめたまま、口を開きかけて止めた。
彼女は二本の指でカードを挟み、さらに少しだけ、こちらに差し出した。
【第六十話・終】
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