第百九話:後宮の危機
「ウリちゃんのお嫁さんが行っちゃった。ママ、心が痛いよぉ」
(違う。あれは冗談だったはずだ)
(やめろ。それ以上はダメだ)
ウリエルは国王スイートルームの巨大なベッドに仰向けに転がっていた。
このバカでかいビロードのふかふかベッドは、横に寝ても縦に寝ても斜めに寝ても端に届かない。
力いっぱい手を伸ばしても端まで届かない。
五人で寝ても余裕だ。
彼は天井から吊るされた、自分の全身の装備を合計した値段よりたぶん高価な水晶シャンデリアを見つめ、人生について考えていた。
ベッドサイドテーブルには、ホテルからのサービスのチョコレートが小皿に盛られていて、金箔の包装紙が光でキラキラ輝いている。
この部屋はルミナ曰く「書記官と魔女様に何とか我慢していただくしかない」国王スイートで、面積は以前学院で住んでいた寮の十倍はある。
浴室の蛇口まで金メッキ、便器にまで金の縁取りがついている。
それから彼は顔を傾け、ベッドの端をちらりと見た。
ガラティーナがベッド脇のソファに座っていた。
背中を小山のように積まれたクッションに預け、膝の上にはどこから掘り出したのか分からない本を開いている。
ベッドサイドランプが彼女の柔らかな横顔を照らし、いかにも母親らしい柔らかな光をまとわせている。
全体が穏やかで安らかに見えた。
ウリエルは視線を水晶シャンデリアに戻し、眉が自然と寄った。
終わった。
一緒に寝ることになる。
心の中で指を折って数えた。
母さんとルームメイトになってどれくらい?
だいたい四年。
母さんと同じベッドで寝たのは、四年前が最後だった。
彼の体は巨大ベッドの真ん中で不自然にもぞもぞ動いた。
まるでミミズのようにもぞもぞと動いた。
特殊な状況には特殊な対応を。
そう自分に言い聞かせる。
もう入ってしまったんだから、今さらソファで寝るわけにもいかない。
母さんが許すはずがないし、ルミナたちも許さない。
そう、特殊な状況。
特殊な対応。
「ウリちゃん」
来た。
来るべきものが来た。
「セラフィーナさんとはどうなったのぉ?」
ガラティーナは本を閉じ、くるりとこちらを向いた。
それからベッドにうつ伏せになり、両足を上げてゆらゆら揺らした。
知らない人が見たら誰かの美少女かと思うだろう。
ただし顔には標準装備の「ママ、ゴシップ聞きたい」という笑顔がある。
ウリエルは適当にごまかした。
「まあまあかな」
「まあまあって何ぃ?」
「だから……まあまあ」
ガラティーナの揺れる足が突然止まった。
明らかにこの返答に全く満足していない。
考え始めたらしい。
ウリエルは視界の端で彼女の表情を捉え、今夜は逃げられないと悟った。
「別れた。学校行かなくなったから、会えないし。気持ちも冷めた。いい別れ方した方がいいだろ」
ガラティーナは固まった。
両手は頬杖の姿勢を保っているが、指はすでに無意識に緩んでいる。
結果、彼女は笑った。
さっきより明るく笑って、口調にウリエルが全く予想していなかった真摯な賞賛が混じる。
「女の子をずっと宙ぶらりんにしたままにせず、きっぱり決断したんだねぇ。男らしい責任感だよぉ。さすがウリちゃん」
ウリエルは肺を突かれた気がした。
母さんはいつもこうだ。
彼が何を言っても、そこから褒めるポイントを見つけ出す。
だがこういう時の賞賛は叱られるより辛い。
なぜなら自分がこの件をそんなに綺麗に処理していないと心の中で分かっているからだ。
セラフィーナは最初から取引感覚だった。
こっちで写真を使うかどうか半日悩んでいる間に、向こうはとっくに崖から飛び降りていた。
いい別れ方?
付き合ってもいないのに何を別れるんだ。
「今も王都にいるんだよねぇ」
ガラティーナは案の定そこで止まる気配がない。
人差し指で顎を軽く叩き、首を傾げて考えた。
「ママが一緒に会いに行って、ちゃんと話した方がいいんじゃない?」
「いらない」
ウリエルはきっぱり拒否した。
「学校に行かなくなったのに毎日会いに行くのもおかしいだろ。同じだよ」
ガラティーナは考え深げに「ふぅん」と言った。
それから静かになり、再び本を手に取った。
ウリエルがちらりと見ると、タイトルは『嫁姑関係の処理法』だった。
彼女はさっき読んでいたページに戻って読み続け、だいたい五分間静かだった。
ウリエルは安心して休息でき、目を閉じた。
しばらくして、ベッド脇から本を閉じる軽い音が聞こえ、次にソファが微かに沈んで跳ね返る動き、それから部屋の扉が静かに開かれ、また静かに閉められた。
ウリエルは目を開けて、空っぽのソファと閉じられた扉を見つめた。
こんな夜中にどこへ行ったのか分からない。
(まさか夜食を作りに行ったんじゃないよな。起こして食わせるってことはないよな……)
ウリエルは「母さんが空腹だと思えばお前は空腹だ」という恐るべき概念を思い出し、寝続けることにした。
三十秒も経たないうちに、外から爆音が響いた。
国王スイートの防音扉を貫通し、厚い絨毯が敷かれた廊下を貫通し、ウリエルがやっと緩めた鼓膜を貫通して、まっすぐ脳に突き刺さった。
「ふわあああ——!?」
キラの声だった。
キラ。
頭を撫でられたら首の根元まで赤くなり、母さんに一言褒められたら布団の中で転がって日記を書く陰湿オタク女。
彼女がさっきの限界オタクのような奇声を発したのだ。
ウリエルは慌ててベッドから起き上がった。
まだ降りて確認する前に、部屋の扉が再び開いた。
ガラティーナが入ってきて、後ろに二人が続く。
ルミナが先頭で、エルフ耳が極めて淡いピンクに染まり、組んだ両手の指が、落ち着きなくもじもじと動いている。
フェンリアが後ろを歩き、毛むくじゃらの耳がピンと立ち、尻尾が背後で大きく左右に振られ、目には「大仕事するぞ」という興奮が満ちている。
ウリエルはこの陣容を見て、背中をゆっくりベッドヘッドのクッションに預けた。
ルミナがベッドから三歩離れた位置で立ち止まり、軽く咳払いをして、いつもの調子を保とうとして口を開いたが、後半は一語一語が揺れていた。
「お邪魔します、書記官。魔女様が……部屋が大きすぎて、ベッドも大きいから、昔みたいに——」
彼女の視線が泳いだ。
肩に垂れた緑の短髪の一房を手で巻き始め、人差し指が毛先を何度も何度も巻く。
耳の先端のピンク色が、肉眼で見える速度で首全体に広がっていく。
「——家族一緒に、と」
ウリエルはルミナが髪を巻く動作を見て、心臓がどきりとした。
終わった。
昔、旧い家の床にしゃがんで彼のホラ話を聞いていた小娘たちが、今や少女の年齢に達していた。
ルミナの乙女心が開花していることに、大声で復唱した。
「家族みんなで一緒ッス!」
言い終わると同時に、助走三歩、跳躍。
体全体が宙に浮き、空中で放物線を描き、どすんとベッドに着地した。
四肢でベッドを這い、ウリエルの隣まで這い寄り、ふさふさの赤い尻尾がプロペラのように回り、それから手を伸ばして彼の腕を抱きしめようとした。
ウリエルは光速で両手を引き抜き、胸の前で腕組みした。
樹海でみかんちゃんを放り投げた時と全く同じ速さだった。
(この子に抱きつかせるわけにはいかない。この体格はもう昔みたいに適当にごまかせるレベルじゃない!)
フェンリアは空振りして、首を傾げて彼を見た。
犬耳が少しだけ垂れる。
ウリエルは犬をあやす方法で指を彼女の前で二、三度振り、それから耳を突いた。
左から右へ、右から左へ追いかけさせると、垂れていた耳がまた立った。
ルミナは横で数秒静かに見てから、貴族令嬢が晩餐会で着席する時のような姿勢で優雅にベッドに上がった。
ウリエルの反対側のベッドの端に座る。
座ってからスカートの裾の皺を整え始めた。
小さな皺一本しかないのに、三回整えてもまだ終わらない。
ガラティーナはベッドの足元に立ち、両手を合わせて頬に添えていた。
極めて満足そうな、まるで大豊作を見るような目でこちらを見ている。
その燦然たる金の瞳には、言葉にできない期待が満ちている。
ウリエルはその視線を捉えた。
背中の産毛が一本一本立ち上がった。
カチャ。
部屋の扉がまた鳴った。
キラが入口に立っていた。
彼女は明らかに部屋に戻って準備をしてから来たらしく、いつも目を覆っていた前髪が丁寧に耳の後ろに流され、身につけている服が変わっていて、フリルのついたナイトドレスだった。
香水も吹きかけていて、極めて淡い花の香りがドアの隙間から部屋に漂ってくる。
彼女の顔は額から首の根元まで赤く、赤みが潮のように頬を、耳の先を、額を覆い、最後には耳たぶまで真っ赤だった。
その場で荒く息をして、胸が激しく上下している。
極めて激烈な葛藤を経験し、それに惨敗したような様子で、さらに、頭の中でR指定の長編エロ同人誌をまるまる一冊分、脳内補完したに違いない。
ウリエルはキラを見て、ベッド左側で優雅に髪を巻いているルミナを見て、ベッド右側でうつ伏せになって尻尾で彼の手首をこすっているフェンリアを見て、ベッドの足元で両手を合わせて目を輝かせている母さんを見た。
記憶の奥深くに埋もれていた画面が突然浮かび上がった。
四年前。
旧い家。
暖炉がパチパチ鳴る。
母さんが三人の少女を見送って、一言言った。
「ウリちゃんのお嫁さんが行っちゃった。ママ、心が痛いよぉ」
(クソ)
(ヤバい、終わった、死んだ)
(母さん、いや、マジで——)
あの時、母さんは冗談だと思っていた。
娘と嫁を区別できているのかとも聞いた。
その件は終わったと思っていたのに、なぜ今日また……
左右を見ると、そしてこれから戦場に入ろうとしているキラ。
(これは冗談じゃない)
(やめろォ! それ以上はいけない!)
彼はこの三人の子を子供として見ていた。
昔、彼女たちに話を聞かせていた時、彼女たちはどれだけ小さかった?
ルミナに字を教えた時はペンすらまともに握れなかったし、フェンリアに餌付けした時は犬歯も生え揃っていなかったし、キラにビジネスの原理を説いた時なんてあいつ三角関数すら知らなかったんだぞ。
(ダメだ、絶対ダメ、その方向に発展させちゃダメだ!)
この生死の境目で、ウリエルは突然大声を上げた。
「ホーアイ!」
それから両側の手を振り払い、四人の前で大きく腕を回して準備運動のような謎の動きを見せ、跳ね起きでベッドの上に飛び起きた。
四人全員が呆然とした。
「来い」
ウリエルは羽毛枕を一つ掴み、全身の力を込めて元気いっぱいの笑顔を絞り出した。
「枕投げしようぜ」
【第百九話・終】
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