第二百七十九話:二つ目のスターコア
アウラムが守っていた隕石は、以前見た隕石と比べて若干色が違っていた。
恐らく、アウラムの火の力を浴びたせいなのだろう、若干赤みがかっているように見える。
許可も得たので、サクラに頼んで割ってもらうと、中からは赤い星型のスターコアが出てきた。
「これがスターコア……」
イナバさんが興味深そうに見ている。
まあ、スターコアを使えば誰でも一瞬で強くなれるというのだから、誰だって欲しがるものだろう。
特に、イナバさんは先程の戦いで無力さを思い知っただろうし、できることなら強くなりたいと思うのも無理はない。
でも、これを使わせてあげることはできない。
と言っても、こんなもの使わなくても俺の体は十分強い。すべてのスキルを思い出せば、それこそこの中の誰よりも強くなれることだろう。
もし使うとしたら、戻った時のことを考えてイナバさんの体である俺が使うべきじゃないかな。
兎にスターコアを使うとか贅沢もいいところだし、そもそも効果あるのかも知らないけど。
ま、どっちにしろ、七つ揃うまでは使う気はないんだけどね。
「ねぇ、これ使っちゃ……」
「ダメに決まってるでしょう」
「ですよねー……」
がっくりと肩を落とすイナバさん。
まあ、今回はかなり協力してくれたんだし、何かしらのお礼はしてもいいかもしれない。
イナバさんって何が好きなんだろう。兎だし人参とか?
ちなみにアリスは人参好きだよ。生は食べないけど。
〈ところで、そなたらはなぜ小動物を連れている? 強き魂だと思えば特に攻撃らしい攻撃もしてこなかったが。知恵袋のような役割か?〉
スターコアを手に色々話していると、アウラムが話しかけていた。
小動物って俺のことだよね。まあ、確かにその疑問は当然だろう。
アウラムだって手加減しなければ俺なんてすぐにでも殺せていただろうに、わざわざ避けてくれたんだから戦いにくかったかもしれない。
それで負けたとは言わないだろうけど、どちらにとっても邪魔であるのに違いはないもんね。
「少し事情がありまして。アリスさん、話しても?」
「きゅっ」
「そうですか。それでは説明しますね」
カインはアウラムに向かって俺とイナバさんが入れ替わっていることを説明する。
【ボディスワップ】のスキルはかなり珍しいスキルではあるけど、アウラムは知っているだろうか?
〈なるほど、道理で一人だけ手ごたえがなかったわけだ。我の目が腐っていたのではないかと不安に思っていたぞ〉
「はは、弱くてすいませんね……」
〈いや、慣れぬ体で我の攻撃を悉く回避したその適応力は誇っていいと思うぞ。元の状態での本気を見て見たかったが、それは仕方がないか〉
もし、入れ替わりなどなく、元の姿で戦えたのならもっと早くけりがついていたことだろう。
俺も弓で攻撃に参加できただろうし、射撃ダメージで苦戦するなんてことはなかっただろうしね。
恐怖状態にするに関してはちょっと手こずったと思うけど、それさえなんとかできれば安定してクリアできていたことだろう。
さっきの勝負だと、試練後に戦うことになっていたら回復リソースが尽きていた可能性がある。本当に戦いがなくてよかった。
「ところで、アウラムがここに来た理由はこのスターコアを守るためってことでいいのか?」
〈いかにも。以前守っていた竜玉は相応しき者へと譲った。新たなる竜玉を求めて気配を探っていた所見つけたのが、この場所だったというわけだ〉
「やっぱりそうか。町の人達が採取に来られないって嘆いてたぞ?」
〈我が竜玉を奪おうと思わなければこちらから攻撃する意思はない。と言っても、こうして再び竜玉を渡した今、この地に留まる理由はなくなった。明日にでも、新たな竜玉を求めて旅立つことになるだろう〉
「そうか。ま、町の人達にとっては朗報かもな」
アウラムはスターコアがある場所を察知する力でもあるんだろうか。もしそうだとしたら、アウラムについていけばスターコアが集まりそうな気もする。
でも、その度にアウラムと戦うのはできれば遠慮したいし、アウラムとて同じ相手に同じ試練を行うとは思えない。
前に持っていた竜玉は誰かに譲ったらしいし、俺達と同じような人がいたのかもしれないね。
「アウラムは、また粛正の魔王が現れたら戦うつもりなのか?」
〈我の役割は世界を見守ること。奴が再び現れ、同じように世界を滅ぼすというのであれば、牙を研ぎ、爪を振るうだろう。これは他のエンシェントドラゴンも同じことだ〉
「なら、その時は共闘ってことになるのかな」
〈そうはならないだろう。奴一人ならばともかく、配下も同時に相手にするとなれば数がいる。そなたらが魔王を相手にするのであれば、我らは土地を守るために戦う〉
「うーん?」
〈露払いはしてやる。そなたらは本命に集中せよ、ということだ〉
「なるほど」
つまり、アウラムを始めとしたエンシェントドラゴンが強いのは確かだけど、あくまで魔王を倒すのはプレイヤーの役目ってことか。
確かに、魔王をアウラム達に任せて俺達が露払いじゃなんか締まらないしな。
この世界には俺達以外にもプレイヤーはいるようだから、俺達だけが主人公とは言わないけど、本来シナリオとは冒険者が主人公の物語だ。
一番大変なところは俺達がやらないといけないのかもしれないね。
「ところ、一応聞きたいのですが、私達全員分のスターコアを用意してくれたりは?」
〈そなたらは我にその力を示した。全員が竜玉を手にする資格はあるだろう。しかし、すべてを用意してやることはできぬ〉
「でしょうね。聞いてみただけです」
〈真に資格のある者ならば、再び巡り合うことになるだろう。その時は我が竜玉を渡すことも吝かではない〉
「その時が来たらぜひお願いしますね」
〈心得た〉
仮にスターコアを強化のために使うなら、俺達は四人いるから四個必要になる。でも、それをアウラムから全部手に入れるのはやはり不可能なようだ。
まあ、基本的にネームドと戦うのは一回だけ。その報酬であるスターコアを何度も入手出来たら確かにおかしいか。
一応、シナリオによっては今回みたいに力を示すだけでいいというパターンもあるかもしれないけど、スターコア自体が一つしかないから意味はない。
いつの日か再び出会った時に、アウラムがスターコアを持っていたらくれるっていうのだからそれだけでもありがたいと思わなくちゃ。
「さて、そろそろ帰るか?」
「ですね。アウラムもこの地を去るようですし、依頼の方も達成です。早く報告して安心させてあげましょう」
「なんだかあっという間だったね」
準備に一週間を要したが、戦ったのはほんの数時間である。
いや、大抵は数分で済むところを数時間もかかったのだからかなりの激闘であったことは確かだが、終わってみればあっという間だったなという印象だ。
〈くれぐれも竜玉の使い道を間違えぬようにな〉
「うん、ありがとうね」
最後に念を押され、俺達はその場を後にする。
今後もアウラムのようなネームドドラゴンと戦う機会はあるだろうか。もしあるとしたら、今回のように友好的に終わりたいものである。
今までは倒さなければ手に入らないと思っていたけど、こうして力を示せば譲ってくれるというなら、それに越したことはない。
まあ、一番楽なのは最初のスターコアと同じように、何も条件なく手に入れられることだけどね。
そんなことをつらつらと考えながら、サクラの腕に抱かれて火山を後にした。
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