第二百八十話:宴会騒ぎ
ギルドマスターに事の顛末を報告すると、もろ手を上げて喜んでくれた。
まあ、スターコア云々に関してはぼかしたけど、アウラムが会話してくれたことや、アウラム自身が人間を害する気がないことは伝えておいた。
ないとは思うけど、今後またここにアウラムや同じネームドドラゴンが現れるようなら、ある程度の対策が取れるかもしれない。
もちろん、アウラムのように温厚なドラゴンばかりとも限らないから、対応は慎重に行わないといけないけどね。
「あなた達は命の恩人だ! このことをすぐに伝えて回らなくては!」
ギルドマスターはそう言って部屋を飛び出して行ってしまった。
俺としては、そんなに騒ぎにして欲しくはなかったんだけど、興奮した状態のギルドマスターを止めるのは面倒くさかったし、どのみち町の人達にはアウラムがいなくなったことを報告しなくてはならないので、まあいいかと放置したのだけど、今思えば無理矢理にでも止めておけばよかったと思う。
おかげで町を歩けば口々に英雄だともてはやされ、冒険者達には担ぎ上げられ、お年寄りとかは神様だと崇められるという。
まあ、多少は反響はあるだろうなとは思っていたけど、反響がありすぎだった。
「今日は宴会だ! カインさん達もぜひ参加してってくれな!」
今まで火山での採取が滞って色々溜まっていたのもあるとは思うが、参加しないわけがないという謎の自信に満ち溢れていたギルドマスターの言葉によって、町を挙げての宴会が行われることになった。
俺達が火山から戻ってきたのは夕方頃。それなのに、すでに町に噂が広がりまくって知らない者はいないってくらいなのはおかしいと思う。
さらに言うなら、そこから宴会の準備までできるのもおかしいと思う。
せめて次の日じゃない? どんだけ嬉しかったんだろう。
そのせいで、その日は城に帰ることはできなかった。あまりにも人目を引きすぎて、こっそりとポータルを作って帰るということができなかったのだ。
ナボリスさんには悪いが、明日朝一で帰ってちゃんと報告しておこうと思う。
「ささ、どうぞ一杯!」
そんなこんなで夜。俺達は宴会の席に並んでいた。
会場となった広場にはテーブルや椅子が並べられ、ここぞとばかりに店を構える露店も多数。
元々、観光地だけあって観光客もなんだなんだと集まって、その規模は結構大きなものとなっていた。
「いや、疑っていたわけではないが、まさか本当に四人だけで追い払っちまうとはな」
「ギルドマスターもよく頼みますね。私だったら無謀だって止めてるところですよ」
「そうは言うが、お前だってカインさんの実力は見ただろう? あれを見たら、誰だって期待したくなるだろうが」
「まあ、確かに」
ギルドマスターと受付の女性が話している。
本来なら最低でも十数パーティは必要となるドラゴン討伐をたった一パーティで、しかも一人は戦闘不能と知らされた状態でやり遂げたのだから、驚くのも無理はない。
ギルドマスターが真面目な性格じゃなくてよかった。もし、受付さんの言うように止められていたら、俺達は言いつけに逆らって挑むことになっていたことだろう。
事前にアウラムが相手だと知ることもできなかったかもしれないし、仮に追い払うことに成功したとしても、何かしら文句を言われていた可能性がある。
こうして宴会まで開いて歓迎してくれているのはとても運がいいことなのだ。
「これでこの町も安泰だろう。いやぁ、よかったよかった」
「ギルドとしては間違ってますけどね。冒険者でもない、しかも他国の人に助けてもらったわけですし」
「まあな。だが、たとえ国の騎士様だろうが、今回のようにはいかなかっただろうよ。ドラゴンってのは、それだけ危険な存在だからな」
「そうですね。幸い、連絡を送ったのは近隣の町のみで、国にはまだ報告していません。領主様には知られているかもしれませんが、わざわざ他国の騎士様に助けられた、とは言わないでしょう。表向きには、丸く収まりそうで何よりです」
「俺は別に言ってもいいと思うがな。カインさん、実は騎士じゃなく、剣聖かもしれないぞ? それなら問題はないだろう」
「問題はないですが、プライドは傷つきます。もっと冒険者のことを考えてください」
今回のことだが、ギルドマスターとしては国に報告し、褒賞を出させたいらしい。
一応、ギルドとして依頼したものではあるが、ドラゴンを追い払うことに対する対価としてはギルドの払える金額だと十分ではないと判断したようだ。
だから、より確実に褒美を与えられる国に頼みたいとのこと。
しかし、ギルドとしては、他国の騎士に助けられたというのは少々外聞が悪い。
もちろん、国に報告すれば褒賞は出るかもしれないが、ギルドとしては評価が下がり、下手をすればギルドマスターとしての任を解かれる可能性もある。
だから受付さんとしては、このことは内々に留め、褒賞はせいぜい領主から出させる程度で済ませたいようだ。
こちらとしては、国に報告されるのは普通に困る。
だって、ここは一応アルメリア王国であり、元々カインが所属していた国である。
まあ、元々所属していた国を助ける分には別に構わないかもしれないが、すでにカインはヘスティア王国の将軍として喧伝してしまっている。
カインのことを慕ってくれている人ならば戻ってきたことを喜んでくれるかもしれないが、そうでない人にとっては、カインの奴がまたのこのこと戻ってきているぞと考える可能性もある。
その可能性が高いのは軍部の上層部で、国に報告するとなれば耳に入る可能性は非常に高い。
褒賞を辞退すれば相手が動く頃にはすでに国を後にできるかもしれないが、立つ鳥跡を濁しまくるのもどうかと思うし、できることなら穏便に済ませたいのが本音である。
だから、できることなら、受付さんの意見が通ってほしいところだ。
というか、報酬はスターコアをすでにいただいているし、お金が欲しいわけでもないので普通に全部辞退しちゃってもいいよね。
宴会は勢いが凄かったから断り切れなかったけど、本来ならこれだって参加しなくてもいいくらいだったのだから。
「なんか、すっかり英雄視されちゃってるね」
「だな。悪い気はしないが、ちょっと居心地悪いよな」
「そうですね。アリスさんが称えられるというなら文句はないんですが、今はこいつですし」
「あ、あんな怖い思いしたんだから許してよ……」
みんな勧められるがままに料理やお酒を飲みながら話している。
俺に関してはミルクの入ったお皿を用意してもらえたからそれを飲んでいるけど、すっかり動物扱いで凄い不満だ。
いや、仕方ないんだけどさ。兎が酒飲むのもおかしいし。
「きゅっ」
「うん? わかってるよ。そんな酔うほど飲まないから安心しな」
一応釘は刺しておく。
みんな中の人は高校生だから、お酒は普通に禁止だった。だから、お酒の味なんてよくわからない。
でも、それはあくまで中の人の話であって、キャラとしてはそうでもない。
具体的に言うと、カインはかなり強い方らしい。ほとんど酔わず、言動もあまり怪しくならないようだ。
シリウスはちょっと弱くて、あんまり酔うと言動が怪しくなってくる。実際に見たことはないからどうなるかはわからないけど、あんまり飲みすぎるのはダメだと思う。
サクラは普通だ。強くもないし弱くもない。ただ、悪酔いはしそうな気がする。こちらも飲みすぎるのは不安だ。
で、俺ことアリスだけど、アリスはお酒はそれなりだ。先輩冒険者として飲む機会もそれなりにあると思うし、それで潰れちゃったら台無しだしと思ってそう言うイメージをしていた気がする。
若干の強い弱いはあるけど、お酒なんて飲みすぎたら体に悪いのは確かなんだし、この世界では堂々と飲めるからと言って調子に乗らない方がいいのは確かである。
まあ、いざとなれば【キュア・ディジーズ】で治せると思うけどね。
そんなことを考えながら、ぺろぺろとミルクを飲んでいた。
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