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〈はじまりの光-氷の王子と薔薇の令嬢-3.sideステイル〉

それから時は経ち、私は魔術学校に通っていた。

私は3年生、アヤナーラは1年生だった。

私はアヤナーラが入学したと聞き、毎日彼女を探した。


アヤナーラはいつもたくさんの友人に囲まれていた。

その中には彼女と幼馴染のヴィクトールという男がいた。


挨拶に行きたいのだが、いつもたくさんの友人に囲まれるため話しかけにくく、さらにはヴィクトールがずっとそばにいてアヤナーラの腰に触れている。親密そうに見えたため、私の胸はチリチリ焼けるようだった。


あの笑顔を私にだけ向けてほしい…そう思っていた。



私が近づいても私に気づく事なく、アヤナーラとヴィクトールが笑い合っている。

他にも友人たちがいたがステイルには2人しか目に入っていなかった。

なぜ私に気づかない…なぜあの男と笑い合っているのだ…と思った瞬間、ステイルの魔力が漏れ出し、周囲の気温が急激に下がり床がパキッと、凍りつく。


皆が、え?急に寒いですわ?と何が起きたかわからないようだった。

その時アヤナーラはようやくステイルに気づきステイルに駆け寄ってきた。


ああ、ようやく私に気づいてくれたと思ったステイルの魔力は落ち着き、周囲の温度も正常に戻った。


微笑みながら駆け寄って来たアヤナーラに平常心を装い挨拶をした。


その様子をヴィクトールは見逃さなかった。


数日後、またも私はアヤナーラを探しに来ていた。

友人たちと仲睦まじく話しているアヤナーラ。

しかしヴィクトールがまたアヤナーラの腰に手を当てていた。

さらにヴィクトールはアヤナーラの耳に顔を近づけ何かを耳打ちしていた。


それを見た瞬間、心の中にどす黒いものが渦巻き、急いでアヤナーラに近づこうとした。

…が、アヤナーラは私に気づかず教室へ戻ってしまった。

追いかけようとしたその時、ヴィクトールがそれを阻んできた。


「ステイル殿下、彼女は今、友人たちとの楽しい時間を過ごされております。婚約者とはいえ、彼女の自由を奪う事はおやめください。」と挑発的な笑みを浮かべる。


「いや。そもそも、ヴィクトール。お前がアヤナーラ嬢に馴れ馴れしすぎるのだ。アヤナーラ嬢の腰に触れるなどあってはならない!お前はアヤナーラ嬢に近づきすぎなのだっ!」と思わず声を荒げる。


ヴィクトールは、意味がわからないような顔をし、肩をすくめ「私はアヤナーラの幼馴染ですからね。私たちが共に過ごしてきた時間はとても長いのですよ。…それに殿下、そんなに怖い顔をされたらアヤナーラは逃げて行ってしまうのではないですかねぇ。」そう言って挑発した。


その時だった。

アヤナーラが教室から出て来て「どうされたのですか?」と私たちを交互に見る。


私が言葉に詰まっていると、ヴィクトールが「アヤナーラ、なんでもないよ」と腰に手を回し、教室に彼女を連れて帰ろうとする。

すると、「ヴィクトール!もうっ!そういう事はしないでって何度言ったらわかるのかしら?私たちは兄妹のように仲が良いけれど、周りの方々から勘違いされたら困るでしょうと何度言ったらわかるのかしら?」とアヤナーラが怒った。


それに対しヴィクトールは頭を掻きバツの悪そうな顔をしていた。


私は目を見開き、アヤナーラがヴィクトールに対して怒ったこと、そしてヴィクトールとアヤナーラに恋愛感情は無く、ただただ兄妹のように仲が良いだけなのだとわかると、とたんに氷のような心は溶けていった。


「申し訳ございません、ステイル殿下。またキツく叱っておきますので。」とアヤナーラは言う。

しゅん、としている今まで見たこともない表情を見て思わず「あはははは」と声を出して笑ってしまう。


そんな私を見て、アヤナーラは弾けたように目を見開き顔を赤くした。


ヴィクトールはステイルに近づき

「殿下、彼女にあんな顔をさせるのは貴方だけだと言う事がはっきりわかりました。貴方は合格です」と耳打ちし笑った。


彼は、私が彼女の隣に立つにふさわしい男か試していたのか…

まんまと乗せられてしまった…

ユリウスが言うように彼女のことになると私は余裕が無くなってしまうな…と少し反省した。


…まだ俯いているアヤナーラが可愛くて「では婚約者の私がこうするのは良いだろう?」と手を引っ張り腰に手を回す。


アヤナーラは驚いたように顔を上げ、さらに顔を真っ赤にさせニッコリと笑った。


たくさんの時を共に過ごしたヴィクトールさえも踏み込めない私だけの聖域。

私の腕の中で薔薇のように真っ赤になって微笑む彼女を、骨の髄まで愛おしいと思った。

誰にも渡さない。誰にも触れさせない。


彼女の未来も…心も。…否、彼女に流れている血の最後の一滴、その吐息の欠片までも、すべてを私の支配下に置かなければ済まなかった。



…その誓いが、やがて彼女を追い詰める歪な執着へと変わっていくことに気づくのは、彼女がその白い肌を蒼白に変え、眠りについた後のことだった…

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