〈はじまりの光-氷の王子と薔薇の令嬢-2.sideステイル〉
今日は年に一度の国王主催の貴族とその家族を招く立食パーティーの日だった。
いつもの茶会は成人した者のみなのだが、この日は幼い家族もみな参加する特別なパーティーなのだ。
それは私にとっても父、母に会える数少ない日だった。
なぜ幼い家族も参加するのかというと、大体が婚約者を幼い頃に決めるからだ。
その出会いの場でもあるのだ。
私は婚約者など父が決める事だと思っていたため貴族たちが挨拶に来ても気に留めることもなかった。
婚約者など興味もなかったため挨拶も面倒だと思い、隠れるように庭の隅に行った。
そこにはサヴォイア公爵家の令嬢がいた。
何をしているのかと見ていると紛れ込んだ蝶を逃がしてあげていた。
「蝶々さん、こちらは危ないですよ。ほらお花の方へお行き。」と逃がしながら微笑む。
その瞬間、私の世界は一変した。
なんと美しいのか…
あの美しくも可愛らしい笑顔を自分にも向けられたい。
モノクロームだった私の世界に、彼女が触れた蝶の色、その周りに咲いている薔薇の色、空の青が、暴力的なまでの鮮やかさで流れ込んできた。
彼女の婚約相手には、ロデオン公爵家の嫡男か、隣国の王子のもとに嫁ぐか、どちらかにほぼ決まっていたため、彼女もまた庭の隅にいたのだった。
だが、私はどうしても彼女を手に入れたいと思った。
私は国王の元へ急いで戻り
「父上、お願いがございます。アヤナーラ嬢を、私に与えてください。彼女以外の誰かが、私の隣に立つことも許せぬのです。」とお願いした。
国王はステイルが何かをお願いすることなど一切無かったため、少し驚きながらも考える。
サヴォイア家は非常に優秀で家柄も問題ない。
婚約者がほぼ決まっているような話は聞いていたが、決定で無いのなら…と思い公爵を呼ぶ。
サヴォイア公爵は娘を溺愛しており、隣国には会えなくなるため渡したくない、さらにほぼ決まっていたロデオン公爵家との関係もあまり良くなかったため、婚約を渋っていたのだ。
そんな時に、この国に留まれて、さらには将来の王妃という立場も手に入れられるのならば娘にはこの婚約の話が1番良いだろうと思い是非にと即決した。
その事はそのパーティーですぐに発表されることとなった。
私はとても嬉しくなり庭に咲いていた薔薇を摘んだ。
「…アヤナーラ嬢…、この薔薇を美しく可愛らしい君に捧げる」と片膝をつき、手渡す。
私は彼女に対して自然と笑顔を向けていた。
アヤナーラは顔を真っ赤にし戸惑いながらも「ありがとうございます、ステイル殿下」と笑顔で受け取った。
この瞬間、私は彼女を…この笑顔を一生守る、必ず幸せにしてみせると心の中で誓った。
私が7歳でアヤナーラが5歳の時の出来事だった。
登場人物
ヴィクトール…アヤナーラの幼馴染




