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〈夜会:銀の独占欲と薔薇の輝き〉

その夜、アヤナーラは深紅の薔薇を思わせるドレスを纏っていた。


ステイルの幽閉から解放されてから初めての大規模な夜会という名の公務。


彼女が会場に現れた瞬間、広間には溜息が漏れ、男たちの視線が一斉に彼女に吸い寄せられた。


ステイルは、彼女の横で「完璧な王子」として振る舞っていた。しかし、内心では、彼女の白い肩や、微笑むたびに揺れるイヤリングに群がる視線が、針のように自分の皮膚を指すのを感じていた。


ステイルがわずかに公爵と挨拶を交わしている隙に、

「アヤナーラ王子妃。なんと美しいのでしょう。どうか、ご挨拶だけでも…」と片膝をつき手を取ろうとする他国の若い貴族が目に入る。


「あなたのその瞳は、まるで伝説の宝石のようだ。……もし許されるなら、もっと近くで拝見したい」

男の唇が彼女の手に触れそうになった、その瞬間。

会場の温度が、物理的に数度低くなったかのような冷気が走る。


「私の妻に、何か用かな?」


低く、地を這うような声。

アヤナーラの腰を抱き寄せ、強引に自分の方に引き寄せたのは、ステイルだった。

彼は男の手を冷ややかに払いのけると、氷のような眼差しで相手を射抜く。かつての「感情のない冷徹さ」ではない。そこにあるのは、獲物を狙う猛獣のような、剥き出しの敵意だ。


「ステイル…様?」


驚いたアヤナーラが彼を見上げると、ステイルの瞳には余裕のない「独占欲」が渦巻いていた。


「彼女が微笑みを向ける相手は、私だけで足りている。下がりなさい。」

ステイルの放つ圧倒的な威圧感に、男は顔を青くして去っていった。


周囲がざわつく中、ステイルはアヤナーラの耳元に顔を寄せ、周囲に聞こえないほどの低い掠れた声で囁く。


「……アヤナーラ。もう限界だ…。今すぐここを抜け出して、君を閉じ込めてしまいたい。」


「そんな……。まだお仕事中ですよ?それに今来たばかりですよ?」


困ったように微笑む彼女の腰を、ステイルはさらに強く抱きしめた。


「仕事よりも、君が他の男の目に触れることの方が耐え難い。……私の心は、君が思うよりずっと狭くて、醜いのだ」


そう言って彼は、アヤナーラの首筋に鼻先を埋めるようにして、自分の「所有権」を見せつけるように周囲を睨んだ。その姿は、もはや「氷の王子」ではなく、一人の愛に狂った男そのものだった。


近くでその様子を見ていたルカヌスが、「やれやれ、兄上の独占欲も病気だね」と呆れるようにワインを煽り、隣にいたユリウスとエミリーはうんうんと何度も頷いていたが、ステイルの耳にはもう、アヤナーラの鼓動以外の音は届いていなかった。



その光景を見ていた周りの男たちは決してアヤナーラに近づけないと瞬時に理解し、女性たちは(まぁ、アヤナーラ様はとても愛されていらっしゃるのね。素敵だわ)と羨望の眼差しで見ていた。

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