〈宿命の謁見.2〉
重厚な扉が開き、ゆっくりと歩み寄る男。
アースパーニャ公国第二王子
アルベルト・アースパーニャ。
その姿を見た瞬間ステイルの瞳は憎悪で真っ赤に染まった。
魔道具で見た、姿は多少違うがあの忌々しい男が目の前にいるのだ。
「ステイル殿下、謁見の機会をいただき感謝致します。
…そして改めてアヤナーラ王子妃への拝謁を願いたい」
アルベルトの声は低く、しかし驚くほど落ち着き、響き渡った。
その毅然とした態度がますますステイルの劣等感と嫉妬心を煽る。
「どの口がそれを言う…」
ステイルは椅子の肘掛けを粉砕せんばかりの力で握り締め、低く唸った…
「隣国の王子ともあろうお方が、我が国の王子妃…いや、我が妻に私的な面会を求めるとは無礼にも程がある! 一体、何者なのだ…!何を求めてここへ来た!」
アルベルトはステイルからのどす黒い殺気を真っ向から受け止め、微動だにせず答えた。
白竜に比べればこんな殺気など大したことはなかった。
「私は、彼女を救いに来た。…ステイル殿下、あなたが彼女の記憶を覗いた時…彼女の痛みが私にも伝わって来た。彼女が私を呼んだのだ。……最愛の人の聖域を土足で踏み荒らし彼女の心を破壊しようとし、檻の中に閉じ込めるなど…これのどこが愛なのか?」
「…っ黙れっ!」
ついにステイルは腰に刺している剣を抜こうとしジャキッ…と金属音が鳴り響く。
「お前が…彰人か。アヤの記憶に寄生し、死してなお彼女を縛り付ける亡霊め! 見たぞ!お前と彼女が幸せそうに笑っている姿を!……だか、今は違う!彼女は私のものだ!彼女の中には私の血が入っている!彼女の指先、彼女の髪の毛…全てが私のものだ!お前を指一本触れさせはしない!」
「亡霊…か…」と俯くが
「いや、私はまた命を得てこうして生きている。
そして、彼女との約束を果たすためにここに居るのだ。…ステイル殿下、彼女はあなたの所有物ではない。1人の人間だ。あなたに彼女を縛り付けることなど出来ないのだ。…彼女が流した涙の理由をあなたは正しく理解出来るのか?」と、ステイルをまっすぐに見つめた。
「…黙れっ!お前に何がわかる!私がどれほどまでに彼女を………」そして彼が剣を半分抜いたその時、国王が厳かに声を上げた。
「ステイル!そこまでだ!……客人の前で醜態を晒すな!」
王の冷徹な一言により、ステイルは歯を食いしばり剣を収めた。
なぜここに王がいる…と目を見開きながら。
しかし、彼の目はアルベルトを殺すと誓ったままだった。
一方、アルベルトは
まだ…きっと彼女を救える…まだ遅くはないはずだ…と僅かに期待を抱く。
ーーーその時だった。
重厚な扉が開いたのは。
そこに現れたのはアヤナーラだった。
ステイルは絶対に会わせたくなかったアルベルトに会ってしまったアヤナーラを見てさらに殺気立つ。
一方、アルベルトは、先程すれ違った時に目が合ったため、自分に会いに来たのだと思っていた。




