〈側近たちの密談〉
王城の影で、ユリウスとエミリーは密かに顔を合わせていた。
その表情はかつてないほど険しい。
「……ユリウス様、殿下のアヤナーラ様への執着はもう、常軌を逸しています。お嬢様を外に出さないだけでなく、眠っている間さえ、魔道具で彼女の夢を監視しその夢を消そうとなさっている…」
エミリーの声は震えていた。アヤナーラを心から慕う彼女にとって、ステイルの愛は、もはや彼女を絞め殺す荊のように見えていた。
「わかっている。殿下はアヤナーラ様の前世の記憶……いや、『アキト』という男の影に怯えていらっしゃる。アヤナーラ様が、いつか自分の知らない『誰か』のもとへ去ってしまうのではないかと…」と悩ましげに話す。
「ですが、お嬢様は幼き頃から殿下をとてもお慕いしておられたのですよ?お嬢様は殿下しか見ておられなかった…なのに、どうしてこんな仕打ちを…」と、彼女はついに泣き出してしまう。
ユリウスはため息をつき、冷え切った城の壁を見つめた。
「私が何度諌めても、殿下は聞く耳を持たぬ。それどころか、私のことも『彼女を盗み見る不届者』として排除しかねないのだ」
「でも…このままではお嬢様の心が壊れてしまいます…」
二人の間に、重苦しい沈黙が流れる。ステイルを公私ともに支えてきたユリウスだからこそ、彼の孤独も、その反動である狂気も理解できてしまうのが、皮肉でならなかった。




