〈暴かれた聖域 覗く王子-宣戦布告〉
アヤが意識を手放してからすぐに私の意識がアヤの脳内に繋がった。
それを毎日、アヤナーラが寝静まってから繰り返していた。
そこには見慣れぬ風景、空を見上げれば翼をつけた鉄の塊が飛んでいて周りにはたくさんの四角い塔、魔物もおらず魔法もないが平和な世界がそこには広がっていた。
そして、その中心で…
ドレスではない見慣れない服を着て鏡に映ったのはアヤナーラ…いや綾乃の姿だった。
「付き合ってほしい、俺が一生守るから、お願い…」と綾乃に告げる男。
真っ白なドレスに身を包みその男と幸せそうに微笑む綾乃。
その男に幸せそうに抱かれる綾乃。
その男との間に出来た子供を抱く綾乃。
「ママー」と抱きつく子どもを優しく抱きしめる綾乃。
自分との愛とは全てが違った…
このようなことが出来るはずがない。
どうしてこの男は綾乃をこうも自由にさせているのだ。
誰にも取られたくない、誰にも触れさせたくないと思わないのだろうか。
自分には絶対に出来ない純粋な愛の形をそこで見た。
時は経ち綾乃は病になっていた。
その姿を見るだけで胸が張り裂けそうになる。
だが、亡くなる直前…綾乃が聞き取れなかった彰人が放った言葉をステイルは聞き逃さなかった…
「綾乃…俺…俺は生まれ変わったら絶対に綾乃を見つけるからっ!絶対にまた一緒になろう!今度こそ君を守り抜く!」
ステイルは絶望した…
夢の中だけだと思っていた男が…自分には出来なかった純粋な愛を注げるこの男が…この世界にいるかもしれないのだ。
決してアヤに会わせてはならない、私が見つけヤツを殺す。
その瞬間、ステイルの意識は戻った。
意識が戻ったステイルは激しい目眩に襲われベッドに手をついた。
目の前には魔道具を外された青ざめたアヤが一筋の涙を流していた。
「…見つけるだと?今度こそ守り抜くだと?絶対にさせない!こちらから見つけて殺してやる」
ステイルはどす黒く渦巻く感情を露わにした。
「…させない…、アヤに指一本触れさせはしない…」
そう言って自分のものだと誇示するようにアヤナーラの首に口づけをし痕を残す。
またあんな慈愛に満ちた顔をあいつに向けさせるなどあってたまるか…。
「ユリウス!今すぐに国中、そして隣国、周辺諸国、すべての貴族と騎士の情報を洗え!近頃『記憶を取り戻した、女性を探している』などの噂でもいい!そんな者がいたら全てリストアップし報告しろ!もしそれが奴だった場合、私がこの手で処分する」
「殿下っ!それは外交問題に発展します!戦争が起こります!多くの国民が死にます!アヤナーラ様はそんなこと望んでおりません!」必死にステイルを止めるユリウスだったが聞き入れることは無かった。




