〈氷と薔薇が溶け合う刻〉
私は順調に回復していき、半年後、皆に祝福され結婚式が執り行われた。
その結婚式にはルカヌスも出席してくれた。
久しぶりにルカヌスに会え、祝福してもらえたことに幸せを感じていた。
ただ、ルカヌスは私の顔を見るなり「アヤナーラ、大丈夫?ちょっと痩せたんじゃない?窶れた顔してる…」と心配そうに顔を覗く。
記憶を思い出したことやステイルの独占欲によって彼が変わってしまっていることをルカヌスに伝えたくなってしまった…
でも「大丈夫ですよ、…ただ緊張してしまって」と笑顔で返す。
「…うん、わかった。でもアヤナーラ。何かあったらすぐに言うんだよ。」と耳打ちしてくれた。
ルカヌスは私の変化に気付いてくれてるのね。と思うだけで心が少し軽くなった。
結婚式という華やかな儀式を終えた日の夜、広大な王城の寝室。重い扉が閉まった瞬間だった。
ようやく二人きりになった室内。
ステイルは上着を放り投げ、アヤナーラを逃さないように後ろから抱きしめた。
首筋に落とされる熱い吐息に、彼女の肩が小さく震える。
「ようやく、私だけのものだ。指先一つ、誰にも触れさせない。……いいか、君のすべてを、私の色で染め上げたいんだ。」
そう言ってアヤナーラを押し倒す。
白いシーツの上に、アヤナーラの長い金色の髪…そして真っ赤な薔薇のような夜着が乱れる。
その上に重なる彼の銀髪は、月の光を浴びて冷ややかに輝いているが、触れる肌は驚くほど熱い。
「怖いか…?だが、もう離さない。…絶対に死ぬまで離してやらない。」
気遣うような優しい声とは裏腹に、彼女の腕を組み伏せる彼の手には、隠しきれない独占欲がこもっていた。
「ああ、アヤナーラ、私を狂わせるのは君だけだ…」
氷の王子と呼ばれた面影はどこにもない。乱れた呼吸、潤んだ瞳、そしてせがむような熱い口づけ。
彼女が彼を求めて背中に手を回した瞬間、ステイルの中で張り詰めていた理性の糸がぷつりと切れた。
重なり合う鼓動は、どちらのものか判別出来ないほど速く、激しく。
夜が更けるほどに、二人の情熱は冷めるどころか、燃え盛る炎のように深く溶け合っていった。
〈side-ステイル〉
重い扉が閉まった瞬間、私を縛り付けていた「完璧な王子」という呪縛が音を立てて崩れ去った。
目の前には、白銀の月光に照らされたアヤナーラ。そう、私の妻。
幼いあの日、薔薇を捧げた時から、私の世界は彼女の色で塗り替えられてしまった。
ヴィクトールが彼女の腰に触れるたび、内側から溢れ出す黒い独占欲を殺すのに、どれほどの魔力を使ったか。
「……アヤナーラ」
掠れた声は、自分でも驚くほど熱を帯びていた。
彼女を背後から抱きしめると、薔薇の香りが鼻をくすぐる。
細い肩がビクッと跳ねるのが愛おしくて、わざと耳元に熱い吐息を吹きかけた。
「ようやく、私だけのものだ。指先一つ、誰にも触れさせない。……いいか、君のすべてを、私の色で染め上げたいんだ。」
ベッドに押し倒すと、彼女の白い肌に私の銀髪が散らばる。
理性がぷつりと切れた。
氷の王子?冷徹な王子?
いや…今の私は、彼女という熱に浮かされた、ただの飢えた男に過ぎない。
〈side-アヤナーラ〉
「ステイル….様?」
見上げる彼の瞳を見て、私は息を呑んだ。
いつも冷静で、どんな時も優雅な微笑みを絶やさなかった婚約者。
けれど、婚約者から夫になった今、私を見下ろす銀色の瞳には、見たこともないほど激しく、暗い情熱が渦巻いている。
重ねられた彼の手は、火がついたように熱い。
「壊れ物を扱うように」と、かつて教えられたはずの彼の手つきは、今や強引で、私の拒む隙間を奪っていく。
「怖いか…?だが、もう離さない。…絶対に死ぬまで離してやらない。」
耳元で囁かれる独占欲に満ちた言葉に、私の心は甘く痺れた。
ステイル様の中に、これほどまでに私を求める「熱」が隠されていたなんて。
彼が私の名を呼ぶたびに、熱い振動が体に伝わり、溶けていく。
「…ステイル様…」と呟き、背中に回した私の手に力がこもると、彼は耐え切れないといった様子で、深い口付けを落としてきた。
カーテンの隙間から差し込む月明かりの下。
完璧な王子の仮面をかなぐり捨て、なりふり構わず私を愛そうとする姿に、私はすべてを委ねる覚悟を決めた。




