表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

93/94

第四章 第二十二話 270億円の、猫神様

「とりあえず、1億円だけ残して残りは全部、株式に全ぶっぱにゃ!」


 みかんの下した結論は、極めて合理的なものであった。

 自分がこれから生み出す価値を考慮し、藤花コーポレーションの株価が上がることを前提として、ストックオプションを可能な限り行使する。

 現時点で269億円分の、藤花コーポレーション株式を保有することになったのだ。


 藤花コーポレーションの連結総資産は、300兆円を超える。

 だが、資本金として登記されている金額は、3兆円。

 その巨大企業の株式を269億円分も確保するというのだから、みかんの報酬が「とんでもない金額」であることは、容易に理解できるだろう。


 その結果、みかんが保有する株式は、藤花コーポレーションの総議決権の0.9%弱に相当することになった。

 まだ、株主提案権に必要な総議決権の1%には足りていない。

 だが、極めてそれに近い値であり、成果によってはさらにストックオプションが追加されるだろう。

 どれほどの影響力になるのか、末恐ろしい。


「まあ、そうするわよね。私でも同じやり方を取ると思うから」


 舞先生の対応は、あっけらかんとしたものであった。

 1億円あれば、当面お金の心配をすることはない。

 そして、藤花コーポレーションの株価の上昇は確定的。

 270億円規模の資産が、これからどれだけ膨らむのか、予測することすら困難なくらいだ。


「将来のマツサカ牛の、予約をしておくにゃ」


 そういう単位の問題ではない。

 一人の高校生が持つ金額としては、あまりにも大きすぎる。

 しかも、これから確実に増加するのだから……末恐ろしい。


「みかん~。少しくらいのおこぼれがあっても、いいんじゃないか~?」


 明が、つぶやく。

 その気持ちは、嫌というほど分かる。


「だったら……この特区に、バーベキューができる場所はあるのかにゃ?」

「もちろん、設置してあるわよ。今度の休みに、皆でバーベキュー。栄養管理士も、その時に紹介するわね」


 それが良い落としどころであろう。

 ただし、具材の豪華さはシャレになっていないが。


「よっしゃ! 一生分の贅沢をしておくぜ……ぐえっ」

「品位を疑うような発言は、控えてください」


 明の首輪についていたリードを、漣が引っ張って発言を遮る。

 今のところ、みかんの方は使用されていないが……どうやら自分の運命が、漣に握られていることをみかんも再認識したようだ。

 興奮がおさまり、何よりである。


「最高級の食材を用意するから。楽しみにしていてね」

「うにゃあ……マツサカ牛、純粋黒豚、ナゴヤコーチンでバーベキュー……最高にゃ~!」


 みかんの資産から考えれば、この程度の豪遊は「おあそび」で済むだろう。


「奏や結希、久郎も参加でいいわよね?」


 舞先生の問いに、全員頷いた。


「それじゃあ、今日はこれで解散ということで。みかん、今日泊まる場所は決まった?」

「前の部屋に残されていた資料を、まとめて置いてある部屋がいいにゃ」


 いかにも、みかんらしい選択であった。


 明、漣、みかん、奏と別れ、俺たちは家路につく。

 特区からタクシーが出ているため、それを利用することになった。

 料金は舞先生が払うとのことなので、負担なく利用できるのは助かる。


「なんだか、凄いことになったね……2週間後の、2年生との戦い。何とかなりそうな気がしてきた!」


 結希が、興奮した声で話しかける。


「そうだな。少なくとも、完敗はあり得ないだろう。第4世代には、それだけの力がある」


 しかも、現在開発中の装備も可能な限り、組み込まれる予定らしい。

 かなり良い勝負になるのではないかというのが、俺の予測だ。


「まあ、その前に制服を取りに行き、モーションキャプチャーを行う必要があるがな」

「あ! 忘れてた!」


 来週の月曜日に、制服が完成するようである。

 その時にまた、皆で一緒に校外に行くことになるだろう。


「ついでに、中間試験も迫っている。勉強の方も、しっかり詰め込んでいくぞ」

「うう……分かった。頑張る」


 結希の興奮は、現実の前に完全に消え去ったようだ。

 とはいえ、制服を取りに行くのも、中間試験が迫っているのも事実である。


「大丈夫だ。俺が全力でサポートする。奏を含めて、な」

「うん。頼りにしているから」


 そろそろ、結希の家にたどり着く。

 そこで一緒に降り、俺は残りの道を歩いて家に帰ることにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ