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第四章 第二十一話 猫神様の、報酬目録

「マツサカ牛と、オオマのマグロはあるかにゃ~?」


 みかんが、冊子を開く。

 そこには、信じられないようなことが記載されていた。


 まず、技術面での功績欄。


 精神安定効果のあるお守りの開発。

 毒電波防御用の塗料の開発。

 持ち歩き可能、かつ低負荷の脳波検出システムの開発。

 反発力を利用した、攻性防壁システムの開発。

 データベースの最適化、及び新型セキュリティシステムの開発。

 オリハルコン(仮称)の劣化コピー素材、オリジナルコンの開発。


 開発中のものとして、次の項目が並んでいる。


 第4世代機体開発。

 防御用装備『クローク』。

 脳波感応式防御装置。

 フィールド型バリア装置。

 ピンポイントディフェンサー。

 オリハルコン(仮称)の解析による、新型素材二種類。


「これ、1週間の開発実績と言われて信じる人、いると思う?」


 舞先生の言葉に、全員黙り込む。

 1週間どころか、1年でこの実績だったとしても「桁違い」としか言いようがない。


「まだ続くわよ。ページをめくってちょうだい」


 次に、組織面での功績欄。


 脳波検出システムにより、研究者3人の命を救う。

 精神科病棟の患者5人を、退院可能な状態にする。

 悪事を行っていた研究者を一掃し、適性に応じた配置へ再編。

 研究者全員の大幅な能力向上。


 列記されている事項だけでも、凄まじさが伝わってくる。


「これ、正直、全額を現金で支払うのは無理よ。藤花コーポレーションの資金繰りが、破綻するわ」


 全く同感だ。

 この成果に対して、安すぎると判断されない適正な金額を支払う。

 それだけで、資金がショートしかねない。


「だから、現物支給がメインになるわ」


 次のページに、現物支給を中心とした報酬一覧が掲載されていた。


 100万円分の、グルメカード。

 サワヤカの無料招待券、10冊(10枚組)。


 マツサカ牛、純粋黒豚、ナゴヤコーチン、オオマのマグロ、桜エビ、しらすの詰め合わせ。

 なお、専属の栄養管理士(調理師免許取得)による調理サービス付き。


 ストックオプション評価額として、10億。

 そして、現金報酬として10億。


「太っ腹にゃ! 食べたかったもののフルコースにゃ!」


 いや、それでも安すぎる。

 十億円単位の報酬では、買いたたくにはあまりにも功績が大きすぎると感じるのだが……。


「あ、二つの『10億』のところは、あえて単位を入れていないわよ。何にする?」


 舞先生の発言は、衝撃的なものであった。

 だが、納得できる。

 10億「円」では、明らかに搾取になってしまうからだ。


「それなら……ディルハムがいいにゃ!」


 恐らく、UAEディルハムのことであろう。


 藤花コーポレーションの功績により、円高が進んでいるため、かなり外貨の価値は下がっている。

 何しろ、1ドルが100円になっているのだ。

 いかに藤花コーポレーションが、突出した企業であるのかが分かるだろう。


 そして、10億ディルハム。

 これは日本円に換算して、およそ270億円。

 ストックオプションが同額なので、単純計算でさらに倍。

 結果、日本円に換算しておよそ540億円規模となる。


 現時点の成果に対する金額としては、少し大きすぎるかもしれない。

 だが、これから作られる技術を含めた対価としてならば、十分支払う価値があるものだ。


「あと、現時点でのレートに基づく形で、日本円で支払ってほしいにゃ。ストックオプションの評価額と行使条件も、同じレートを前提に固定してほしいにゃ」


 ちょっと、待て。

 この言葉には、単に「今欲しい」以上の意味が込められている。


 みかんが開発した技術や、組織改革の結果、ますます円高の動きは進むだろう。

 そのため、現時点のレートで確定することで、将来の円換算額の目減りを防ぐ効果がある。


「みかん、どこでその考え方を学んだ?」

「トウキョウの古本屋で買った、経済学の本にゃ」


 たった一冊の本を読んだだけで、これほどまでの応用力。

 どうやら今までは、単に「インプットが足りなかった」だけのようだ。

 藤花コーポレーションの特区で保護され、さまざまなことを学ぶことで、さらに成長速度が高まる可能性がある。


「分かった。その旨を、兄に伝えるわね」


 舞先生は、何事もなかったかのように答え、スマートフォンを取り出した。

 恐らくこの結果は「予想の範囲内」であったのだろう。


「お金の単位が大きすぎて、使い道に困るにゃ。どうしようかにゃ~?」


 猫神様は、能天気に呟いていた。

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