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第四章 第十九話 サワヤカのハンバーグ、及び首輪贈呈

「この紙の上に、鉄板をお持ちします。油が跳ねますので、紙を持ち上げてください」


 テーブルの上に、薄手のチラシのようなものが配られる。

 サワヤカの特徴は、目の前で店員が仕上げてくれるところも大きい。

 視覚と聴覚、そして香りを存分に楽しめるのだ。


「お待たせしました。どちらのお客様から……」

「にゃあ……お腹が空いたにゃ。待ちきれないにゃ……」


 全員、苦笑する。

 まずはみかんに食べさせるのが、最善であろう。


「確か、こうだったにゃ」


 ハンバーグの載った鉄板がテーブルの上に置かれ、みかんが紙を胸元まで引き上げる。

 そして店員が専用のナイフを使い、ハンバーグが両断された。


「それでは、行きます!」


 切られた面が、鉄板に押し付けられる。

 ジューッという音が、たまらない。


「完成です。ごゆっくりどうぞ」


 店員が去っていく。

 ハンバーグは、まだ真ん中の部分に赤みが残されていた。


「これ、大丈夫なのでしょうか?」


 漣が少し、不安げな表情を見せる。


「問題ない。提供前にチェックして、安全基準をクリアしたものだけが調理に回されているからだ」


 漣の不安を解消するために、俺は答えた。

 ちなみに輸送時間が長引くほど、どうしても安全基準を満たさない可能性が高まる。

 それが、シズオカ県内のみに『サワヤカ』の店舗が限定されている理由だ。


「早速……熱いにゃ!」

「馬鹿ネコ! いきなり口に入れるか?!」


 慌てて水を飲む、みかん。

 明が呆れた表情で、それを眺めていた。


「あ、飲み物も注文していいわよ。ここのグラス、変わった形をしているから」


 俺たちは店員に、ソフトドリンクを注文する。

 そして、次に運ばれてきたハンバーグとほぼ同時に、ドリンクが提供された。

 そのハンバーグは、希望により明が食べることになった。


「これ、ジョッキの形をしているにゃ!」


 ほとんどのドリンクは、ジョッキ型のグラスで提供されている。

 舞先生とメアが注文したアイスコーヒーは、銅製のマグカップで提供されていた。


「それでは、一緒に乾杯しましょう!」


 店員の掛け声に合わせて、俺たちは乾杯する。

 グラスやマグカップを打ち合わせる音が、鳴り響いた。


「テンション、上がるにゃ~!」


 ようやく、食べごろの温度になったようだ。

 みかんが玉ねぎソースのハンバーグを、もう一度口に運ぶ。


「美味しいにゃ! 火が通りすぎていなくて、柔らかくて……最高にゃ!」

「確かに、これはうめえ!」


 そうだろう。

 この美味しさは、唯一無二と断言できる。


「少し、遊んでみました」


 漣はソースを、二種類用意してもらったようだ。

 一般的には、玉ねぎソースが「王道」とされている。

 だが、デミグラスソースの美味しさもまた、否定できない。

 両方を一度に楽しむというのは、合理的な判断だろう。


「ずりい!」

「ずるいにゃ! 次はデミグラスソースにゃ!」


 二匹の獣が、叫び声をあげる。

 もしプレオープンでなかったら、迷惑行為で出禁になりかねないだろう。


「漣、大人しくさせて。しっかり捕獲して、しつけた方が良さそうだから」


 メアが、恐ろしいことを口にする。

 とはいえ、気持ちは分からなくもない。


「分かりました。すぐに首輪をつけて、これ以上騒がないようにしておきます」


 既に二人分の首輪が、用意されていた。

 恐らく、コスプレショップで購入したものであろう。

 Needle&Scissorsのクオリティーには、程遠い。

 とはいえ、短時間であれば十分拘束できるだろう。


「きちんとイヌ用と、ネコ用を準備いたしました」

「賢明ね。結希、指輪の交換の前に、まずこちらで輪をつける練習をしておく?」


 嫌すぎる、予行演習だ。

 結希は奏とともに、首を横に振った。


「じゃあ、久郎と舞先生。はい。」


 イヌ用の首輪を、手渡される。

 だが、さすがにそういう経験には乏しいため、どうやって人に装着させればよいのか、分からない。


「おもちゃだから、マジックテープになっている」


 メアの言葉に従い、よく見てみると、確かにそういう作りになっていた。

 これならば、何とかなりそうだ。


「おい、よせ。止めろ。誰も止めないのか?!」


 明が、後ずさる。

 しかし、誰一人止めようとしない。


 俺は明に、首輪を装着させる。

 もう一方では、きっちり首輪をはめられた猫神様が誕生していた。

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