表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

88/94

第四章 第十七話 猫神様の恨みと、研究所が築く防壁

 元高級住宅、現神殿を後にして、俺たちは先に進んでいく。

 道路沿いの建物から、研究者たちのやり取りが聞こえてきた。


「この塗料、これがもう少し前に開発されていれば……」

「悔しいだろうが、前を向け! 俺たちは今、未来を作っているんだ!」


 もはや、隣にいる猫が関わっているのは確定であろう。

 直接聞くほうが、早そうだ。


「今度はどんな塗料を開発したんだ? 正直に答えろ」

「ごく普通の、精神防御用の塗料にゃ。漣のハチマキの、親戚みたいなものにゃ」


 漣が、ハチマキを取り出す。

 確かこれは、クマサカが使っている毒電波に対し、強い抵抗力があると聞いていたが……。


「ヘルメットと、二重で防御するにゃ。理論上は、24時間くらいならばクマサカの毒電波を浴び続けていても、問題なくなるにゃ」

「それ、聞いていないわよ?!」

「今言ったにゃ」


 ちょっと、待て。

 冗談抜きで、カントウ圏における戦闘そのものが、変わってくる。


「猫の恨みは、深いにゃ。ピチ子のかたきは、確実に討つにゃ!」

「ピチ子?」


 急に、可愛らしい単語が出てきた。

 結希と共に、俺は首をかしげる。


「みかんの親友だった、四ツ谷(よつや)桃香(ももか)ってやつだ。みかんと同じく技術に長けていて、果物コンビって呼ばれていた」


 いた。

 その一言で、運命を察してしまった。


「最後に見たのは、(さら)し台にかけられて、うなだれている姿でした。恐らく、もう……」


 漣が、悲しげな表情を見せる。

 恐らくみかんと、仲が良かったのだろう。


「ピチ子って呼ぶな! って、何度も言われていたよな」

「ピチ子は、ピチ子にゃ。他の呼び方に変える気はないにゃ」


 明と漣の発言は、全て過去形だった。

 それはカントウ圏の現状を、物語っていた。


「クロークの射出機構、調子はどうだ?」

「どうしても、衝撃で腕にダメージを受けてしまいます。このままでは……」


 さらに、別の建物からも声が聞こえてくる。


「ちょっと、行ってくるにゃ」


 みかんが、その建物の入り口にカードをかざす。

 あっさり、扉は開いた。


「特別製のカードよ。みかん専用で、フリーパス。ただし、居住区の私室は対象外にしているから、安心して」


 藤花コーポレーション、どうやら本気でみかんに全リソースを注いでいるようだ。


「発想と搭載する場所は、悪くないにゃ。単純にセンサーを追加して、対象が一定距離まで接近したら、自動で発動する形にすればいいにゃ」

「「それだ!」」


 どうやらこの『クローク』とやらも、みかんが指示して作っているようである。

 もはや、驚きを通り越して呆れるしかない。


「みかん~!! 他の人に研究を委託する前に、報告するよう指示したでしょう~!!」


 舞先生は、相当怒っているようだ。

 会社の責任者として、当然のことだろう。


「委託していないにゃ。落書きから、勝手に作り始めたにゃ!」

「「落書きなんて、とんでもない!!」」


 どうやらこの二人も、猫神様の信者らしい。


「その落書きとやら、見せてもらえるかしら?」


 図面を受け取る、舞。

 そこには新型防御装置の構想が、ぎっしりと書き連ねられていた。


「使い捨てにすることによる、コスト削減。車のエアバッグを応用した、展開機構……」

「落書きにゃ。フィールド型バリア装置や、ピンポイントディフェンサーに比べたら、おもちゃのようなものにゃ」


 理系に疎い俺でも、断言できる。

 断じて、おもちゃではない。


「それ以前に、フィールド型バリア装置? ピンポイントディフェンサー? 確かに、報告書にはあったけれども……みかん、無理しすぎていない?」

「授業中、ずっと眠っているにゃ。それにお守りのおかげで、睡眠の質は最高にゃ」


 確かに、理論上は納得できる。

 だが、舞が心配するのは当然のことだ。

 この異常な開発ペースは、みかん一人が生み出している。

 そして、代替できる存在はいない。


「この特区の中心部に、居住区を置く必要性が分かったでしょう?」


 普通、居住区は研究施設から離れた場所に設けられる。

 だが、みかんを守るためには「防壁」が必要だ。

 各研究所に、センサーなどの装置を張り巡らせ、全体で住人を守る。

 そのために作られたのが、この『特区』であった。


「さて。ようやく居住区についたわね。どの建物がいいか、検討してちょうだい」


 そこには、凄まじい光景が広がっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ