第四章 第六話 検証よりも、甘いもの
「さて、そろそろ明が戻ってくるころかしら?」
舞先生の言葉に合わせたわけでは、ないだろう。
だがそのタイミングで、明が両腕を天使2体に抱えられて、空から降りてきた。
顔色は、かなり悪い。
「強制チュートリアルは、最後に試験があるからにゃ……」
みかんが呟く。
散々苦労して、何とか突破したのだろう。
「さて、問題。アタッカーがパーティーにおいて、もっとも気をつけなければならないことは?」
「攻撃しすぎて、ヘイトを自分に集中させないこと……分かっているって!」
舞先生の質問に、明が苦々しい顔で答える。
どうやら一通りの内容は、頭に入ったようだ。
「明が装備を選んだら、少しだけ散策しようと思っているのだけれども……いいかしら?」
「賛成! どちらかといえば、狩りよりも色々なスポットを観光したい!」
舞先生の問いに、結希が答える。
俺も、どちらかといえばそういう気分だ。
まだ明、漣、メアはレベルが低いため、適した狩場を探すのが難しい。
加えて「パワーレベリング」になってしまい、経験値効率が下がる可能性もあるのだ。
だったら、思いっきり遊ぶ方が良いだろう。
「となると……ざっとコースを組んでみた。どう?」
ニカが、俺たちにコースを提示する。
なかなかに、面白そうだ。
「それならば、ニカに任せましょう。ミステリーツアーみたいで、ワクワクするから」
舞先生も、乗り気のようである。
ニカの案が、そのまま採用されることになった。
まず向かったのは、冒険者ギルド。
食堂が併設されており、ここでミッションを受けることができる。
「私たちは、あまり利用していないけど」
イベント時はともかく、俺たちは比較的自由に冒険している。
ここで受けられるミッションは、少々「お使い」に近い部分があるため、あまり乗り気になれない。
とはいえ、たまにモンスターの素材で要らないものを処分するために、買い取りカウンターに並ぶことはあるのだが。
「併設されている食堂は、質より量という感じにゃ。そのあたりも、イメージ通りにゃ」
みかんが、補足説明を行う。
そのため、冒険者ギルドはもっぱら「買取専用」として用いている。
「次は……ポータルに行く」
ポータルというのは、大陸間、あるいは大陸の重要地点間を繋ぐゲートのことである。
これを利用することで、通常の移動よりも圧倒的に早く、目的地に着くことができるのだ。
ただし、利用料金が多少かかるのは、公共交通機関と同様である。
「目的地は……ここにしよう。スイートキングダムで」
ニカが受付係にお金を渡し、行き先を伝える。
パーティーごとに転移するため、団体割引が適用されるようだ。
「転移……少し、怖いです」
「大丈夫だよ。もし望むのなら、手をつなぐ?」
奏が、初めての体験に少し怯えている。
それを結希が、カバーしていた。
「この甘さ、素材屋に砂糖として売りに行きたいにゃ……VRMMOに出会いを求めるのは、間違っているのかにゃ?」
「確実に、間違いだと思うぞ。それにもし、ここで仲が良くなったとしても、現実での食事を見られたら一発アウトだ」
明がみかんに、忠告する。
確かにあの量は、受け入れられる方が少数派だろう。
「じゃあ、行くよ~!」
ニカの言葉が放たれた直後に、魔法陣が起動し、俺たちは転移した。
「ほら、怖くないでしょう?」
「はい。一回経験すれば、次からは大丈夫そうです」
甘酸っぱい会話が、後ろで繰り広げられている。
「壁殴り代行業者は、どこか……ふぎゃ!!」
「代わりに、お前の頭を殴っておいたぞ。感謝しておけ」
みかんと明の関係も、いつも通りである。
「みかんの『紙一重』、パッシブスキルのようね。古いネタまで網羅しているのを、凄いというべきか、呆れるべきか……」
メアが、ため息をつく。
彼女は何度もループしている。
そんな舞先生の説明が、頭をよぎる。
恐らくみかんについても、熟知しているのだろう。
「それよりも、まずはこの光景。凄いと思わない?」
ニカが、少し誇らしげに言う。
実際、目の前に広がっている光景は、圧巻であった。
まず目につくのは、お菓子でできた家。
形状もさまざまで、色々な味が楽しめそうである。
また、遠くに見えるお城も、よく見るとお菓子で作られているようだ。
「申請して、みかんの出禁は解除しているから。だからといって、食べつくさないように」
そう。
みかんは以前、家一軒を丸ごと食べてしまい、出禁にされたことがある。
今回転移前に申請を行い、食べる量を制限するという約束の下、来ることが許されたのだ。
「どのお菓子も、一級品ばかり。少しずつ楽しむのが吉だと思う」
VRMMOの中で食事をしても、太ることはない。
甘いものが好きな人にとって、夢のような場所であろう。
俺も意外と甘いものが好きなので、楽しみだ。




